2026.1.15

「リサ・ラーソンの作り方 展」(PLAY! MUSEUM)レポート。手を動かすことで見えてくる、リサ・ラーソンのまなざし

立川にあるPLAY! MUSEUMで「リサ・ラーソンの作り方 展」が2月23日まで開催中。北欧を代表する陶芸家リサ・ラーソンの制作プロセスに焦点を当てた本展をレポートする。

文・撮影=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部)

展示風景より、「プロダクトの制作工程サンプル ネコのミア、ライオン、ハリネズミ」。リサのプロダクト制作における過程を追うことができる
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 東京・立川のPLAY! MUSEUMで「リサ・ラーソンの作り方 展」が開催されている。会期は2月23日まで。

 リサ・ラーソン(1931~2024)はスウェーデンを拠点に活躍した陶芸家だ。1950年代から長きにわたり制作を続け、動物をモチーフにした愛らしい陶器作品を数多く生み出してきた。その作品は世界各地で親しまれ、陶芸の枠を超えて幅広い支持を集めているほか、スケッチから生まれたキャラクターたちもまた、人々の暮らしに寄り添う存在として愛されてきた。2024年3月、92歳でその生涯を閉じている

展示風景より

 リサの創作でとくに知られているのは、縞模様が印象的な猫の「マイキー」をはじめとするオリジナルキャラクターや、成形から焼成までを自身の手で行った「ユニーク・ピース」と呼ばれる一点ものの陶器作品だ。いっぽうで、リサのキャリアの出発点は、ストックホルム郊外にあるグスタフスベリ工房の専属デザイナーとしての仕事にあった。ここでは、リサが原型モデルを制作し、それをもとに職人たちが量産を行うという、もうひとつの重要な制作の軸が築かれている。

 本展は大きく3部構成となっており、第1部では、世界中に届けられてきた量産プロダクトの制作過程に焦点が当てられる。原型やスケッチ、制作道具、写真や映像資料などが展示され、成形から焼成に至るまでの工程を通して、リサの創造の営みが丁寧に紹介されている。ひとつの作品がかたちになるまでの積み重ねを追うことで、リサの仕事の確かさが実感できるようだ。

展示風景より、リサが実際に使用していた道具の数々。とくに、制作時に好んで着用していたという剣道の練習着は、意外な存在だ
展示風景より、量産のための原型モデル
展示風景より、リサによるスケッチの数々。動物のなかでも、とくに猫を好んでいたことがうかがえる。タッチのバリエーションの豊かさにも注目したい

 本展の大きな特徴となるのは、展覧会の中心にワークショップが据えられ、毎日開催されている点だろう。施設内でもっとも大きな展示室を使用する第2部では、「like Lisa」と題されたたスケッチ体験、「マイキーのぬりえ」「マイキーのサンドアートボトル」の3種類のワークショップが用意されている。展示を見るだけでなく、実際に手を動かす体験を通して、リサの日々の制作の一端に触れられる構成となっている。

展示風景より、ワークショップ「マイキーのぬりえ」。壁面にはリサの人物像がよくわかる写真も展示されている
展示風景より、ワークショップ「マイキーのぬりえ」。クレヨンを用いて着彩し、オリジナルのマイキーを生み出すことができる
展示風景より、ワークショップ「マイキーのサンドアートボトル」。こちらは参加費1320円が別途必要となる

 また、毎週月・金・土・日曜日には、日本の窯元で制作された陶器のリサ猫にマジックペンで模様を施すワークショップ「にっぽんのリサ猫 模様つけ」も実施されている。完成した作品は会期中、展示室内に展示されるため、自身の手による一体が展示の一部となる特別な体験を味わうことができる。この機会にぜひ参加してみたい。

展示風景より、「にっぽんのリサ猫 模様つけ」の作品群。こちらは参加費4950円(郵送費含む)が別途必要となる。申し込みはE-tixでの事前予約制(2月分は1月15日より受付開始)

 「リサ・ラーソンのゆくえ」と題された第3部では、「リサの筆立て」に見られるリユースの発想を手がかりに、サステナブルな陶器の在り方について考える展示が展開されている。リサの拠点であったスウェーデンは、環境問題への意識が高い国として知られており、リサ自身も、破損して商品として販売できなくなった作品を別のかたちで活かすなど、日常的に工夫を重ねてきたことがうかがえる。ここで示される考え方は、鑑賞者それぞれの暮らしに引き寄せて考えるきっかけを与えてくれる。

展示風景より、「リサの筆立て」。折れた尻尾の穴に筆が差し込まれている
展示風景より。リサの制作物のなかでも、世に出なかった作品の数々。実際に手に取って触れることもできる

 さらに、今年9月18日には、リサのドキュメンタリー映画の上映も予定されており、こちらも見逃せない要素のひとつだ。会場内では複数のモニターで映画の一部が上映されており、制作風景や何気ない日常の様子から、リサの人となりが垣間見える。

 リサ・ラーソンがこの世を去ってから、まもなく2年が経とうとしている。本展で紹介される制作過程や、体験型のワークショップの数々は、リサが生涯を通して伝えてきた「つくることの喜び」を、これからの時代へ手渡しているように感じられた。

展示風景より