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2025.11.21

女性アーティスト作品の史上最高額。フリーダ・カーロの自画像がサザビーズNYで約86億円で落札

1940年制作のフリーダ・カーロの自画像《El sueño(La cama)》が、サザビーズ・ニューヨークにて約86億円で落札され、女性アーティスト作品のオークション記録を塗り替えた。

オークションの様子
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 サザビーズは11月20日、ニューヨークのブロイヤー・ビルで行われた近代美術イブニングセールにて、フリーダ・カーロの自画像《El sueño(La cama)》(1940)が5470万ドル(手数料込み/約86億円)で落札され、同作家のオークション記録を更新するとともに、女性アーティスト作品として史上最高額を樹立した。

フリーダ・カーロ El sueño(La cama) 1940

 本作が前回市場に登場したのは1980年。サザビーズで5万1000ドルで落札されて以来、45年ぶりの再登場となった。当時から価格は1000倍以上に上昇しており、カーロの評価の高まり、さらには女性芸術家への市場的評価の変化を象徴する結果となった。

 《El sueño(La cama)》は、カーロが激動の時期に制作した作品だ。1940年、元恋人レオン・トロツキーが暗殺され、その後ディエゴ・リベラとの離婚と再婚を経験した年でもある。作品には、精神的緊張、再生、そして自己の脆さと強さが複雑に交差する、カーロ芸術のなかでももっとも象徴的なモチーフが凝縮されている。

 入札は約5分間にわたって2名の競合者が応酬。その末にサザビーズのラテンアメリカ美術部門責任者アンナ・ディ・スタシとの電話入札者が落札した。ディ・スタシは「1980年に5万1000ドルで落札されたこの作品が、45年後に5500万ドルを超えるとは誰も想像しなかったでしょう。この結果は、カーロの天才性、そして女性アーティストへの評価がどれほど進展したかを示すものです」とコメントしている。

 本作はカーロとリベラの主要ディーラーであったメキシコシティのGalería Misrachiから個人所蔵へと渡り、長らく著名コレクションに収蔵されてきた。これまで世界各地の重要な回顧展に出品され、カーロ研究における基軸作品として位置づけられてきた。

 今回の落札は、女性アーティスト作品としての史上最高額となり、従来の記録であるジョージア・オキーフの《Jimson Weed / White Flower No.1》(2014年サザビーズ、4400万ドル)を大きく上回った。また、カーロ作品としてのオークション記録も、2021年にサザビーズで記録された3490万ドルを大幅に更新している。

 なお現在、男性アーティストのオークション最高額は、2017年に落札されたレオナルド・ダ・ヴィンチ《サルバドール・ムンディ》の4億5031万2500ドルである。また、20世紀以降に制作された作品のオークションレコードは、今月18日にサザビーズ・ニューヨークで落札されたグスタフ・クリムト《エリザベート・レーデラーの肖像》(1914–16)が記録した2億3630万ドル(約365億円)だ。

 今回フリーダ・カーロが樹立した記録を見ると、依然として男性アーティストとのあいだに大きな価格差が存在することも浮き彫りとなっている。