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2025.11.10

マウリツィオ・カテラン「金の便器」が競売へ。金相場基準を採用する世界初のオークション

サザビーズは、マウリツィオ・カテランの代表作《アメリカ》(2016)を11月18日に開催される「The Now & Contemporary Evening Auction」で競売にかける。世界初の試みに注目だ。

マウリツィオ・カテラン アメリカ 2016 出典=サザビーズウェブサイト

 オークション大手・サザビーズが、マウリツィオ・カテランの代表作《アメリカ》(2016)を、「The Now & Contemporary Evening Auction」(11月18日)で競売にかける。

 カテランは、2019年にアート・バーゼル・マイアミ・ビーチにおいて、壁にダクトテープで貼り付けられたバナナというシンプルな構成の作品《Comedian》を発表。同作は24年にサザビーズのオークションのおいて620万ドル(約9億6000万円)で落札されたことで大きな話題を集めた。

 本作もカテランの代表作のひとつであり、18金で制作された重量約101キロの、完全に機能するトイレ。現代美術史上もっとも挑発的かつ象徴的な作品のひとつといえるものだ。2016年にニューヨークのグッゲンハイム美術館で展示された際には、一般来館者が実際に使用できるトイレとして設置され、10万人以上が列をなした。「作品と一対一で向き合うかつてない親密な体験」として話題を呼び、メディアでも大きく取り上げられた。

 アートの価値とは何かという問いを鋭く投げかける本作。サザビーズの現代美術部門責任者デイヴィッド・ガルペリンは次のようにコメントを寄せる。

「この作品は、アート界とその制度が信奉する価値観を映す“鏡”だ。カテランはデュシャン的な身振りを最大限に展開し、芸術と市場の関係を根底から問い直している」。

 本作は2019年、イギリスの世界遺産・ブレナム宮殿で展示された際に盗難被害に遭い、いまなお行方不明のままだ。今回出品されるのは唯一現存するもうひとつのバージョンとなる。今回のオークションでは、作品の落札開始価格を「その日の金相場による重量換算額」とするという前代未聞の方式が採用される。10月31日時点でのスタート価格は約1000万ドル(約15億円)に相当し、暗号通貨での支払いも受け付けるという。

 《Comedian》でアートマーケットに大きな揺さぶりをかけたカテラン。本作がどのような結果をもたらすのかは、大きな注目に値するだろう。