2026.10.6

小村雪岱と玉山拓郎、約100年を隔てた2人が出会う。資生堂ギャラリーで「今はいつのことか」

大正から昭和初期に活躍し、資生堂のデザインにも大きな足跡を残した小村雪岱と、現代美術家・玉山拓郎を組み合わせる展覧会「今はいつのことか―小村雪岱と玉山拓郎」が、東京・銀座の資生堂ギャラリーで開催される。会期は11月3日〜2027年2月28日。キュレーションは金秋雨が手がける。

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 東京・銀座の資生堂ギャラリーで、「今はいつのことか―小村雪岱と玉山拓郎」が開催される。会期は11月3日〜2027年2月28日。キュレーションは、東京を拠点に活動するキュレーター、研究者の金秋雨が手がける。

約100年の時を隔てた2人

 本展は、大正から昭和初期にかけて活躍した美術家・小村雪岱(1887〜1940)と、光や映像、音、立体を組み合わせたインスタレーションで知られる玉山拓郎(1990〜)という、約100年の時を隔てた2人の表現を結びつける展覧会だ。

 小村雪岱は東京美術学校(現・東京藝術大学)で日本画を学び、泉鏡花『日本橋』の装幀や邦枝完二『おせん』の挿絵をはじめ、装幀、舞台美術、映画の美術・時代考証など幅広い領域で活動した。1918〜23年には、資生堂初代社長・福原信三の招きによって資生堂意匠部(後の宣伝部)に所属。当時の資生堂で和風のデザインを担い、現在まで使用される「資生堂書体」や和文ロゴタイプの基礎の成立にも深くかかわった。資生堂は現在、雪岱の作品を70点以上所蔵している。

『銀座』(1921) 資生堂企業資料館蔵

 いっぽう玉山は1990年岐阜県生まれ。家具や日用品、室内空間など身近なイメージをモチーフとしながら、鮮やかな照明や音響を組み合わせることで、鑑賞者の身体感覚や知覚を揺さぶるインスタレーションを展開してきた。2025年には豊田市美術館で個展「玉山拓郎:FLOOR」を開催し、その活動により第76回芸術選奨文部科学大臣新人賞(美術部門)を受賞している。

 本展で玉山は、雪岱の作品や思想、そして雪岱が生きた時代の銀座から着想を得た新作インスタレーションを発表。スリガラスを通した光、半透明の布、ステンレスの磨き加工による鏡面という3つの要素を用い、鑑賞者の視点や身体の動きによって風景が変化する空間をつくり出すという。そこでは「過去」「現在」「未来」が重なり合うような時間感覚が提示される。

 会場には玉山の新作に加え、雪岱が資生堂在職時に手がけた3つの作品も展示。また、雪岱が活躍した当時の銀座の映像や資料を紹介し、資生堂意匠部や、泉鏡花を囲んで文学者や美術家らが集った「九九九会」など、雪岱と銀座をめぐる記憶にも光を当てる。

 展覧会タイトルの「今はいつのことか」は、雪岱が1937年に発表した随筆「古寺巡り」に記した、「現在が今の事か昔の事か分らなくなる」という一節に由来する。1919年の開廊以来、銀座という街の変化を見つめ続けてきた資生堂ギャラリーを舞台に、雪岱が残した余白や時間への感覚を玉山が現代へと接続する本展。約100年を隔てた2人の視線から、「いま」という時間そのものを問い直す機会となりそうだ。