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2025.12.4

「大英博物館日本美術コレクション」の見どころは? 日本美術の優品約200件と、約150年ぶりに一堂に会する3組(4図)の襖にも注目

2026年に開館100周年を迎える上野の東京都美術館で、「東京都美術館開館100周年記念 大英博物館日本美術コレクション 百花繚乱~海を越えた江戸絵画」が開催される。

秋冬花鳥図襖 桃山時代末~江戸時代初め 大英博物館蔵 © The Trustees of the British Museum
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 2026年に開館100周年を迎える上野の東京都美術館で、「東京都美術館開館100周年記念 大英博物館日本美術コレクション 百花繚乱~海を越えた江戸絵画」が開催される。会期は2026年7月25日~10月18日。

 1753年に開館したイギリス・ロンドンの大英博物館は、網羅的かつ体系的に収集された日本美術コレクションを有しており、その量・質の充実度は海外でも屈指と評価されている。19世紀後半のジャポニスム流行を背景に形成された同コレクションは、日本文化に魅了され強い関心を寄せた人々の情熱に支えられてきた。数々の蒐集家や学芸員によって築かれたつながりは、国境や時代を超えて今日まで受け継がれている。

大英博物館 外観 © The Trustees of the British Museum

 本展では、4万点におよぶ大英博物館の日本コレクションから、選りすぐりの優品約200件を紹介する。円山応挙の《虎の子渡し図屏風》(1781~82)をはじめ、イギリスから「初の里帰り」となる作品を多数展示するほか、8大浮世絵師による作品や貴重な肉筆画を通じて、同館における浮世絵コレクションの全貌を明らかにする。さらに、コレクションの形成に寄与した人物の紹介を通じ、多彩な日本美術の魅力を再発見する機会にもなるという。

左から、高橋明也(東京都美術館館長)、ロジーナ・バックランド(大英博物館日本セクション長 / キュレーター)

 まず本展では、大英博物館の日本コレクションの形成に貢献した5名を取り上げる。御雇外国人として日本に滞在し絵画を蒐集した外科医のウィリアム・アンダーソン(1842〜1900)、同じく御雇外国人として造幣局に勤め、古墳研究のため銅鐸・埴輪・石器などを集めたウィリアム・ガウランド(1842〜1922)、浮世絵の熱心な蒐集家でもあった小説家のアーサー・モリソン(1863〜1945)。加えて、大英博物館の学芸員オーガスタス・ウォラストン・フランクス(1826〜97)、ローレンス・ビニョン(1869〜1943)を紹介し、同コレクションがいかに築かれてきたかを紐解きながら、日本美術の多彩な様相を再発見することを試みる。

 イギリスから初めて里帰りを果たす作品も多数展示される。円山応挙《虎の子渡し図屏風》(1781~82)をはじめ、英国ジョージ王子(のちの国王ジョージ5世)と久保田米僊の合作《蛍図》(1881)、桜井香雲《法隆寺金堂壁画 九号壁 模本》(1880)など、近年の調査で注目された貴重な作品も並ぶ。

円山応挙 虎の子渡し図屏風 1781~1782 大英博物館蔵 © The Trustees of the British Museum
桜井香雲 法隆寺金堂壁画 九号壁 模本 明治時代 1880 大英博物館蔵 © The Trustees of the British Museum
英国ジョージ王子(のちの国王ジョージ5世)、久保田米僊 蛍図 明治時代 1881 大英博物館蔵 © The Trustees of the British Museum

 さらに、大英博物館所蔵の《秋冬花鳥図襖》と、青森・中泊町の宮越家所蔵《春景花鳥図襖》が一連の作品であったという発見を受け、本展ではこれら2点に加え、《秋冬花鳥図襖》の反対面にあたるシアトル美術館所蔵《琴棋書画仙人図襖》をあわせて展示。また、《春景花鳥図襖》の反対面にあたる《名所・風俗図(清見寺・三保松原)襖》を加えた3組(4図)に襖を並べて公開する。海を越えて分散していた作品が約150年ぶりに一堂に会する、またとない機会となるだろう。

秋冬花鳥図襖 桃山時代末~江戸時代初め 大英博物館蔵 © The Trustees of the British Museum
春景花鳥図襖 桃山時代末~江戸時代初め 個人蔵
琴棋書画仙人図襖 桃山時代末~江戸時代初め シアトル美術館蔵(Eugene Fuller Collection) Photo: Susan A . Cole

 このほか、鈴木春信に始まり鳥居清長、喜多川歌麿、東洲斎写楽、初代歌川豊国、葛飾北斎、歌川広重、歌川国芳といった江戸の8大浮世絵師を中心に100点以上の作品を展示し、同館の浮世絵コレクションの全貌を紹介。肉筆画では、菱川師宣、喜多川歌麿、鳥文斎栄之、河鍋暁斎、北斎らの貴重な作品も取り上げる。2000年代以降の新収蔵品も展示され、コレクションの形成から現在に至る研究の歩みをたどることができるだろう。

葛飾北斎 「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」 江戸時代 1831頃 大英博物館蔵 © The Trustees of the British Museum
歌川国芳 相馬の古内裏 江戸時代 1845~1846 大英博物館蔵 © The Trustees of the British Museum
葛飾北斎 『万物絵本大全』版下絵 江戸時代 1820〜40年代 大英博物館蔵 © The Trustees of the British Museum
喜多川歌麿 文読む遊女 江戸時代 1805~06 大英博物館蔵 © The Trustees of the British Museum