2025.10.23

MOA美術館で「光る海 吉田博展」が開催へ。木版画の代表作約70点が勢ぞろい

MOA美術館で「光る海 吉田博展」が開催される。会期は12月20日〜2026年1月27日。

吉田博 瀬戸内海集 光る海 1926 MOA美術館
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 熱海のMOA美術館で、近代風景画家の第一人者・吉田博(1876〜1950)の木版画を展示する「光る海 吉田博展」が開催される。会期は12月20日〜2026年1月27日。

 吉田は福岡県久留米市出身。久留米藩士・上田束の次男として生まれ、18歳で上京、そして画塾・不同舎へ入門し本格的な画業をスタートさせた。1899年23歳のときには、描き溜めた水彩画を携え後輩とともに決死の渡米。デトロイト美術館などでの展示即売会の大成功によって資金を獲得し、ヨーロッパも巡り、2年後に帰国した。さらに2年後も、のちの夫人となるふじとともに渡米。3年以上をアメリカ、ヨーロッパで過ごすなど、古今の西洋美術に触れながらその画技を磨き、日本最初の洋画団体である太平洋画会の中心人物としても活躍していった。

 さらに、吉田はこよなく自然を愛し、その美しさを風景画として表わすことにも心血を注いだ。実際、その作品のほとんどは自ら体感した風景画で占められており、取材範囲は日本はもとより世界各国にも及んでいる。とくに、後半生に傾倒した私家版木版画では、浮世絵版画の伝統的な技法に、油彩画のタッチと水彩画の色彩表現を用いた洋画技法を取り入れ、未開拓の新しい芸術を創造した。

吉田博 「瀬戸内海集 帆船」のうち、左から朝、午後、夜 1926 MOA美術館 

 本展では、刻一刻と変化する海をとらえた「瀬戸内海集」シリーズや、合計7年間を超える外遊から生まれた「米国シリーズ」「欧州シリーズ」など、木版画の代表作約70点を展覧。また、吉田が描いた風景の現在のすがたを撮影し、独創的な技術で表現された作品の魅力をオリジナル映像で比較できるような展示もあわせて実施されるという。

吉田博 米国シリーズ エル キャピタン 1925 MOA美術館
吉田博 欧州シリーズ ヴェニスの運河 1925 MOA美術館