2025.9.9

メゾン マルジェラ「ライン2」が始動。初の展覧会となるヒーミン・チョンとジョユルによる「Elsewhere, Rhema, Open Torso」レポート

メゾン マルジェラが、新たなプロジェクト「メゾン マルジェラ ライン2」をスタート。その第1弾として、ソウル・漢南にある、メゾン マルジェラの韓国におけるフラッグシップショップで、ヒーミン・チョンとジョユルによるインスタレーション展「Elsewhere, Rhema, Open Torso」がスタートした。会期は9月28日まで。会場の様子をレポート。

文・撮影=安原真広(ウェブ版「美術手帖」副編集長)

会場風景より
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 メゾン マルジェラが、新たなプロジェクト「メゾン マルジェラ ライン2」をスタートさせた。本プロジェクトはメゾン マルジェラが受け継いできたファッションとアートの協働をより強固にするものとして位置づけられ、2人のアーティストが、互いのクリエイティブな表現を交差する場とされている。

会場風景より

 その第1段としてスタートしたのがビジュアルアーティストのヒーミン・チョンと音響デザイナーのジョユルの、2人の対話によって生まれたインスタレーション「Elsewhere, Rhema, Open Torso」だ。

 会場となっているのはソウル・漢南にある、メゾン マルジェラの韓国におけるフラッグシップショップだ。リウム美術館にもほど近い、閑静な住宅街のなかにあるこのショップは、かつての邸宅として使われていた建築をリノベーションしたもの。アパレルを展示する空間のほか、カフェも併設されており、庭を眺めながらコーヒーを楽しむことができる。

会場風景より

 作品は邸宅の外から始まっている。ヒーミン・チョンによる金属彫刻《In the Wake of Reflections》が、植物のツタが庭から家の外に向かって繁茂しているかのように拡がっており、店舗の前を通る人々の注目を集める。

会場風景より

 門をくぐり、庭に足を踏み入れれば、南国の森林を想起させるかのような雨音や鳥、動物などの声、木々のざわめきなどが聞こえてくる。これはジョユルの音響作品《In the Wake of Reflections》で、チョンの手がけた金属のツタの内部から響いてきており、その音を外部へと響き渡らせるかのように、チョンの作品のいたるところには穴が空いている。

会場風景より

 芝生の上には、しおれた花弁のようにも、屈んだ女性のようにも、あるいは子象のようにも見えるチョンの立体作品《夜明け》が置かれている。見る角度によってその表情は様々に変化するこの彫刻が、庭園の植物と関係を取り結ぶ。

会場風景より

 作品はアパレルの販売スペースにも続いている。本展はメゾン マルジェラの今年の秋冬コレクションのテーマである「Loved to Death」と共鳴するものとしても位置づけられており、チョンによる人体のかたちをした立体作品や、皮膚を想起させる平面作品などは、生命の在処をファッションとともに思考させてくれるものだ。

会場風景より

 《In the Wake of Reflections》の金属の管は2階のベランダの屋根にまで伸びており、2階から屋外に出て、彫刻のディテールをじっくり見ることも可能だ。

会場風景より

 会場全体で、メゾンのクリエイションと、二人の作品の交歓を感じることができる本展。これまで欠番だった、メゾン マルジェラのナンバリング「2」を掲げ、ソウルを皮切りにスタートした本プロジェクトの次なる展開に期待したくなる仕上がりだ。