町田の新美術館「国際工芸美術館(仮称)」は2029年に開館できるのか。異例の建設契約辞退が発生、計画の再考求める市民も
東京・町田の町田市立国際版画美術館に隣接する芹ヶ谷公園内に開館予定の新美術館「(仮称)国際工芸美術館」の建設延期が続いている。入札不調、計画見直しを訴える近隣住民や市民の運動、市が「計画に変更はなく2029年の開館を目指す」とする同館に何が起きているのか。経緯と現状を取材した。(6月8日〜プレミアム限定公開となります)

東京・町田の町田市立国際版画美術館に隣接して芹ヶ谷公園内に開館予定の新美術館「(仮称)国際工芸美術館」の建設延期が続いている。工芸美術館の新築工事は入札不調が続き、4回目で応札した建設会社も仮契約解除を市に申しいれ着工に至らない異例の事態に。計画見直しを訴える近隣住民や市民、美術家による運動も起きている。市は「工芸美術を新設する計画に変更はなく、今後は2029年の開館を目指す」とするが、何が起きているのか。経緯と現状を取材した。
公園内に版画美術館と一体的に整備
JR・小田急線の町田駅から徒歩十数分、市街地に位置する芹ヶ谷公園(1982年開園)は谷戸の地形を利用した広さ約11.4ヘクタールの市立公園だ。起伏に富む園内には雑木林が広がり、都内では珍しいホタルをはじめ多様な昆虫と動植物が生息し、地下水が湧く湧水源もある。敷地には複数の広場や散策路、遊具がある冒険広場、大池が整備され、園のシンボル的な飯田善國の巨大モニュメントなどの野外彫刻作品も点在。工芸美術館は、園内南側に立つ版画美術館の北側の斜面地に建設される予定だ。


計画では、工芸美術館は地上3階建て延べ床面積約2000平米。1階はロビー、チケットカウンター、3つの展示室といった施設の主要機能が入り、2階は景観が楽しめる屋上テラス、3階はトラックヤード、収蔵庫は1~3階を貫く3層構造になる。収蔵品は、2019年に閉館した市立博物館が収集したガラス工芸や陶磁器など約4000点を引き継ぐ。市の担当者によると、収蔵品には国内ではまとまっていることが珍しいボヘミアンガラス約130点や、所蔵館が少ないベトナムやタイ、クメール(カンボジア)の古陶が多数含まれる。
版画美術館とは2階のブリッジで連結し一体的に整備。2館連結により館内を介した新たな動線をつくり出し、高低差がある園内の利便性や街中との回遊性の改善を図る。版画美術館は1階に導入スペースの「アート・出会いの広場」を新設し、ワークショップや作品展示、フォーマンスなど様々なアート体験を提供。現在1階にある版画工房とアトリエ、喫茶室は同館西側に新築するアート体験棟に移る予定だ。総事業費は、計約43億8000万円を見込んでいる(アート体験棟を除く)。

