2026.6.3

「Osaka Art & Design 2026」開幕レポート。大阪市内各所がアートとデザインに染まる28日間

大阪市内各所で、アートとデザインの祭典「Osaka Art & Design 2026」が開幕した。会期は6月23日まで。各会場の様子をピックアップしてレポートする。

文=三澤麦(編集部) 撮影・写真提供(*を除く)=大阪アート&デザイン実行委員会事務局

大阪梅田ツインタワーズ・ノース階1コンコース、阪急うめだ本店1階コンコースウィンドーに展開される、平子雄一の《LAMPENFLORA「照明植生」》
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 大阪市内を巡りながらアートやデザインを楽しむ周遊型エリアイベント「Osaka Art & Design 2026」が開幕した。会期は6月23日まで。

 第4回目の開催となる今年のテーマは「Infinitize ~ソウゾウを解き放つ~」。パブリックアートや施設内のオープンスペースでの展示など約60ヶ所を舞台に作品やプロジェクトが展開され、気鋭のクリエイターらによる個性豊かな表現の数々に出会うことができるものとなる。エリアごとにいくつかピックアップして紹介したい。

都市を行き交う人々にアートやデザインは何を示すのか

梅田・中之島・淀屋橋エリア

 本イベントでもっとも作品が集中しているのが梅田エリアだ。百貨店が密集するこのエリアでは、各館の様々なスペースを活用した展示が見どころであり、日常の動線のなかで通行人や利用客が自然とアートに触れられる構成となっている。

阪急うめだ本店1階コンコースウィンドーでは、平子雄一による《LAMPENFLORA「照明植生」》が展開される
阪急うめだ本店9階に設置された平子雄一の《SACRED TREE「シンボク」》 ©Yuichi Hirako photo by Osamu Sakamoto

 阪急うめだ本店1階コンコースウィンドーでは、平子雄一(1982〜)によるポップな世界観が一面に広がる。「人工的な都市空間において、いかに自然を意識することができるか」という問いをテーマに掲げたインスタレーション作品だ。高層ビルが立ち並ぶうめきたエリアで、自然と人間の関係を問いかける。

 さらに9階の祝祭広場には、およそ4.5メートルにも及ぶキャラクターのオブジェがそびえ立つ。自然と人間が融合したようなその姿は、可愛らしい佇まいのなかに、現代社会への確かな問いを孕んでいる。

時空の広場に展開される「PICTURE BOOK PARK」

 JR大阪駅と大阪ステーションシティをつなぐ「時空(とき)の広場」には、絵本の世界をテーマとした公園のような空間が広がる。動物たちの彫刻やインタラクティブな遊具などが設置され、都市のサードプレイスらしい憩いの場を創出している。

笹倉鉄平の個展「画業35周年記念展6日間だけの『笹倉鉄平ミュージアム』」

 大丸梅田店7階の特設会場では、光の情景画家・笹倉鉄平(1954〜)の画業35周年を記念した個展が開催中(~6月15日)。油彩やデッサンなど約80点が一堂に会している。パリの印象派に影響を受けたという笹倉は、かつて森永製菓のパッケージイラストを10年間手がけてきたという経歴を持っており、その確かな描写力も堪能できる。

左から、ヤノベケンジ《SHIP’S CAT (Little Cosmo Red)》、《SHIP’S CAT (Cosmo Red)》

 JR大阪駅北側のグラングリーン大阪には、ヤノベケンジ(1965〜)の「SHIP’S CAT」シリーズが出現。現在、大阪中之島美術館で開催中の大規模展「驚異の部屋の私たち、消滅せよ。 — 森村泰昌・ヤノベケンジ・やなぎみわ —」(~7月20日)とあわせてチェックしたい。

淀屋橋ステーションワンに設置された大竹舞人の《編む、つなぐ、ひらく》

 淀屋橋駅直結の「淀屋橋ステーションワン」には、大竹舞人によるパブリックアート《編む、つなぐ、ひらく》が設置された。手で編み上げられた中空の作品は、都市や地下鉄を行き交う人々の流れと呼応し、時間や記憶、文化を未来へとつないでいく象徴として示されている。

サンダー・ワッシンクによる椅子のシリーズ「V-series ARCHIVE」
コラボレーションを通じて制作された同シリーズのアーカイブ写真

 クリエイティブユニット・grafが運営する「graf porch」では、オランダ人デザイナー、サンダー・ワッシンク(1984〜)による「V-series ARCHIVE」を展示。共通のアルミパーツと各地の素材を組み合わせたこの椅子のシリーズを通じて、インテリアの新たな可能性を提示している。

イーゼルに載せられて展示された絵画。左から《4ツの始まり-2001-Ⅲ》(2001)、《R・R・W―4ツの始まり-2001-Ⅱ》(2002)、《4ツの始まり-2001-Ⅳ》(2001)、《4ツの始まり-2001-Ⅰ》(2001) 撮影:編集部(*)

 なお、徒歩圏内の国立国際美術館では、画家・中西夏之(1935〜2016)の回顧展「中西夏之 緩やかにみつめるためにいつまでも佇む、装置」(〜6月14日)も開催されている。こちらも必見だ。

心斎橋・南堀江・船場エリア

 大阪屈指の繁華街・心斎橋周辺にも、刺激的な作品が点在している。

「五十嵐威暢 A–Z Homage to Takenobu Igarashi」の展示風景。右の壁面には、五十嵐による「渋谷PARCO PART3」のロゴデザインをもとに新たに制作された、AからZまでの書体が並ぶ 撮影:編集部(*)
五十嵐ロゴを用いた「積木ベンチ」

 心斎橋PARCOでは、2025年に惜しまれつつ世を去った五十嵐威暢(1944〜2025)を取り上げる展覧会「A–Z Homage to Takenobu Igarashi」(〜6月14日)を開催中。旧渋谷PARCOのネオンサインなど、五十嵐の代表的なシリーズでもあるアルファベット作品に焦点を当てている。

 また、心斎橋PARCO・大丸心斎橋店本館前の歩道には、本展に合わせて制作された「積木ベンチ」も設置。五十嵐のロゴに座るというまたとない体験ができるのも大きなポイントと言えるだろう。

TEZUKAYAMA GALLERYのメインフロアで開催されている加藤智大の個展「The face speaks」 撮影:編集部(*)

 南堀江にあるTEZUKAYAMA GALLERYでは、加藤智大(1981〜)による個展「The face speaks」(〜6月20日)が開催されている。会場では、犯罪歴のある人物を3Dスキャンし、鉄線の集積で再構築した「anonymous」シリーズの新作を発表。鉄線が生み出すモアレによって実態が揺らぐのも、タイトルの「anonymous(匿名性)」を浮き彫りにするかのようだ。

エスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景(2026)。左から《Landscape (Tree)Ⅱ》(2007)、《Three Ball 50/50 Tank》(1985)、《Bracelet》(1995-98) © Jeff Koons Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris Photo ©︎ Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton(*)

 エスパス ルイ・ヴィトン大阪では、現代美術の巨匠ジェフ・クーンズ(1955〜)の個展「PAINTINGS AND BANALITY - SELECTED WORKS FROM THE COLLECTION」(〜7月5日)も開催中。レディメイドの精神を継承しつつ、欲望や社会階層を解体・再構成してきた彼の40年にわたるキャリアを通覧できる貴重な機会となっている。

W大阪 外観 写真提供:W大阪(*)
W大阪の3階にあるソーシャルハブ「LIVING ROOM」 写真提供:W大阪(*)

 本イベントのホテルパートナーであるW大阪は、アメリカ合衆国を中心に展開するマリオット・インターナショナル系列のラグジュアリー・ライフスタイルホテルであり、2021年に日本初上陸した。建築家・安藤忠雄の監修のもとつくられた黒一色の外観を持つ建築が独自の存在感を放っており、施設内は、「大人の遊び場」というコンセプトのもと、道頓堀のネオンや、大阪の活気を再解釈したようなポップなデザインが随所に散りばめられている。

W大阪の1階で展示されるxoriumの《AUTONOMA》

 ここで展示を行うのは、京都を中心に活動する竹川諒と中村慎吾によるアーティストコレクティブ・xorium(エクソリウム)だ。《AUTONOMA》は、人、自然、社会のあわいにある違和感を作品に昇華させた作品。無数の泡がひとつの構造物を構成していく様子を、社会の変化のなかで起こる現象と結びつけることで、鑑賞者の感覚的な理解を促している。

難波・阿倍野・北加賀屋エリア

 難波・阿倍野・北加賀屋エリアでは、各駅の近くに作品が点在している。

中島麦の個展「DIVING to NEW COLOR」

 高島屋大阪店では、重力を利用して抽象画を描く中島麦(1978〜)の個展「DIVING to NEW COLOR」(〜6月15日)が開催されている。筆を使わず、現象として生み出された色彩の重なりが、奥行きのある美しい画面をつくり出している。

 同エリアでは、美術館での展覧会も充実している。あべのハルカス美術館では、「ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト」(~6月14日)の巡回展が開催されているほか、大阪市立美術館では開館90周年を記念した特別展「全力!名宝物語 ―大阪市美とたどる美のエピソード」(~6月21日)も見ることができる。

 「Infinitize(無限にする)」を掲げる今回の「Osaka Art & Design 2026」。大阪・関西万博が残した熱量を引き継ぎつつ、大阪のカルチャーをよりいっそう国内外に発信しようとする強い意志が感じられた。