2026.2.19

アレキサンダー・ワンの親子がニューヨークのチャイナタウンに文化施設「The Wang Contemporary」を開設

ファッションデザイナー、アレキサンダー・ワンとイン・ワンの親子が設立する文化機関「The Wang Contemporary」が2月、ニューヨークのチャイナタウンに開館する。

The Wang Contemporaryの外観 Courtesy of The Wang Contemporary
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 ニューヨーク・チャイナタウンに、新たな文化拠点「The Wang Contemporary」が2月に開館する。

 ファッションデザイナーでありカルチャー・アイコンとしても知られるアレキサンダー・ワンと、その母で実業家・慈善家のイン・ワンによって創設される同施設は、アジアおよびアジア系アメリカ人の創造性を、アート、デザイン、音楽、パフォーマンスといった横断的な領域から紹介する、ミッション主導型の文化機関だ。機関が入居するのは、チャイナタウンの象徴的建築として知られるボウリー通り58番地の歴史的建物だ。

アレキサンダー・ワン(左)とイン・ワン Courtesy of The Wang Contemporary

 1924年に銀行として建設されたこのドーム屋根の建物は、2011年に歴史的建造物に指定され、25年にワン親子によって取得された。100年以上の歴史のなかで、初めて中国系アメリカ人が所有者となったこの建物は、「商業」の象徴から「創造と文化交流」の拠点へと生まれ変わる。ボウリー地区は、移民文化やヴォードヴィル、音楽ホール、さらにはパンクやグラフィティといった実験的表現の交差点として、ニューヨークの文化史をかたちづくってきた場所でもある。

The Wang Contemporaryの外観 Courtesy of The Wang Contemporary

 イン・ワンはプレスリリースで、「東洋と西洋をつなぐことは、私にとって概念ではなく、生き方そのものだった」と語り、この場所に文化機関を設立することについて「継続性とレジリエンス、そして私たちの物語が恒久的な居場所を持つという信念の象徴」とコメントした。

 いっぽう、アレキサンダー・ワンは、自身のアジア系アメリカ人としての経験に触れ、「私たちの声や物語、創造的な力が正当に映し出される場所は多くなかった。この空間は、物理的にも文化的にも“場を取り戻す”試みだ」と述べている。

 開館を飾るのは、旧正月にあわせて開催される、アート・コレクティブMSCHFによる3日間限定のパフォーマティヴ・インスタレーション《20,000 Variations On A Paper Plane In Flight》(2月20日〜22日)だ。中央の吹き抜けから、赤と金色の紙飛行機が1時間ごとに舞い落ちるこの作品は、作曲家・ピアニストのユン・ヨンジュンによる即興的に変化するピアノ演奏とともに展開される。

MSCHF 20,000 Variations On A Paper Plane In Flight Courtesy of The Wang Contemporary

 紙飛行機一つひとつには、英語でもっとも頻繁に使われる名詞5000語のなかから選ばれた一語が記されている。無作為に観客のもとへと降り注ぐそれらは、占いや託宣のような性格を帯び、訪れた人々は紙を拾い、開くことで、自らに割り当てられた「言葉」と出会うことになる。

 また、2026年を通じて同施設では、アジア文化に焦点を当てた多彩なプログラムが予定されている。5月のアジア・太平洋系米国人の文化遺産継承月間(AAPI Heritage Month)には、武術をテーマとしたフェスティバルを開催予定で、視覚芸術やパフォーマンス、インスタレーション、地域参加型のアクティベーションを通じて、建物そのものが「生きた文化の場」へと変貌する。

 歴史的建築の再生、アジア系の物語の可視化、そして地域と世界をつなぐ創造的ネットワークの構築──The Wang Contemporaryは、ニューヨークという都市の文化地図に、新たな座標軸を刻む存在となりそうだ。