深センがアートのさらなる集積地に。FotografiskaとBASEが開館、2027年には新たな美術館も
中国・深センに、写真と視覚文化を中心とする「Fotografiska Shenzhen」と、没入型デジタルアート施設「BASE」が相次いで開館した。さらに2027年には、テンセントや京東による新たな美術館も誕生する予定だ。文化施設の整備が加速する深センのアートシーンはいかに変わろうとしているのか。

中国・深センの深セン湾エリアに10月1日、写真と視覚文化を中心とするアートセンター「Fotografiska Shenzhen(フォトグラフィスカ深セン)」が開館した。2010年にスウェーデン・ストックホルムで誕生したFotografiskaは、これまでストックホルム、エストニア・タリン、ベルリン、上海に展開。深センは世界で5番目、中国では2023年開館の上海館に次ぐ2番目の拠点となる。
会場は、深セン市南山区の大型商業複合施設「深セン湾万象城(Shenzhen Bay MIXC)」内に位置する。約5300平米の施設には5つの展示室のほか、レストラン「MONA」、ショップ、イベントスペースなどを併設。展覧会に加え、音楽やパフォーマンス、トークイベントなど、多様なプログラムを展開する。

写真から映像、インスタレーションへ。5つの開館展
開館にあわせて開催されているのは、写真、映像、インスタレーションなどを横断する5つの展覧会だ。なかでも大きな展示空間を占めるのが、マウリツィオ・カテランとピエルパオロ・フェラーリによるクリエイティブ・プロジェクト「TOILETPAPER」の展覧会「ToiletFotoPaperGrafiska」である。

本展は、ストックホルムとベルリンで開催された展覧会を深センの空間にあわせて再構成したもの。広告写真を思わせる鮮やかな色彩やシュルレアリスティックなイメージが、写真作品だけでなく家具や立体的なインスタレーションとして展開される。印刷物のなかで生み出されたイメージが展示空間全体へと拡張され、鑑賞者はそのなかを歩き回ることができる。

いっぽう、写真の社会的な役割を考えさせるのが、写真とサステナビリティをテーマとする国際賞「Prix Pictet」の第11回展「Storm」だ。新井卓、アルフレド・ジャーら最終候補に選ばれた12名の写真家による作品を通じて、自然災害から社会的混乱まで、現代世界が直面する様々な危機を浮かび上がらせる。

中国人アーティストの史国威(シ・グオウェイ)による個展「Festa」では、写真に手作業で彩色する独自の技法を通じて、都市と農村の祝祭や日常生活に潜む感情を探る。楊紫(ヤン・ズー)がキュレーションを担当した本展では、写真による現実の記録と、彩色によって生まれる主観的なイメージとの関係がひとつの焦点となっている。

また、ドイツのアーティスト、ミヒャエル・ナジャーの個展「Morphing Equilibrium」は、火山や氷河などの極限環境で撮影したイメージとデジタル技術を組み合わせ、気候変動やテクノロジーが地球環境に与える影響を考察する。さらに「Transcendent Realities」展では、范西(ファン・シー)、譚英傑(タン・インジェ)、マルコ・ブランビラ、ヴィヴィアン・サッセンらの作品を通じて、写真や映像が従来のフレームを超え、空間的な体験へと拡張する可能性を探っている。


5つの展覧会はそれぞれ異なるテーマを扱いながらも、写真というメディアの多様なあり方を示している。Fotografiska中国のマネージング・ディレクターを務めるクリスチャン・デヴィレは「美術手帖」の取材に対し、次のように語った。「私たちは写真を、従来のプリント作品だけに限定して捉えているわけではありません。過去20年間で画像技術は劇的に変化し、写真家たちはマルチメディアや映像、そして現在ではAIに至るまで、新たな表現を模索してきました」。
隣接するBASEが示す、もうひとつの文化施設のかたち
Fotografiskaの開館とほぼ同時期に、すぐ隣に「BASEデジタルアート・センター」もオープンした。9月30日に正式開館した同施設は、デジタル映像と没入型体験に特化した文化施設だ。高さ約16メートルの空間には、壁面と床面を覆う5面のプロジェクションと360度の音響システムを備え、アートから音楽、自然科学、ファッションまで多様な領域のコンテンツを展開する。

開館プログラムのひとつが、デイヴィッド・ホックニーによる「Bigger & Closer (not smaller & further away)」だ。ホックニー自身が制作に関与し、約3年をかけて完成させたこの没入型展覧会は、60年以上にわたる画業を6つの章からたどるもの。絵画や写真、舞台美術、iPadによる制作などを巨大な映像空間に再構成し、鑑賞者をその世界へと誘う。ロンドンのLIGHTROOMで初公開され、その後、上海などでも紹介されてきた本展には、深センで新たに広東語版も用意され、地域の観客に向けた展開が図られている。
もうひとつの開館プログラム「Prehistoric Planet: Dinosaurs」は、自然史ドキュメンタリー『太古の地球から よみがえる恐竜たち』をもとにした没入型映像体験だ。同センターでは今後、デイヴィッド・ボウイや『VOGUE』をテーマとするプログラムなども予定されている。

BASEのディレクターを務める何磊(ヘ・レイ)は、ホックニーの作品について、「既存の作品をたんにデジタル化して拡大投影するのではなく、アーティスト自身が制作に参加し、没入型空間における作品と音響、スケール、観客との関係を再考したもの」と説明。そのうえで、「BASEは、アートや映像、自然科学から音楽、パフォーマンス、ゲーム、テクノロジーまで、多様なコンテンツによって絶えず再定義される場を目指しています」と語った。


















