混沌熟視

　CSSビルディングで「混沌熟視」が開催される。

　本展は、スマートフォンの普及とともに発展したSNSカルチャーや、統計学的なデータベースをもとに生成されるAIによるテキストやイメージが日常的に流通する現代の情報環境に注目する。簡素な文字情報やショート動画が氾濫する状況において、人々が事物を多面的にとらえるための想像力や、自己と他者の共通点・相違点を探るコミュニケーション能力（忍耐力）が徐々に失われているようにも見えるという問題意識が示されている。

　今回参加する11人のアーティストは、それぞれが独立した個人であり、社会的な価値基準よりも個人的な価値基準を重視する作家たちである。全員が栃木県那須塩原市の山中で実施されたスケッチ旅行に参加し、木々や石など、かたちや色、模様がひとつとして同じものがなく、光や気候でも大きく様相が変化する自然風景と対峙している。複雑で完全には把握し得ない対象を前に、何を見て、どのようにとらえ、どのように描くかといった判断や選択が、それぞれの生き方にもとづいて立ち上がることが示されている。

　参加アーティストは、石山未来、磯崎隼士、伊藤瑞生、川田龍、黒坂祐、多田恋一朗、布施琳太郎、山田悠太朗、吉澤理菜、𠮷田桃子、米澤柊。