石田徹也、ニューヨークで響いた「不安なる自己」。ガゴシアンが描く国際的評価への道
1990年代の日本社会を鋭く描き出した画家・石田徹也。その国際的評価向上の舞台裏に迫るべく、ガゴシアンのマネージング・ディレクター、ニック・シムノヴィッチと、2023年に石田のニューヨーク初個展をキュレーションしたチェチリア・アレマーニに話を聞いた。

世界のオーディエンスに日本人アーティストを紹介するうえで、国際的に評価の高い作家を扱ういわゆるブルーチップギャラリーやメガギャラリーは重要な役割を担ってきた。今年7月にロサンゼルスと東京のスペースを閉鎖すると報じられたBLUM(旧Blum & Poe)は、1994年の設立以来、村上隆や奈良美智、もの派など、日本の戦後・現代美術を海外に紹介する先駆的存在だった。2006年に設立されたファーガス・マカフリーもまた、元永定正、白髪一雄、高松次郎らの国際的評価を確立するうえで中心的な役割を果たしてきた。
そのメガギャラリーの代表格であり、ニューヨークを中心に世界各地でギャラリーを展開するガゴシアンは、2023年、日本の物故作家・石田徹也(1973〜2005)のエステートを取り扱うことを発表し、同年9月にはニューヨークで大規模な個展「TETSUYA ISHIDA My Anxious Self」を開催した。1990年代の「失われた10年」における日本社会の現実を繊細に描き出した石田に、国際的な注目が一気に集まった瞬間だった。

ガゴシアンと石田徹也との出会い
ガゴシアンのマネージング・ディレクター、ニック・シムノヴィッチは、15年以上前に香港のコレクターを通じて石田の作品と出会い、その魅力に一目で引き込まれたと振り返る。ラリー・ガゴシアンに紹介したところ、彼も同じく深く惹かれ、2013年11月には石田にとって日本国外で初めてとなる個展を香港で実現させた。