2026.9.29

山本基が故郷・尾道で35年の軌跡をたどる回顧展「しろきうみへ」を開催。約3トンの塩で描く記憶と時間

塩を用いたインスタレーションで知られる美術家・山本基の個展「しろきうみへ―記憶は白く、海へと還る―」が、尾道市立美術館で開催される。会期は9月19日〜11月15日。

《時に宿る》(2025)制作の様子 コルトレイク・トリエンナーレ2025(ベルギー)
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 塩を用いた壮大なインスタレーションで世界的に知られる美術家・山本基の個展「しろきうみへ―記憶は白く、海へと還る―」が、尾道市立美術館にて2026年9月19日〜11月15日の会期で開催される。全館を使用した回顧展の開催は、作家の故郷である尾道では初となる。

山本基 Photo: WakanaYanagida

塩で描いてきた膨大な線

 山本は1966年尾道生まれ、金沢美術工芸大学卒業。現在、金沢市在住。1994年に妹を、2016年に妻を亡くした山本は、大切な人の記憶を留め、忘れゆく自らに抗うかのように塩で膨大な線を描き続けてきた。浄化や再生を象徴する「塩」という素材を通して表現されるその営みは、世界各国で高く評価されてきた。。

山本基《迷宮》(2013) 広島県立美術館

   本展は、大学に入学した91年から現在に至る35年間の軌跡を網羅する構成。大学時代の油彩画をはじめ、床一面に塩で迷路や渦模様を描く代表的なインスタレーション、近年の大型平面作品まで、同館の6つの展示室と展望ロビーに一堂に展開する。

制作の様子 Photo: Mike Chaney

   会場では、ナイカイ塩業から提供された約3トンの塩を使用し、山本が単身で床に緻密な作品を描き出す。開幕初日の9月19日から22日までの4日間は、一度引いた線を一切描き直さない緊張感あふれる制作過程を観賞できる公開制作も実施する。

能登半島地震で倒壊した作品の再構築、塩をレジンで封じた作品

能登半島地震からの作品再生

   さらに注目したいのは、2024年の能登半島地震によって倒壊した作品をめぐる表現だ。かつて石川県珠洲市の保育所跡で制作され、震災で崩れ落ちた作品《記憶への回廊》の塩を拾い集め、レジンの中に封じ込めた約400個の欠片を暗室内に吊り下げる再構成作品を展示する。本作は会期終了後、再び奥能登へと返却される。

「海に還るプロジェクト」(コルトレイク・トリエンナーレ2025、ベルギー) Photo: Mathieu Van de Sompel
「海に還るプロジェクト」(コルトレイク・トリエンナーレ2025、ベルギー) Photo: Mathieu Van de Sompel

 加えて、会期最終日の11月15日には、2006年より世界各地で展開してきた「海に還るプロジェクト」を遺憾なく実施。来場者の手によって作品を解体し、その塩を自らの原風景である尾道の海へと還す儀式的なイベントが行われる。大切な存在との別れや記憶の変容に向き合い続けた作家の表現が、深い巡りの果てに完結を迎える予定だ。