2026.4.19

「ためして、みる展」(滋賀県立美術館)開幕レポート。10の「トライ」から新たな鑑賞体験を提案

滋賀県大津市の滋賀県立美術館で、企画展「ためして、みる展 さわって 照らして ねそべって!? アートを楽しむ 10のトライ」が開幕した。会期は6月21日まで。会場の様子をレポートする。

文・撮影=三澤麦(編集部)

「トライ2:寝そべって見る」展示風景より、川村悦子による屏風絵《凱旋-しろ》(2010)
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 滋賀県大津市の滋賀県立美術館で、企画展「ためして、みる展 さわって 照らして ねそべって!? アートを楽しむ 10のトライ」が開幕した。会期は6月21日まで。担当は、同館主任学芸員の平田健生。

 2021年に滋賀県立美術館としてリニューアルオープンをした同館は、目指すべき姿を「リビングルームのような美術館」と定義。近代日本画や現代美術、滋賀ゆかりの作品といった従来のコレクションの拡充に加え、芸術文化の多様性を示す「アール・ブリュット」の紹介や、親子で楽しめるプログラムの実施など、多角的な視点から美術館のあり方を探求してきた。

「トライ2:寝そべって見る」展示風景。手前のカール・アンドレ《亜鉛-亜鉛の平面》(1969)は、作品の上を歩くことができる

 同館では年に1回、この独自の姿勢を反映した企画展を実施しており、2023年の「“みかた”の多い美術館展」、25年の「落語であーっ!と展」など、鑑賞者と作品の新たな接点を提示し続けている。

 今回の「ためして、みる展」の最大の特徴は、その名の通り体験型の展示であることだ。会場では、作品を「寝そべって見たらどうなる?」「双眼鏡で見たらどうなる?」といった全10の「トライ」が提案されており、視点や身体を能動的に動かしながらアートを楽しむことができる。

「トライ6:すわってじっくり見る」。単眼鏡を用いて、作品の細やかな部分まで観察することができる

作品を寝そべって見たらどうなるの?

 10の「トライ」のうち、いくつか印象的なもの紹介したい。

 まず1つ目のトライ「色をみつける」では、作品のなかにある「色」そのものに向き合う。色の名前や由来から紐解く文化背景、あるいは名前のない色。そうした未知の色との出会いを探る試みだ。

「トライ1:色をみつける」より、左からカルロス・ロロン《新世界での発見3》(2023)、《新世界での発見2》(2023)

 2つ目の「寝そべって見る」では、展示室に畳が出現。鑑賞者は靴を脱ぎ、畳の上で座ったり寝転んだりしながら鑑賞できる。目線の高さを変えることで、立って鑑賞するだけでは気づかなかった作品の細部や表情が見えてくるのも興味深い。リラックスしながら作品と向き合うことができるのも魅力的だ。

川村悦子による屏風絵《凱旋-しろ》(2010)を畳の上で座ったり寝そべったりしながら鑑賞することができる

マルセル・デュシャンの作品をバラす?

 さらに刺激的な体験として挙げたいのが「なかみをぜんぶバラして見る」だ。ここでは、マルセル・デュシャンによる、自身の主要作品のミニチュアなどを収めた作品《トランクの中の箱》(1955〜68)が展示されている。ここで驚くのは、鑑賞者がそのレプリカを実際に手に取り、中身を一つひとつ確認できる点だ。「持ち運びできる小さな美術館」として構想された本作を、自らの手で紐解く体験は非常に貴重といえるだろう。

No.19「マルセル・デュシャン《トランクの中の箱》」の複製品(2003 / 2020)。自身の手でバラしていくことで、作品の詳細や内部の細かな仕立てについても確認することができる

 また、「光をかえて見る」というトライも興味深い。作品の前に設置されたスイッチを操作することで、照明を変化させながら鑑賞できる。通常、美術館の照明は固定されているが、自らのアクションで暗闇に浮かび上がらせたり、ライティングを変えたりすることで、作品の新たな一面を発見することが可能だ。

奥村土牛の《シルバー タビー》(1966)。光を当てることで手前の猫が浮かび上がるような変化を楽しむことができる

 滋賀県立美術館はリニューアル以降、教育普及プログラムにも注力しており、2024年3月策定の「滋賀県立美術館魅力向上ビジョン」では、「子どもも大人も来たくなる 未来をひらく美術館」を掲げている。

 さらに今年3月31日には「滋賀県立美術館整備基本計画」が策定され、「キッズアートセンター」の設立と、その活動を美術館の核に据えることが明記された。今回の展覧会が提示していた「誰もに開かれた自由な鑑賞体験」こそが、これからの同館が目指す方向性を象徴しているように感じられた。