2025.9.8

京都市京セラ美術館で「日本画アヴァンギャルド KYOTO 1948-1970」開催。3つの美術団体にフォーカス

京都市京セラ美術館で2026年2月より、特別展「⽇本画アヴァンギャルド KYOTO 1948-1970」が開催される。

野村久之 Sanctuary 1960 京都市美術館蔵
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 京都市京セラ美術館で特別展「⽇本画アヴァンギャルド KYOTO 1948-1970」が開催される。会期は2026年2⽉7⽇〜5⽉6⽇。

 戦後、伝統と⾰新のはざまで揺れる⽇本画界において、京都では若き画家たちによる前衛的な試みが始まった。本展では、1940年代以降に結成された3つの美術団体である「創造美術」「パンリアル美術協会」「ケラ美術協会」を中⼼に、⽇本画の枠を問い直し、新たな表現を模索した気鋭の若⼿画家とその軌跡を紹介するもの。戦後京都で⽣まれた⽇本画の反⾻的創造運動を「⽇本画アヴァンギャルド」として総称し、京都画壇の批評精神と創造性に着⽬し、現代へと連なる⽇本画のもうひとつの系譜を紐解く。

創造美術

 創造美術は1948年創⽴。現在は創画会として存続している。「我等ハ世界性に⽴脚スル⽇本絵画ノ創造ヲ期ス」(会の綱領) 世界性に⽴脚する⽇本絵画の創造を標榜し、東京と京都の意欲的な⽇本画家が呼応して結成された在野団体。既存の画壇から脱却し、⾃由にして純粋なる環境を求めた。本展では主に、上村松篁、菊池隆志、向井久万、奥村厚⼀、秋野不矩、沢宏靭、広⽥多津ら京都側の創⽴委員の作品が紹介される。

向井久万 浮遊 1950 歴史館いずみさの所蔵

パンリアル美術協会

 パンリアル美術協会は1949年創⽴、2020年解散。京都市⽴絵画(美術)専⾨学校⽇本画科の卒業⽣が中⼼となって発⾜した前衛団体で、「吾々は⽇本画壇の退嬰的アナクロニズムに対してここに宣⾔する。眼⽟を抉りとれ。四畳半の陰影にかすんだ視覚をすてて、社会の現実を凝視する知性と、意欲に燃えた⽬を養おう。」というパンリアル宣⾔を掲げた。「パン」は「汎」を表し、「リアル」は「リアリズム」の意で、社会の現実を反映させながら、抽象表現や先端的な⻄洋美術を取り⼊れて⽇本画の再起を⽬指した。本展では創⽴会員である三上誠、⼭崎隆、星野眞吾、不動茂弥、⼤野秀隆(俶嵩)、下村良之介などを展⽰する。

三上誠 灸点万華鏡1 1966 福井県立美術館蔵
大野俶嵩 緋No.24 1964 京都市美術館蔵

ケラ美術協会

 ケラ美術協会は1959年創⽴、1964年解散。京都市⽴美術⼤学(現・京都市⽴芸術⼤学)⽇本画科出⾝の若⼿画家らによって結成された前衛団体。グループ名の「ケラ(Cella)」は、ラテン語で「細胞」や「単位」を意味する⾔葉で、「細胞が分裂し、拡⼤するように、この運動があらゆる⼈たちに賛同される」という願いが込められている。「⽇本画」の概念にとらわれることなく、より広い視点から「真に創造的な絵画」を⽣み出すことを⽬指した。⽇本画の顔料だけでなく、油絵具やエナメル塗料、ビニール塗料、墨汁、ペンキ、さらには漆、蝋、⽯膏、布、ゴム、泥、ムシロ、⽯なども画材とした。本展で主に紹介するのは、創⽴から活躍した岩⽥重義、楠⽥信吾、久保⽥壱重郎、榊健、野村久之など。 

榊健 Opus.63-4 1963(1990年再制作) 京都市美術館蔵