「丸木スマ展 73歳からのアーティスト」(滋賀県立美術館)開幕レポート。壮絶な人生から生まれた作品が現代に語りかけるものとは?
滋賀県大津市の滋賀県立美術館で、画家・丸木スマの初期から晩年までの歩みを辿る展覧会「丸木スマ展 73歳からのアーティスト」が開幕した。会場の様子をレポートする。

滋賀県大津市の滋賀県立美術館で、73歳で初めて絵筆をとった画家・丸木スマの歩みをたどる展覧会「丸木スマ展 73歳からのアーティスト」が開幕した。会期は11月23日まで。企画は山田創(滋賀県立美術館学芸員)、監修は岡本幸宣(原爆の図 丸木美術館学芸員)、永井明生(キュレーター/美術研究者)が務める。
丸木スマは1875年広島県生まれ。農作業や船宿業に従事し、長年家族の暮らしを支えた。1945年、70歳のときに爆心地から約2.5キロの自宅で被爆。翌年には夫と死別するという過酷な境遇に見舞われた。終戦から3年が経った48年、長男の丸木位里とその妻・丸木俊の勧めにより、73歳で初めて絵を描き始めた。身近な自然や生き物を独自の色彩と構図で捉えた作品群は、50年以降、女流画家協会展や再興日本美術院展などで立て続けに入選。70代にして異例の画壇デビューを飾る。81歳で没するまでの約9年間で700点以上もの作品を遺した。近年では、 2008年に埼玉県立近代美術館、11年に原爆の図 丸木美術館、17年に一宮市三岸節子記念美術館、21年にベルナール・ビュフェ美術館などで個展が開催されている。
本展では、スマの初期から晩年までの作品や関係資料など、およそ130点が展示されている。スマはこれまで「おばあちゃん画家」の愛称で親しまれ、注目を集めてきた。だが本展の企画にあたり担当学芸員の山田は、その愛称の陰に隠れていた彼女の多面的な姿に着目。「丸木スマ」の本質を改めて捉え直すといった構想が、全9章という緻密な展示構成に結実している。

73歳で出会った「絵を描く喜び」
「絵を描きはなえてから、面白うての。こりゃ、まだまだ死なりゃせん思うて。わしゃ、今が花よ。」
展覧会は、スマが残したこの力強い言葉から始まる。73歳で息子夫妻である丸木位里・俊の勧めによって絵を描き始めたスマは、正月の寄せ書きに描いた絵で家族を驚かせたという。第1章「スマ、73歳絵を描く」では、その経験から次第に絵を描く喜びに目覚めていったスマの初期作品を、当時を振り返る俊の言葉とともに紹介している。

続く第2章「ひらく、スマの世界」では、野菜や動植物、人々の暮らし、自然風景といった、スマを象徴する作品群を紹介する。野川の近くで暮らし、日常的に畑仕事を行っていたスマは、身近なモチーフを豊かな色彩と伸びやかなタッチで描き出した。瑞々しい野菜やユーモアあふれる動物たちの姿からは、スマの温かな観察眼が伝わる。





























