2025.6.5

造形作家の「起こし絵」をつくる。『美術手帖』2025年7月号は「岡﨑乾二郎」特集

『美術手帖』2025年7月号「岡﨑乾二郎」特集が6月6日に発売される。東京都現代美術館で開催中の「岡﨑乾二郎 而今而後 ジコンジゴ Time Unfolding Here」展(~7月21日)にあわせた本特集では、岡﨑の頭の中に折り畳まれている「彫刻の仕組み」「絵画の仕組み」「批評の仕組み」等に注目。第三者の視点も交えながら解き明かすことで、この造形作家の「起こし絵」を立体的に立ち上げることを試みる。また、アーティスト・インタビューでは、アートコレクティブMSCHF(ミスチーフ)を取り上げる。

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造形作家の「起こし絵」をつくる

 造形作家・岡﨑乾二郎(1955〜)は、1981年3月に個展「たてもののきもち」(村松画廊、東京)で「あかさかみつけ」シリーズを発表し、その日常的な素材からなる軽やかな表現で颯爽とシーンに現れる。以降、絵本、メディア・アート、環境設計、タイル制作、描画ロボットの開発、批評活動に至るまで、多岐にわたるメディウムをひとつのテーブルに載せながら、多くの仕事を手掛け、達成してきた。

 その後、企画監修した「抽象の力」展(豊田市美術館、2017)の開催、書籍『抽象の力』(亜紀書房、2018)の刊行が続き、2019年には同じく豊田市美術館で大規模回顧展「視覚のカイソウ」も開催された。これは、作品と批評活動が不可分のものとしてその全貌を見渡す機会となり、国際的評価と存在感も次第に高まっていった。

 そして今年、東京都現代美術館「岡﨑乾二郎 而今而後 ジコンジゴ Time Unfolding Here」展(~7月21日)が開催されている。コロナ禍を経たこの間に、世界にも岡﨑自身にも大きな変化があった。2022年以降の新作群がずらり並ぶ会場では、驚くべき造形の世界が展開されている。

 本特集では、岡﨑の作品に加え、その頭の中に折り畳まれている「彫刻の仕組み」「絵画の仕組み」「批評の仕組み」等にも注目。第三者の視点も交えて解き明かしていくことで、この造形作家の「起こし絵」を立体的に立ち上げることを試みている。

 また、アーティスト・インタビューでは、現代の資本主義や新自由主義の欺瞞を、様々なメディアを用いて挑発的に暴く作品を発信・拡散するアートコレクティブMSCHFを取り上げる。東京での個展に際して、彼らの考える、芸術の定義、作品と製品の関係、イメージの拡散とその力学について、馬定延が話を聞いた。