2025.10.31

東京都現代美術館、2026年度の展覧会ラインアップをチェック

東京都現代美術館は2026年度に開催する6つの企画展を発表した。

ハンス・ハーケ News 1969/2008 © Hans Haacke / Artists Rights Society (ARS), New York / VG Bild-Kunst, Bonn. Courtesy the artist and Paula Cooper Gallery, New York. Photo: Ellen Page Wilson
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 清澄白河にある東京都現代美術館が、2026年度に開催する6つの企画展を公開した。

「エリック・カール展 はじまりは、はらぺこあおむし」(2026年4月25日〜7月26日)

 まず4月25日〜7月26日の会期で行われるのが、「エリック・カール展 はじまりは、はらぺこあおむし」だ。本展は、絵本作家エリック・カール(1929〜2021)の回顧展であり、『はらぺこあおむし』日本語版50周年を記念して、マサチューセッツ州にあるエリック・カール絵本美術館とともに開催するもの。『はらぺこあおむし』(1969)や『パパ、お月さまとって!』(1986)、『10このちいさなおもちゃのあひる』(2005)など27冊の絵本の原画にあわせ、グラフィックデザイナー時代の作品、アイディアの最初の構想段階で作られるダミーブック、コラージュに使用する素材など、約180点が展示される。

エリック・カール フレームをもったはらぺこあおむし 2002 エリック・カール絵本美術館蔵 Collection of the Eric and Barbara Carle Foundation © 2002 Penguin Random House LLC.

多田美波(8月29日〜12月6日)

 続く8月29日から12月6日にかけては、彫刻からレリーフ、シャンデリア、建築の仕事まで、多彩な分野で活躍した多田美波(1924〜2014)の、東京では35年ぶりとなる個展。

 高度経済成長を期に次々と生まれた工業素材や技術を芸術表現へ取り入れた先駆者であり、近年も国内外で再評価が高まる多田の軌跡を、初期の絵画作品から、光の反射や透過を取り入れた代表的な彫刻、建築空間のための造形作品などからたどるものとなる。

多田美波 周波数 37306505 1965 「MOTコレクション Eye to Eye—見ること」(2024)展示風景 Photo by Masaru Yanagiba

「共時的星叢―時を共にした星たち 越境する芸術のまなざし」(9月5日〜12月13日)

 9月5日〜12月13日の会期では、「共時的星叢―時を共にした星たち 越境する芸術のまなざし」が開催。本展は、日本と台湾における近代の受容と発展を、美術、映画、文芸、音楽など多様な芸術文化を切り口に再考するもの。映画監督・黄亜歴(ホアン・ヤーリー)が日本統治下の1930年代台湾で結成されたモダニズム詩社「風車詩社」の文化的交流や葛藤を描いた映画『日曜日の散歩者』の実験的な映画言語を反映した空間で、時代や地域、ジャンルを越え表現を共鳴させることで、現代の視点から近代を見つめ直す試みだという。

「共時的星叢―『風車詩社』と越境する芸術の時代」展(国立台湾美術館、2019年)展示風景 提供=国立台湾美術館

ハンス・ハーケ(2027年2月6日〜5月16日)

 2027年2月6日から5月16日にかけては、ハンス・ハーケ(1936年ドイツ・ケルン生まれ)のアジアにおける初の大規模回顧展が開催される。1960年代のニューヨークで展開されたコンセプチュアル・アートの中心人物として、この運動を、権力・経済・文化が複雑に絡み合うシステムへの批判的な問いかけへと導いたハンス・ハーケ。環境問題から政治的・企業的権力への追及まで、歴史的な作品やプロジェクトを幅広く紹介し、ハーケの実践とその現代における意義を包括的に提示するという。

ハンス・ハーケ News 1969/2008 © Hans Haacke / Artists Rights Society (ARS), New York / VG Bild-Kunst, Bonn. Courtesy the artist and Paula Cooper Gallery, New York. Photo: Ellen Page Wilson

サンプライド財団との共催展(2027年2月6日〜5月16日)

 ハンス・ハーケと同時開催となるのが、サンプライド財団との共催展だ。サンプライド財団は、性的少数者(LGBTQ+)を含めたすべての人々の共存と平等の実現に貢献することをミッションに、作品収蔵や展示活動等を行っている。同財団と連携する本展は、ジェンダーとセクシュアリティに関する今日的な問いをテーマに、収蔵作品、作家からの借用作品ならびに委嘱作品で構成する国際グループ展となる。

「Myth Makers」展Anne Samat 作品展示風景(2022-23、Tai Kwun 香港)

「MOTアニュアル2026」(2027年2月20日〜5月30日)

 2027年2月20日〜5月30日の会期ではMOTアニュアルが開催。MOTアニュアルは、多様な文化や表現が交差する東京を拠点に、現代美術の一側面を切り取り、問いや議論の契機を生むグループ展として毎年開催されている。

 「MOTアニュアル2026」では、現代美術、舞台芸術、実験音楽を横断する若手アーティストたちの多彩な試みを紹介し、身体を通して過去と現在をつなぎ、感覚や体験に新たな地平を開く。とくに、個人や社会の記憶を呼応させるパフォーマンスに焦点を当てるという。

 なお、26年1月下旬には展覧会ラインアップ第2弾が発表される予定だ。