2026.10.7

大阪中之島美術館で「つくる女性の100年」展が来年開催。女性作家たちが切り拓いた活動の歩みをたどる

大阪中之島美術館で、20世紀初頭から現代までの約100年にわたる女性の作家たちの歩みをたどる展覧会「つくる女性の100年」が開催される。会期は2027年1月9日〜3月22日。

加藤美佳《パンジーズ》(2001) 高橋龍太郎コレクション Photo by Yoshitaka Uchida ©Mika Kato, Courtesy of Tomio Koyama Gallery
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 大阪中之島美術館で、20世紀初頭から現代までの約100年にわたる女性の作家たちの歩みをたどる展覧会「つくる女性の100年」が開催される。会期は2027年1月9日〜3月22日。

 本展では、50名を超える作家たちそれぞれの試みを、各々が置かれた社会状況やライフストーリーとあわせて紹介する。困難に立ち向かい道を切りひらく者、家庭生活のなかから表現の糸口を見つけ出す者、自分の身体を通して社会に向きあう者などによる様々な実践と、彼女たちにとっての「つくること」の意義やその可能性を、現代を生きる人々にひらく試みとなる。

女性作家の道筋を切り拓いたパイオニアたち

 展覧会は全10章で構成。第1章「1920s – 1940s 道筋を切りひらいたパイオニアたち」は、日本画家・上村松園(1875〜1949)や、洋画家・三岸節子(1905〜1999)などの女性美術家のパイオニアたちを取り上げることからスタートする。女性が主体的に表現することが極めて困難な時代のなか、作品をつくり、発信し、後継のための領野をつくり出したその活動を紹介する。

上村松園 《清少納言》(1917-18頃) 個人蔵

 女性作家は男性と比較すると、社会慣習上モチーフが制限されており、女性像は扱うに相応しい画題のひとつとされてきた。そうした制限のなかでも作家たちは、画家としての葛藤を自画像に込める者、女性労働者に目を向ける者、華やかでモダンな生活を描く者、戦時下の不安や苦しみを描写する者など、それぞれの個性を発揮した。第2章「1920s – 1940s 女性はいかに女性を描いたか」では、女性が描いてきた女性の姿に、作品を通じて注目する。

 第3章「1950s – 1970s 欧米への渡航と挑戦」では、ニューヨークで独自の絵画表現を完成させた草間彌生(1929〜2026)や、国際的な前衛芸術家グループ「フルクサス」の結成に関わったオノ・ヨーコ(1933〜)、そこに参加した塩見允枝子(千枝子、1938〜)などを紹介。従来にない挑戦的な活動を行った女性作家たちの表現にせまる。

塩見允枝子(千枝子)《ウォーター・ミュージック》(1964/1991) 国立国際美術館 撮影:福永一夫

前衛運動・手芸・ウーマンリブ

 第4章「1950s – 1970s 具体美術協会」では、関西を主な拠点とした「具体美術協会」の美術家を取り上げる。創始者の吉原治良は女性も積極的に協会へ招き入れ、同時代のほかの集団と比べると性別にかかわらず活動しやすい環境であったようだ。本章では、具体として活動した田中敦子(1932〜2005)や山崎つる子(1925〜2019)の抽象絵画などにスポットを当てる。

山崎つる子《作品》(1961) 大阪中之島美術館

 女性が家庭に入り、家族を支える主婦像が社会的に規範となった1950年代。これ以降、「手芸」は大きなブームとなり、大勢の女性が家事の合間に手芸に勤しむようになる。第5章「1950s – 1970s 手芸を巡って」では、造形作家・宮脇綾子(1905〜1995)らの作品を紹介。つねに女性のそばにあった手芸を「家庭でできる創作活動」として見つめる。

宮脇綾子《めおと蟹》(1963) 豊田市美術館

 1960年代後半になると、アメリカのウーマンリブ運動と呼応するように、女性の解放や社会的地位の向上を訴える美術家が増えていった。例えば出光真子(1940〜)は、家庭生活の閉塞感や、女性に対する根強い差別を映像作品で表現した。ほかにも巨大な絵画と大胆なパフォーマンスで社会の変革を訴えた岸本清子(1939〜1988)や、アジアの女性との連帯を示したイトー・ターリ(1951〜2021)などを、第6章「1970s – 1980s 女性の立場の向上と解放を求めて」では取り上げる。

出光真子《おんなのさくひん》(1973) 大阪中之島美術館

視覚と認識・メディア・そして現代へ

 思索的な表現が重視された1970年代。事物の存在と認識のズレといった哲学的な問いに取り組んだ女性の作家にも注目したい。第7章「1970s – 1980s 視覚と認識をめぐって」では、写真や版画、彫刻などの技法を通して、視覚と認識、二次元と三次元の関係を探るなど、作家のジェンダーを意識させない多様な実践をたどる。

 男女雇用機会均等法が成立するなど、女性の社会進出が進み、大学進学率も上がった1980年代。この頃、若い女性の美術家が次々と登場し、メディアでも取り上げられるようになる。しかし、繁栄した雑誌文化は、彼女たちを持ち上げると同時に消費する傾向もあった。第8章「1980s – 2000s 女性の社会進出とメディアとの攻防」では、この時代を生きた前本彰子(1957〜)や吉澤美香(1959〜)、そして90年代以降の長島有里枝(1973〜)らの活動を取り上げる。

前本彰子《NORIKO》(1986) みそにこみおでん氏

 第9章「2000s – 2010s 私的な宇宙と揺らぐ足元」で焦点となるのは、1995年の阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件、そして2001年のアメリカ同時多発テロ事件など、世紀末から新世紀にかけての終末感とそれを受けた作家らの繊細な表現だ。またこの時代は、現代美術家・村上隆によって提唱された芸術運動「スーパーフラット」の影響もあり、マンガやアニメと美術の境界も緩やかになっていった。しかし、こうした時代の気分は2011年の東日本大震災により一変することとなる。

 最終章の「2010s – 2020s 身体と『女性の美術家』からの解放」では、2010年代後半に起こった「#MeToo運動」から、20年代に世界的流行を見せた新型コロナウイルスの影響までを取り上げる。ジェンダー平等や健康やケアへの意識が高まった今日までの状況とその視点を交えながら、これからの生のあり方を問いかける作品を紹介する。

片山真里《ballet #002》(2013) 愛知県美術館