2025.10.24

今週末に見たい展覧会ベスト12。《天空のアトラス》からオルセー美術館、正倉院、柚木沙弥郎まで

今週閉幕する/開幕した展覧会のなかから、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。なお、最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「柚木沙弥郎 永遠のいま」(東京オペラシティ アートギャラリー)展示風景より
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もうすぐ閉幕

「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO 2025」

Michael and Sandy Marsh, Amarillo, Texas, September 27, 1974
© Stephen Shore. Courtesy 303 Gallery, New York.

 東京・八重洲、日本橋、京橋、銀座エリアを会場とした「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO 2025」は10月27日まで。2025年度のテーマは「庭 / Garden」。ジル・クレマンが唱えた「動いている庭」の思想にならい、都市空間に写真を介して生命の流動性や共存を可視化する試みがなされる。

 都市に点在する複数会場で行われる企画展では、「City as Garden」と題し、スティーブン・ショアやメリッサ・シュリークらが個展形式で出展。また、新進作家の育成プログラム「T3 NEW TALENT」から選出された5名のアーティストによるグループ展、MEP(パリ)との国際共同キュレーション「STUDIO+拡張する現代写真」、さらに1950年代以降の日本の女性写真家に焦点を当てた展覧会「I’m So Happy You Are Here」などが展開されている。

 また、同時開催の「T3 PHOTO ASIA」は、アジアの写真文化に焦点を当てるアートフェアであり、2025年は台湾をゲスト国に迎える。伝説的作家ラン・ジンシャンのヴィンテージ作品を紹介する「Masters展」や、「The Shape of Asian Landscapes: Then and Now」をテーマに、アジア各地の新進・ベテラン作家の表現を通してアジア的視点を掘り下げるキュレーション展示も行われている。

会期:2025年10月4日~10月27日
会場:東京・八重洲、日本橋、京橋、銀座エリアの屋内・屋外会場
観覧料:無料
詳細は公式サイトを確認

「新収蔵&特別公開|コレクションにみる日韓」(東京国立近代美術館

ソン・ヌンギョン 現場:オルシグ! 1985

 東京国立近代美術館で、コレクションによる小企画「新収蔵&特別公開|コレクションにみる日韓」が10月26日まで開催されている。

 2025年、日本と韓国は国交正常化60周年を迎える。1910年の日韓併合から日本の植民地支配を受けた後、朝鮮半島は45年に解放された。しかし、冷戦下で南北の対立が激化し、すぐに朝鮮戦争が始まる。その後も、韓国は軍事独裁政権による厳しい統制や民主化運動を経験している。これは日本が朝鮮戦争による特需を受け、「戦後」の復興を進めた歴史と対照をなしている。

 同館は今年、朴栖甫(パク・ソボ)とソン・ヌンギョンという韓国現代美術を代表する2作家の作品が収集した。本展では、同館のコレクションを通して日韓の歴史を振り返るとともに、両国の理解を深めるきっかけとして、それぞれの美術表現を紹介している。

会期:2025年7月15日~10月26日
会場:東京国立近代美術館
住所:東京都千代田区北の丸公園3-1
電話:050-5541-8600
開館時間:10:00~17:00(金土〜20:00)※入館は閉館の30分前まで
観覧料:一般 500円 / 大学生 250円 / 高校生以下および18歳未満、65歳以上  無料

「東松照明と土門拳-語りつぐ写真-」(土門拳写真美術館

 山形・酒田市の土門拳写真美術館で、戦後80年を記念した特別展「東松照明と土門拳-語りつぐ写真-」が10月26日まで開催されている。

 ともに20世紀の日本写真界を牽引した東松照明と土門拳。戦前に報道写真家として出発した土門と戦後に活動を始めた東松は、やや世代が異なるものの接点を持っていた。

 本展は、戦争や原爆をはじめとする日本の社会状況を見つめながら新たな表現を開拓し、写真界に大きな足跡を残した両者の作品を展覧する初の2人展だ。戦後80年という節目に、20世紀の写真がたどってきた道程を振り返るとともに、写真を通していまなお止まない戦火について考え語り継ぐ機会となることを目指すものとなっている。

会期:2025年7月11日~10月26日
会場:土門拳写真美術館
住所:山形県酒田市飯森山2-13(飯森山公園内)
電話:0234-31-0028
開館時間:9:00~17:00 ※入館は閉館30分前まで
休館日:9月25日
観覧料:一般 1300円 / 高校生 650円 / 中学生以下 無料(10月1日は開館記念日のため無料開放)

「弓指寛治 不成者:現代アートが描く義勇軍」(水戸市内原郷土史義勇軍資料館)

 水戸市内原郷土史義勇軍資料館で、戦後80年企画展「弓指寛治 不成者:現代アートが描く義勇軍」が開催されている。

 弓指寛治は元義勇軍隊員を祖父に持ち、戦争や慰霊をテーマに社会や歴史が生んだ不条理を鋭く表現し続けている。本展は、元隊員の市川力三(1924〜95、三重県生まれ)の手記をもとにした完全新作約50点を展示するものだ。

 戦後80年を迎え、戦争の記憶が失われつつあるいま、現代美術を通すことで、かつて満蒙開拓青少年義勇軍内原訓練所のあった内原の地から、忘れてはならない戦争の記憶と平和の大切さを発信している。また、資料館と作家が共に文化を発信し、収益につなげるため、全出展作品をふるさと納税の返礼品とする試みも行われている。

会期:2025年8月1日~10月26日
会場:水戸市内原郷土史義勇軍資料館
住所:茨城県水戸市内原町1497-16
開館時間:9:00~16:45
休館日:月
観覧料:無料

「ライカの100年:世界を目撃し続けた1世紀」(スパイラルガーデン

 東京・表参道のスパイラルガーデンで、「ライカI」の誕生100周年を記念した展覧会「ライカの100年:世界を目撃し続けた1世紀」が10月26日まで開催されている。

 「ここに決断を下す。リスクは覚悟の上だ」。この言葉とともに、起業家エルンスト・ライツ2世は、35ミリ判カメラの量産に踏み切った。1925年、ドイツ・ライプツィヒで開催された春季見本市で「ライカI」が発表。以来、写真の世界に変革がもたらされ、今年で100年の時が経った。

 その節目の年を記念して、世界主要都市で行われた展示が東京に巡回。100年にわたる歴史を振り返るとともに、写真を通じて結ばれた植田正治と福山雅治による展覧会、さらに「ライカ・ホール・オブ・フェイム・アワード」受賞の世界的写真家による作品展示など、ライカの伝統と文化が多角的に紹介されている。

会期:2025年10月18日~10月26日
会場:スパイラルガーデン
住所:東京都港区南青山5-6-23 スパイラル1階
電話:03-3498-1171
開館時間:11:00~19:00観覧料無料(事前予約制)

今週開幕

「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」(国立西洋美術館

エドガー・ドガ 家族の肖像(ベレッリ家) 1858-69 オルセー美術館、パリ ©photo:C2RMF / Thomas Clot

 国立西洋美術館で「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」が開催される。会期は10月25日~2026年2月15日。

 印象派といえば、移ろう光や大気のなかにとらえた戸外の風景画が想起されることが多いが、印象派の画家たちは近代化の進む19世紀後半のパリやその近郊に生き、現代生活の情景も好んで画題としてきた。こうした画家たちが手がけた作品には、室内を舞台としたものも少なくない。とりわけエドガー・ドガは、鋭い人間観察にもとづいた、心理劇の一場面のような室内画に本領を発揮し、いっぽうでピエール=オーギュスト・ルノワールは、穏やかな光と親密な雰囲気をたたえた室内情景を多数描いた。また、エドゥアール・マネやクロード・モネ、ギュスターヴ・カイユボットらによる、私邸の装飾を目的とした作品も多く、印象派と室内空間との関係は思いのほか深いものであったことがうかがえる。

 本展では、パリ・オルセー美術館所蔵の傑作約70点を中心に、国内外の重要作品も加えたおよそ100点の作品を紹介。オルセー美術館の印象派コレクションがこの規模で来日するのは約10年ぶりとなる。さらに本展覧会では、若き日のドガによる《家族の肖像(ベレッリ家)》が日本で初公開される。

会期:2025年10月25日~2026年2月15日
会場:国立西洋美術館
住所:東京都台東区上野公園7-7
電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間09:30~17:30(金土~20:00)※入館は閉館30分前まで
休館日:月、11月4日、11月25日、12月28日〜1月1日、1月13日(11月3日、11月24日、1月12日、2月9日は開館)
観覧料:一般 2300円 / 大学生 1400円 / 高校生 1000円 / 中学生以下無料

特別展「第77回 正倉院展」(奈良国立博物館

中倉 瑠璃坏

 毎年秋に封が解かれ、宝物の点検が行われる正倉院宝庫。この時期にあわせて宝物を一般に公開する正倉院展が、今年も奈良国立博物館で開催される。

 正倉院宝庫には様々な経緯で宝物が納められたと考えられている。大きくは天平勝宝8歳(756年)6月21日以降の5回にわたり、光明皇后によって東大寺の大仏に献納された聖武天皇の遺愛品、東大寺での法要にまつわる品々、東大寺の造営に当たった造東大寺に関連する品々に分類することができる。ほかにも宮中儀式具や武器・武具なども残っており、宝物の入庫には様々ないきさつがあったことが推定されている。

 今年の出陳宝物は67件、うち6件は初出陳。か西方でつくられたガラス器で、シルクロードを経て東アジアにもたらされた《瑠璃坏》や、「蘭奢待(らんじゃたい)」の名でもよく知られている《黄熟香》なども展示される予定だ。

会期:2025年10月25日~11月10日
会場:奈良国立博物館
住所:奈良県奈良市登大路町50(奈良公園内)
電話:050-5542-8600
開館時間:8:00~18:00(金土日祝〜20:00)※入館は閉館の60分前まで
休館日:会期中無休
観覧料:一般 2000円 / 大学・高校生 1500円 / 小中学生 500円 ※日時指定券

特別展「天空のアトラス イタリア館の至宝」(大阪市立美術館

イタリア館の《ファルネーゼのアトラス》

 数々の美術品で話題を集めた大阪・関西万博のイタリア館。同館で目玉のひとつとなっていた《ファルネーゼのアトラス》(2世紀)が、大阪市立美術館の特別展「天空のアトラス イタリア館の至宝」で展示される。会期は10月25日〜2026年1月12日。

 作品名にある「ファルネーゼ」とはルネサンス期の名門貴族であり、その美術品コレクションはナポリ国立考古学博物館の柱となった。高さ193センチの大作である本作は、古代彫刻の最高傑作のひとつ。重い天球を抱える巨神アトラスが象られ、その天球には星座や黄道十二宮が精緻に刻まれている。通常はナポリ国立考古学博物館が所蔵しており、今回の万博においてアジア初公開となった。

 今回の特別展では、このほかにもイタリア館からラファエロの師・ピエトロ・ヴァンヌッチ(通称ペルジーノ、1450頃〜1523)による《正義の旗》(1496)も出品される。

会期:2025年10月25日〜2026年1月12日
会場:大阪市立美術館
住所:大阪市天王寺区茶臼山町1-82
開館時間:9:30〜17:00 ※入館は16:30まで
休館日:月(祝日の場合は開館して翌平日)、12月29日〜1月2日
料金:一般 1800円 / 高校・大学生 1500円 / 小・中学生 500円

「養老天命反転中!Living Body Museum in Yoro」(養老天命反転地[養老公園])

荒川修作+マドリン・ギンズ 養老天命反転地 1995
©1997Reversible Destiny Foundation.Reproduced with permission of the Reversible Destiny Foundation

 養老天命反転地の開園30周年を記念したイベント「養老天命反転中!Living Body Museum in Yoro」が開催される。

 荒川修作とマドリン・ギンズによって構想・設計されたこの施設は、「死なないための場」をテーマに、既存の制度や価値観にとらわれず、人間の身体が持つ無限の可能性を探る空間として誕生した。物質文明から生命文明への転換が問われる現代において、両者の思想「天命反転」の意義はますます注目を集めている。

 本イベントでは、国際的に活躍するアーティストの特別展示のほか、11月1日から3日には全参加アーティストによるダンス・音楽・美術の特別公演を実施する。出演するのは、これまでも荒川+ギンズの世界を舞台化してきたNeon Dance、音響表現で知られるevala、国内外で活動を展開する大巻伸嗣の3組である。養老天命反転地におけるこの三者による特別なコラボレーションが披露される。

会期:2025年10月25日~11月17日
会場:養老天命反転地(養老公園)
住所:岐阜県養老郡養老町高林1298-2
開館時間:9:00~17:00(入場は閉館の30分前まで)
休館日:火
観覧料:一般 850円 / 高校生 550円 / 小学・中学生 350円

「柚木沙弥郎 永遠のいま」(東京オペラシティ アートギャラリー

展示風景より

 東京オペラシティ アートギャラリーで、企画展「柚木沙弥郎 永遠のいま」が開幕した。会期は12月21日まで。

 型染の世界に新風を吹き込んだ柚木沙弥郎(1922〜2024)は、自由でユーモラスな形態と美しい色彩が調和した生命力にあふれる作品で知られる。柳宗悦らによる民藝運動に出会い、芹沢銈介のもとで染色家としての道を歩みはじめ、挿絵やコラージュなどジャンルの垣根を超えて創作世界を広げてきた。

 本展では、75年にわたる活動を振り返るとともに、ゆかりのあった都市や地域をテーマに加え、柚木沙弥郎の仕事を紹介する。身の回りの「もの」に対する愛着や日々のくらしに見出した喜びから生み出された作品群を通して、民藝を出発点に人生を愛し楽しんだ柚木沙弥郎の創作活動の全貌を提示するものとなっている。

会期:2025年10月24日~12月21日
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2
電話:050-5541-8600
開館時間:11:00~19:00(入場は閉館の30分前まで)
休館日:月、11月4日、11月25日(ただし11月3日、11月24日は開館)
観覧料;一般 1600円 / 大学・高校生 1000円 / 中学生以下無料

「メタル展」(銀座メゾンエルメス ル・フォーラム

 エルメス財団から書籍『Savoir & Faire 金属』が刊行。本書の刊行を記念し、銀座メゾンエルメス ル・フォーラムでは、金属の属性を考えるグループ展「メタル」が開催される。

 本展では、金属にまつわる様々な事象から見受けられる両義性について、音楽、映像、造形の側面から3名のアーティストたちが金属を読み解き、再考するものとなる。

 参加作家は、メタル音楽を記号論的に解釈するエロディ・ルスール、日本古来の朱と水銀を媒介に内的宇宙と外的象徴を創造する映画監督の遠藤麻衣子、そして鉄球としての地球に人間活動を重ね合わせ、廃材を用いた作品をつくる榎忠の3名。

会期:2025年10月30日~2026年1月31日
会場:銀座メゾンエルメス ル・フォーラム 8・9階
住所:東京都中央区銀座5-4-1
電話番号:03-3569-3300 
開館時間:11:00〜19:00 ※入館は閉館の30分前まで 
休館日:水 
料金:無料

「岡本太郎 生きることは遊ぶこと」(川崎市岡本太郎美術館

岡本太郎 森の掟 1950

 川崎市岡本太郎美術館で「岡本太郎 生きることは遊ぶこと」が開催される。会期は10月28日~2026年3月29日。

 岡本太郎は、絵画、彫刻、写真、執筆、音楽、スポーツ、旅など多様な表現活動を通じて、「生きる」ことそのものに向き合い続けた芸術家だといえる。若き日を過ごしたパリでは、前衛芸術に触れるとともに、パリ大学にてマルセル・モースのもとで民族学を学び、人間の文化や生活における「遊び」の本質に着目するようになった。岡本にとって「遊び」とはたんなる娯楽ではなく、全存在を懸けた真剣な営みでもあった。

 本展では「遊び」をキーワードに、川崎市岡本太郎美術館のコレクションから代表作を紹介し、その人生と芸術に迫る。

会期:2025年10月28日~2026年3月29日
会場:川崎市岡本太郎美術館
住所:神奈川県川崎市多摩区枡形7-1-5 生田緑地内
電話:044-900-9898
開館時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月、11月4日、11月25日、12月29日〜1月3日、1月13日、2月12日、2月24日(11月3日、11月24日、1月12日、2月23日は開館)※臨時休館あり
観覧料:10月28日〜2026年1月30日(常設展のみ開催) 一般 500円 / 高校・大学生・65歳以上 300円 1月31日〜3月29日(企画展とのセット料金):一般 700円 / 高校・大学生・65歳以上 500円中学生以下 無料