2025.10.28

「杉本博司 絶滅写真」が東京国立近代美術館で開催。約20年ぶりの写真で構成される美術館個展

東京国立近代美術館で、杉本博司の写真で構成される個展「杉本博司 絶滅写真」が開催される。会期は2026年6月16日〜9月13日。

杉本博司 相模湾、江之浦 2025 Bay of Sagami, Enoura, 2025 ©Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi

 東京・竹橋の東京国立近代美術館で「杉本博司 絶滅写真」が開催される。会期は2026年6月16日〜9月13日。

 杉本博司は1948年生まれ。70年に渡米後、74年よりニューヨークと日本を行き来しながら制作を続ける。代表作に「海景」「劇場」シリーズがある。2008年に建築設計事務所「新素材研究所」、2009年に公益財団法人小田原文化財団を設立。2017年には構想から10年をかけて建設された文化施設「小田原文化財団 江之浦測候所」を開設。演出と空間を手掛けた『At the Hawk’s Well / 鷹の井戸』が2019年秋にパリ・オペラ座にて上演されたほか、著書に『苔のむすまで』、『現な像』、『アートの起源』など。2001年ハッセルブラッド国際写真賞、2009年高松宮殿下記念世界文化賞(絵画部門)受賞、2010年秋の紫綬褒章受章、2013年フランス芸術文化勲章オフィシエ叙勲。2017年文化功労者に選出、2023年日本芸術院会員に就任。

 多岐にわたる活動をする杉本だが、その表現の原点は銀塩写真にある。本展は杉本の初期(1970年代後半)から現在に至る銀塩写真約65点を展観するもので、杉本の写真作品で構成する美術館での個展は、国内では2005年の森美術館以来の開催となる。

 本展は3つの章、全13 シリーズにより、時系列にゆるやかに沿いつつ杉本博司の作品世界の展開をたどるものだ。第1章「時間・光・記憶」では、1970年代から80年代に着手され、杉本の評価を確立することになった「ジオラマ」「劇場」「海景」の3つのシリーズなどにより、作品世界の始まりを紹介。

 第2章「観念の形」では、人間の知性や想像力がつくり出した様々な「かたち」を主題とした「観念の形」「スタイアライズド・スカルプチャー」など90年代末から展開されたシリーズにより、作品世界が拡張・深化していくプロセスを紹介する。

 第3章「絶滅写真」では、終焉を迎えつつある銀塩写真というメディアの始原にさかのぼる「前写真、時間記録装置」「フォトジェニック・ドローイング」から、近作「Opticks」まで、6つのシリーズにより、杉本が予見する「絶滅」をめぐるヴィジョンの行方を探る。

 なお、本展ではこれらシリーズのなかから、初公開となる新作の展示を予定。とくに杉本のデビュー作として知られる「ジオラマ」では《ポコット族》などいくつかの新作を加えた構成により、1976年のシリーズの始まりからひそかに構想され、約半世紀をかけてついに実現した、人類史をめぐる深淵なストーリーが初めて提示されるという。

 さらに、同館の所蔵品ギャラリー3階では同館が所蔵する杉本作品全点と、未公開資料「スギモトノート」をサテライト展示する。

 本展のタイトルでもある「絶滅写真」とは、銀塩写真というメディアの終焉と自らの作家活動の終幕を見すえて浮上した主題だ。しかし本展で示される「絶滅」をめぐるヴィジョンはより広い意味を持つ。半世紀にわたって写真というメディアによる表現の可能性を拡張、深化させてきた杉本の作品世界の全体像を。「絶滅」というキーワードから見わたす展覧会となる予定だ。