EXHIBITIONS

越智康貴「肉体の學校」

2025.05.22 - 06.08

越智康貴

 光灯 / kohtohで、越智康貴による個展「肉体の学校」が開催されている。

 越智康貴は1989年生まれ。文化服装学院を卒業後、2011年にフラワーショップ「DILIGENCE PARLOUR」を開業。現在はフローリストのほか、写真や文章の分野でも活躍している。

 数年前より絵画など作品の制作を本格的に始め、本展が初の個展となっている。本展ではコラージュ、水彩、アクリルなどの新作約30点を発表。

 本展のタイトル「肉体の學校」は、三島由紀夫の同名小説から引用されたもので「肉体を学び、意識に主体性を取り戻す」という考えが込められている。つまり、社会の基準に偏った自己評価から距離を置き、「自分自身」の存在そのものに価値を見出す視点が重要なのだということを企図している。

 作家・批評家のスーザン・ソンタグは『沈黙の美学』(1967)のなかで、「どの時代も『スピリチュアリティ』が目指すところをみずから再発明しなくてはならない。(スピリチュアリティ=人間の生に内在する苦しい構造的矛盾を解決し、人間意識の完成、つまりは超越を目指すための計画、用語、観念)」(*)と述べ、そのもっとも有効なメタファーとしてアートがあると説いている。花や言葉、占いを通して人と関わってきた越智も、人間が根本的に持つ矛盾を解決することで、そのままアートという表現に結びついていった。

 越智の絵画には、サブカルチャーの雰囲気を帯びたキャラクター、臓器、花、自画像、友人のポートレート、ピカソらモダニズムの画家たちを彷彿させるイメージなど、夢や記憶の深層を旅するような図像が登場する。越智が既存のイメージの記憶から再構成したこれらのイメージコラージュと、「自分を主体的に感じ取ること」という制作のテーマとが結びつき、観者に対しても自身の記憶や感情を開き、内に抱える矛盾と向きあうきっかけを促している。

 本展では、越智が花や言葉を通して育んできたものの見方や世界との関わり方を基盤に、視覚芸術という新たな領域で、自らの思考と感覚を掘り下げていく。

*──スーザン・ソンタグ『ラディカルな意思のスタイルズ[完全版]』(河出書房新社、2018、p.9、管啓次郎+波戸岡景太訳)