2026.2.13

「CURATION⇄FAIR Tokyo」のアートフェアが開幕。親密な邸宅空間でコレクションのあり方を想像する

登録有形文化財・kudan houseを会場に、「CURATION⇄FAIR Tokyo」のアートフェアのパートが開幕した。キュレーション展覧会で共有された鑑賞の文脈をもとに、邸宅空間のなかで作品の購入や展示のあり方を考える試みとして、21軒のギャラリーが参加している。会場の様子をレポートする。

文・撮影=王崇橋(編集部)

展示風景より
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 展覧会を通じて作品と向き合い、その延長線上でコレクションという行為へと自然に導かれていく。「CURATION⇄FAIR Tokyo」は、そうした鑑賞と購入の関係性を再定義する試みとして、東京・九段の登録有形文化財・kudan houseを会場に開催されるイベントだ。

 同イベントは、事前に開催されるキュレーション展覧会によって鑑賞の文脈を共有したうえで、アートフェアへと接続する二部構成を特徴としている。たんに作品を「並べて売る」場ではなく、邸宅という生活空間のなかで、作品と向き合い、購入後の姿を想像させるものだ。アートフェアは2月15日まで行われている。

 今年は、MISAKO & ROSENANOMALYTARO NASUしぶや黒田陶苑ギャラリー広田美術といった継続出展ギャラリーに加え、東京のアートフェア初参加となるakamanmaやATSUHIKO SUEMATSU GALLERYなどが出展している。

TARO NASUのブースの展示風景
WAITINGROOMのブースの展示風景

 会場では18の部屋に21軒のギャラリーが出展。古美術、近代美術、現代美術という異なる時代の作品が、ひとつの邸宅空間のなかに並置されている。

 本フェアのシニアアドバイザーを務める山本豊津(株式会社東京画廊・代表取締役社長)は、その特徴について次のように語る。「従来のアートフェアが、ギャラリー側の視点を軸に構成されることが多かったのに対し、本フェアは自分の家に作品を迎えたとき、どのように展示されるのかを具体的に想像できる」。近代日本の住宅において、美術を楽しむ場は床の間から壁面へと移行してきた。こうした住宅文化を背景に、異なるジャンルの作品がどのように共存し得るのかを検討する場だともいえる。

MA2Galleryのブースの展示風景

 また本フェアには、近代美術、古美術、現代美術それぞれを扱う主要ギャラリーが参加しており、ジャンルを横断して作品を比較・検討できる機会となっている点も特徴のひとつだ。

 例えばMISAKO & ROSENは、2階の和室にてマヤ・ヒュイットやトレバー・シミズによる絵画作品を展示している。共同創設者のジェフリー・ローゼンは、同フェアについて「自分たちのリビングルームにいるような感覚」と述べ、「展覧会の文脈のなかで、人々がリラックスして作品と向き合える点」を評価する。

 同ギャラリーは3回連続で出展し、いずれの回でも作品の販売実績を上げている。共同創設者のローゼン美沙子は、「1点か2点売れたら嬉しい」と語り、過度な販売プレッシャーを伴わないフェアのあり方に賛同を示した。

MISAKO & ROSENのブースの展示風景より、マヤ・ヒュイットの作品群
4649と18, Murataの共同ブースの展示風景

 今回初出展となる京都のFINCH ARTSは、東京のEUKARYOTEと共同出展し、福岡道雄、増田佳江、今村遼佑に加え、菅原玄奨畑山太志の作品を紹介している。FINCH ARTS代表の櫻岡聡は、ホワイトキューブでの展示と販売について「見る側も出す側も疲れが出てきている」としたうえで、「展覧会として成立する構成で見せるほうが、作家にとってもギャラリーにとってもプラスになる」と語る。規模の小さなギャラリーにとって、来場者との距離が近い親密なフェアである点も重要だという。

FINCH ARTSとEUKARYOTEの共同ブースの展示風景
FINCH ARTSとEUKARYOTEの共同ブースの展示風景より、菅原玄奨の新作

 主催者は日本のアートマーケットにおいて本フェアをどのように位置づけているのだろうか。主催の川上尚志(ユニバーサルアドネットワーク代表)は、日本のマーケットを「極端な値崩れが起こりにくい、非常に安定した市場」と評価したうえで「投資や投機の対象としてではなく、好きだから買うという動機を丁寧に育てていかなければ、市場の持続的な成長は望めない」とも指摘した。「急激な拡大を目指すのではなく、堅実な日本のアートマーケットを育てていくこと」と語る川上。確かにkudan houseの落ち着いた佇まいや、和の要素を含んだ空間は、こうした価値観を体感する場として機能しているといえるだろう。

展示風景

 邸宅という空間が生み出す親密な雰囲気のなかで、「コレクションする喜び」を体感するCURATION⇄FAIR Tokyo。本フェアの形式は、日本のアートマーケットにおける実践例として、今後の展開に期待が集まっている。

kudan houseの庭園