2025.7.18

SANAA設計の新文化拠点。台湾初の美術館+図書館複合施設「台中緑美図」が12月開館

台湾・台中市に新たな文化施設「台中緑美図」が誕生する。SANAAが手がけたこのプロジェクトは台湾初となる美術館と図書館の複合施設であり、12月13日に開館する。

台中緑美図の外観イメージ All images courtesy of Cultural Affairs Bureau, Taichung City Government
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 台湾・台中市において、新たな文化施設「台中緑美図(Taichung Green Museumbrary)」が12月13日に開館する。

 本施設は、中央公園に隣接する旧軍用空港跡地に位置し、台中市立美術館と台中市立図書館を一体化した台湾初の複合型文化拠点である。建築設計は、日本の建築ユニットSANAA(妹島和世+西沢立衛)が、台湾のリッキー・リウ・アソシエイツとの協働で手がけた。総床面積は約5万8000平方メートル。SANAAにとって台湾で初となる公共建築であり、これまでで最大規模の文化プロジェクトでもある。

メインエントランスのイメージ
アトリウムのイメージ

 「公園の中の図書館、森の中の美術館」というコンセプトのもと設計された建物は、大小8つのボリュームで構成され、外装はガラスや金属で覆われたうえで、白いアルミメッシュのファサードが施されている。高床構造により風や自然光を取り込み、周囲の環境と調和する開放的な空間が生まれている。さらに、都市と公園の両側からアクセス可能な広場や、中央公園を見渡せる屋上庭園「カルチュラル・フォレスト」も整備され、訪問者が都市と自然の共存を体感できる設計となっている。

カルチュラル・フォレストのイメージ
閲覧エリアのイメージ

 開館を記念して、美術館では国際チームによる展覧会「A Call of All Beings: See you tomorrow, same time, same place」が開催される。台湾、アメリカ、ルーマニア/韓国のキュレーターによって共同企画された本展は、中央台湾の自然や都市の風景、文化的背景を手がかりに、人間と非人間的存在の関係を多様な視点から探求する。

Loukia Alavanou On the Way to Colonus(スチール) 2021
VR360, produced by VRS. The first edition was powered by Onassis Culture
and is part of the Onassis Collection, courtesy of the artist
Jin-Da Lin + Cheng-Che Yu + MOUNT NO Shifted ice , Keshiketeng Banner, Dalai Nur 2014
Site-specific artwork, courtesy of the artist

 同展には、台中市立美術館の所蔵品に加え、国内外アーティストの新作や特別委託作品が多数出展される。参加作家には、ポーランドのカロリナ・ブレグワ、韓国のチョン・ソヨン、日本の鈴木悠哉、台湾の王虹凱、陳瀅如、許家維、劉玗、饒加恩らが名を連ねる。そのほか、ベルギーのアドリアン・ティルティオによる空間インスタレーションや、ジョーン・ジョナスの凧作品、ヨーゼフ・ボイスの後期彫刻など、多様なジャンルが展開される。

 さらに、美術館によるアート・コミッション「TcAM Art Commission」では、韓国のヤン・ヘギュと台湾のマイケル・リンによる初回委託作品も公開される予定だ。ヤンは、韓国と台湾に共通する「古木への信仰」から着想を得て、高さ27メートルのアトリウム空間に《Liquid Votive – Tree Shade Triad》を展開。リンは、台湾の伝統織物の柄を用いた壁面作品《Processed》を制作し、美術館の公共空間を再構成する。

TAI Body Theatre Forest 2023
Performance at Xiangtian Lake, photo by Ken Wang, courtesy of the artist

 そのほか、原住民舞踊団体「TAI Body Theatre」や、振付家スー・ウェンチー率いるYiLabによる映像作品、国際アート雑誌『White Fungus』とのコラボレーションなど、ジャンル横断的なプログラムも予定されている。

 台中市立美術館の館長・賴依欣は、「当館は台湾の現代アートを発信する新たな拠点として、国内外の芸術コミュニティとの対話を促す場を目指す。芸術と図書の融合が、環境や都市、文化のあり方に新たな視点と体験をもたらすことを期待している」とコメントしている。