「フリーズ・ソウル2025」開幕レポート。揺れる市場のなかでパン・リージョナルなフェアが示した方向性
2022年から開催されているフリーズ・ソウルが、今年第4回を迎えた。市場の冷静化と国際情勢の逆風を背景に、フェアはどのような可能性を示したのか。現地からレポートする。

2021年、フリーズが翌年からソウルでの開催を発表した際、国際的な注目を集め、多くの海外ギャラリーが続々とソウルに拠点を設ける動きを見せた。韓国市場の急成長と「東アジアの新たなハブ」としての期待感が背景にあった。
しかし、それから4年が経ち、当時大きな話題を呼んだギャラリーのなかにはすでに活動を停止、あるいは撤退を余儀なくされたケースも増えている。ロサンゼルスのギャラリーVarious Small Fires(VSF)は2019年にソウルに進出したが、昨年のフリーズ・ソウルでイギリスの作家アレックス・フォックストンの個展を開催したのを最後に展覧会を行っていない。今年のフリーズ・ウィーク中に現地を訪れると、ギャラリーの扉は閉ざされ、「賃貸」の張り紙が掲示されていた。
同様に、2021年にソウル支店を開設したドイツのケーニッヒ・ギャラリーも、今年1月に開催したロッカクアヤコの個展を最後に活動が止まっている。さらに、23年にソウルでスペースを開設したベルリンのペレス・プロジェクツは、今年4月に破産が報じられ、公式サイトは閉鎖、SNSアカウントも非公開となった。
また、今年7月に閉廊を発表したロサンゼルスのBLUMはソウルに物理的な拠点を持たなかったものの、韓国出身のアーティストを多数扱い、西洋の美術界に紹介してきただけに、その閉鎖は韓国のアートシーンにとって大きな痛手と言える。
いっぽうで、韓国国内の経済・政治情勢も市場に影を落としている。アート・バーゼルとUBSが発表した「Art Market Report 2025」によれば、2024年の韓国アート市場規模は前年比15パーセント縮小した。さらに、前大統領・尹錫悦氏の弾劾と新大統領・李在明氏の就任など政治的動揺、アメリカとの関税摩擦といった外部環境の不確実性も続いた。

こうした状況下で、フリーズ・ソウルは今年、第4回を迎えた。約30の国と地域から約120のギャラリーが参加し、昨年の約110からわずかに増加。VIPプレビュー初日には会場が多くの来場者で賑わい、金恵京(キム・ヘギョン)大統領夫人や呉世勲(オ・セフン)ソウル市長も姿を見せた。