2026.9.11

「Tokyo Gendai 2026」開幕レポート。横浜での4年間の集大成は次なるステージに何をもたらすのか

現代美術に特化した国内最大級の国際アートフェア「Tokyo Gendai 2026」が今年もパシフィコ横浜で開幕した。会期は9月13日まで。

文・撮影=安原真広(編集部)

「Tokyo Gendai 2026」の会場、Kaikai Kiki GalleryによるMr.の展示
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 現代美術に特化した国際アートフェア「Tokyo Gendai」。その第4回となる「Tokyo Gendai 2026」が9月11日にパシフィコ横浜で開幕した。会期は9月13日まで。

 今回は日本、欧米、アジア、オセアニア、南米から69のギャラリーが参加。「Galleries」「Hana ‘Flower’」「Eda ‘Branch’」「Miki ‘Trunk’」「Tane ‘Seed’」の5セクターに分け、国際的なアーティストから若手アーティストまで、幅広い現代美術を紹介している。

「Tokyo Gendai 2026」、Project Fulfill Art Spaceによる張徐展《Termite Feeding Show》(2025)

 初年度から4回にわたりパシフィコ横浜で開催してきたTokyo Gendaiは、来年から開催地を東京に移す。本フェアの共同創設者のひとりであるマグナス・レンフリューがプレスカンファレンスで公表した。横浜での開催は今回をもってひと区切りとなる。

Galleries

 会場は前回と同様にパシフィコ横浜のC・Dホールを使用し、コンパクトに回れる規模となっている。まずはメインセクションとなる「Galleries」を紹介したい。Pace(ニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドン、ジュネーヴ、 ベルリン、ソウル、東京)、Sadie Coles HQ(ロンドン)、Gana Art(ソウル、ロサンゼルス)をはじめとした国際的に展開するギャラリーのほか、国内からはKOTARO NUKAGA、タカ・イシイギャラリー、Kaikai Kiki Gallery、TARO NASUなどが出展している。

Paceのブースで展示されていたローレン・クイン《Tannin》(2026)

 Paceはロサンゼルスを拠点とする画家、ローレン・クインの新作を個展形式で紹介していた。「チューブ」の概念をもとに、平面上にストロークの反復と複雑な色彩設計によって奥行きのある空間をつくり出すクインの作品の数々が、多くの来場者を引きつけていた。

Kaikai Kiki Galleryのブース、手前がMr.《みんなのソアラ》(2026)

 Kaikai Kiki Galleryは、Mr.の大型作品を大々的に紹介。「Mr.の個展:いつかある晴れた日に、きっとまた会えるでしょう。」(福岡アジア美術館、2026年4月24日~6月21日)で展示されていた、「ヤンキー車」をベースにした《みんなのソアラ》(2026)をはじめとした大型作品を出展し、実作のインパクトを直に体験できる機会となっていた。

MAKI GALLERYのブース、鍵岡リグレ アンヌの展示

 MAKI GALLERYは、鍵岡リグレ アンヌを個展形式で紹介。複雑に重ねた色層によって水面を表現したペインティングが生み出す、独特の立体感が印象的だった。

 「Hana “Flower”」

 「Hana “Flower”」は、若手・中堅作家に焦点を当てて紹介する34のギャラリーが参加。本フェアではもっともブース数が多いセクションとなっている。

Yutaka Kikutake Galleryのブース、白簱花呼の作品が並ぶ

 Yutaka Kikutake Galleryは、女性像に注がれてきた眼差しを自画像として解体する白簱花呼(しらはた・かこ)と、日本画の顔料を支持体に人間の身体と植物を重ね合わせる森夕香の新作などを展示。

CON_のブース、山中雪乃の展示
AWASE GALLERYのブース、ソウ・ソウエンの展示

 CON_は人間の輪郭のブレや揺らぎを平面上に表現する山中雪乃を、AWASE GALLERYは呼吸と身体の関係をパフォーマンスや漂白剤を用いた平面作品で問うソウ・ソウエンを個展形式で紹介。ソウエンは13日に卵と身体の接触をテーマにしたパフォーマンスも行う予定だ。いずれも身体やそこに注がれる視線が焦点とする作家であり、近年の若手・中堅作家の持つ問題意識が垣間見えるプレゼンテーションとなっていた。

MISA SHIN GALLERYのブース、小沢剛の展示

 MISA SHIN GALLERYは小沢剛の初期作から最新作までを個展形式で紹介。見過ごされがちな社会の構造を、美術の方法を使ってずらしながら俯瞰してきたその活動歴を振り返るように作品が展示された。小作品が数多く展示されており、自宅などで楽しむイメージを喚起しやすいよう工夫されていた。

Miki “Trunk”

 新設セクター「Miki “Trunk”」にも注目だ。このセクションは、写真やドローイング、版画など紙を媒体とする作品に特化したものだ。紙の持つ表現の幅に触れられるとともに、比較的購入しやすい価格帯の作品を提案する役割も持つ。

 参加ギャラリーには、BANGKOK CITYCITY GALLERY(バンコク)、Revolver Galería(ブエノスアイレス、リマ)、John Szoke Gallery(ニューヨーク)などが名を連ねる。

BANGKOK CITYCITY GALLERYのブース

 BANGKOK CITYCITY GALLERYは、写真作品のみをブースで展開。アピチャッポン・ウィーラセタクンの写真とドローイングを組み合わせた作品をはじめ、ただ写真をプリントするだけでなく、そこにどのようなアクションを加えるのか、という試みが多く見られた。

Fabrik Projectsのブース、ソニア・ペイズの作品

 またFabrik Projects(ロサンゼルス)はオーストラリアのアーティスト、ソニア・ペイズを紹介。自分の娘の顔を写真、マルチメディア、アニメーション、彫刻など多様な表現手法で変形させることで、人類の身体の行く先について考え続けるアーティストが投げかけるものは多い。

Tane “Seed”

 「Tane “Seed”」はデジタルアートを専門に紹介するセクションで、NFT、映像、アニメーション、AR、VR、ゲームなどを扱っている。Chi-Wen / Double Square Gallery / Project Fulfill Art Space、TAEX、Takuro Someya Contemporary Artが参加。

 Takuro Someya Contemporary Art は、黒川良一の作品《oscillating continuum》(2013)を出展。2つのディスプレイが、画面中央に走る赤い線でつながれ、波形と複雑な線状のパターンがノイズと共鳴しながら、生命のように出現と収束を繰り返す。

Sato 'Meadow'

 また、会場内各所では、インスタレーションやパフォーマンスを展示する「Sato 'Meadow'」も展開。KOTARO NUKAGAが、保良雄の下水汚泥から回収した再生肥料を用いた作品《Garden》(2026)を、ロンドン拠点のTAEXがマリーナ・アブラモヴィッチの映像作品《Slow Walking》(2026)を展示するなど、来場者に刺激を与える作品が展示された。

「Tokyo Gendai 2026」の会場、保良雄《Garden》(2026)

 Tokyo Gendai 2026は、海外の大型アートフェアと比べると規模は小さいながらも、無理なく回りきれるコンパクトな会場構成には利点もある。ギャラリストと出展作家について話し、作品とじっくりと対峙する。そんな落ち着いた方向性も、4年目を迎えたフェアからは見て取ることができた。横浜での開催はひと区切りとなり、東京で新たな展開を目指すTokyo Gendai。周辺のアート関連施設と連携しながら、より大規模なフェアを目指す可能性は高い。香港やソウルとは異なる体験を提案してきた横浜での4年間を上手く活かすことができるのか、注目したい。