2025.11.19

サザビーズNY新拠点の初セール、約820億円の総額を達成

サザビーズは11月18日、ニューヨークの新拠点「ブロイヤー・ビル」で行われた初オークションで、約820億円の総額を記録した。

11月18日にサザビーズ・ニューヨークで行われた「レナード・A・ローダー・コレクション」イブニングセールの様子 All images courtesy of Sotheby's
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 サザビーズは11月18日、ニューヨークの歴史的建築「ブロイヤー・ビル」への移転後、初のオークションとしてレナード・A・ローダー・コレクションを出品し、総額5億2750万ドル(約820億円/推定3億7920万〜4億1250万ドル)という事前予想を大幅に上回る結果を収めた。

 全24ロットが落札される「ホワイト・グローブ」の結果となり、83パーセントのロットが上限推定価格を超えるなど、同社の新拠点を象徴する劇的なスタートとなった。

 同セールの白眉は、グスタフ・クリムトによる大型肖像画《エリザベート・レーデラーの肖像》(1914–16)である。推定1億5000万ドルを大きく上回り、約20分にわたる6者の競り合いの末、最終的に2億3630万ドル(約365億円/手数料込み、以下同じ)で落札された。これはサザビーズ史上最高額であると同時に、オークションで落札されたクリムト作品としても過去最高値であり、20世紀美術のカテゴリーにおいても史上最高額を更新した。

グスタフ・クリムト エリザベート・レーデラーの肖像 1914–16

 この落札に続き、クリムトが夏を過ごしたアッター湖畔を描いた風景画2点も高額落札を記録した。《花咲く草原》(1908頃)は8600万ドル(約134億円)、《アッター湖畔ウンタラッハの森林斜面》(1916)は6830万ドル(約106億円)で落札。さらに紙に描かれたドローイング2点を加え、5点のクリムト作品の総額は3億9168万3300ドル(約609億円)に達した。

グスタフ・クリムト 花咲く草原 1908
グスタフ・クリムト アッター湖畔ウンタラッハの森林斜面 1916

 オークションではさらに、エドヴァルド・ムンクの《Sankthansnatt》(1901-03頃)が約7分の入札合戦の末、3150万ドル(約49億円)で落札された。アグネス・マーティンの《The Garden》(1964)も1760万ドル(約27億3700万円)に達し、1992年にホイットニー美術館で開催された大規模回顧展以来の市場登場として注目を集めた。

エドヴァルド・ムンク Sankthansnatt 1901-03頃
アグネス・マーティン The Garden 1964

 アンリ・マティスの重要なブロンズ作品6点も強い需要に支えられ、総額4900万ドル(約76億2000万円)を記録。なかでも《Figure décorative》は1671万ドル(約26億円)で落札され、マティスのブロンズ作品として2番目に高い価格となった。

アンリ・マティス Figure décorative 1908構想/1950鋳造

 また、フィンセント・ファン・ゴッホによるペンと葦筆のみで制作されたドローイング《Le Semeur dans un champ de blé au soleil couchant》(1888)は1120万ドル(約17億4200万円)を記録し、同作家の紙作品としてオークション史上最高額を更新した。

フィンセント・ファン・ゴッホ Le Semeur dans un champ de blé au soleil couchant 1888

 今回のセールは、化粧品大手エスティ ローダーの創業家出身で、アメリカ美術界を代表するコレクターであり慈善家であるレナード・A・ローダーのコレクションからなる。ローダーは20世紀美術、とりわけキュビスムの収集家として知られ、メトロポリタン美術館へのキュビスム作品90点の寄贈は同館の現代美術コレクションを根本から変えたと評価されている。

11月18日にサザビーズ・ニューヨークで行われた「レナード・A・ローダー・コレクション」イブニングセールの様子

 サザビーズCEOのチャールズ・F・スチュワートは、「ブロイヤーでの新たな章の始まりに、ローダー氏の比類なきコレクションを迎えられたことは象徴的な出来事だった」とコメント。また、アメリカ地区会長のリサ・デニソンは、「クリムトの傑作3点が一夜にして揃うような機会は、生涯に一度あるかどうか。今夜の会場にはその歴史的瞬間を共有する緊張感と高揚が満ちていた」と述べている。

 ローダー・コレクションからは、11月19日に開催されるデイ・オークションでも約30点が出品される予定である。