推定約221億円以上。市場初登場のクリムト肖像画が今秋、サザビーズNYに出品
11月18日、サザビーズがニューヨークの新本社にて化粧品業界の巨頭でエスティ ローダーの名誉会長であるレナード・A・ローダーのコレクションセールを開催する。市場初登場となるグスタフ・クリムトの作品3点を含め、落札総額は4億ドル(約590億円)以上と予想されている。

サザビーズが今秋、ニューヨークで「レナード・A・ローダー・コレクション」オークションを開催することを発表した。
同コレクションは、化粧品企業エスティ ローダー カンパニーズの名誉会長であり、アメリカを代表する美術コレクターとして知られるレナード・A・ローダー(1933〜2024)が築いたものであり、20世紀美術の精華を集めた「一世一代」の内容と評されている。オークションはサザビーズの新たな本社となるニューヨーク・マディソン街の「ブロイヤー・ビル」で開催され、11月18日のイブニングセールには24点が出品される予定だ。落札総額は4億ドル(約590億円)を超えると見込まれている。
今回の目玉となるのは、市場初登場となるグスタフ・クリムトの作品3点。そのうちのひとつである《エリザベート・レーデラーの肖像》(1914–16)は、ウィーン世紀末の黄金期に制作された全身肖像画のなかでももっとも精緻に構想された作品のひとつで、推定落札額は1億5000万ドル(約221億円)以上とされる。

同作に描かれているのはクリムト最大のパトロンであったレーデラー家の令嬢エリザベートであり、これまで一度も市場に登場したことがない極めて稀少な作品である。東アジア的な意匠を背景に、モダンなウィーン風ファッションをまとう若き女性の姿は、クリムトが到達した色彩と装飾の頂点を示す。
作品には波乱の来歴も刻まれている。ナチスによるオーストリア併合後の1939年に没収され、戦後の1946年に遺族へ返還された後、ドイツ系移民の美術商セルジュ・サバルスキーを経て、1980年代半ばにローダーが取得した。2023年、サザビーズのオークションでクリムトの《扇を持つ女》が約1億840万ドル(約156億円)で落札され、同作家の最高記録を更新。本作も新たな記録を樹立する可能性が高いとされる。