大友良英+YCAM 新作展「即興!」(山口情報芸術センター[YCAM])開幕レポート。予測不能な「即興」が繰り広げられる136日間
山口市の山口情報芸術センター[YCAM]で、音楽家・大友良英とYCAMによる大規模な新作展「即興!」が開幕した。会期は2027年3月1日まで。会場の様子をレポートする。

山口市の山口情報芸術センター[YCAM]で、音楽家・大友良英とYCAMによる大規模な新作展「即興!」が開幕した。会期は2027年3月1日まで。担当は同館キュレーターの西翼。
大友良英、18年ぶりのYCAMでの展覧会
大友良英は1959年横浜生まれ。フリージャズ、即興演奏、ノイズ音楽、映画音楽など国内外の多様な音楽シーンで活動し、つねに表現の可能性を拡張し続けてきた。近年は「アンサンブルズ」の名のもと、様々な人々との協働を軸とした展示作品や特殊形態のコンサートを手がけるほか、一般参加型プロジェクトにも注力。2005年からは「アジアン・ミーティング」を始動し、音楽を通じたアジアのネットワーク構築も試みている。
2008年にはYCAMで「大友良英/ENSEMBLES」展を開催。同展を契機として、東日本大震災以降は被災地での市民協働を多角的に模索し、2012年に芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。さらに1990年代から数多くの映画・テレビのサウンドトラックを手がけており、2013年にはNHK連続テレビ小説『あまちゃん』の音楽で日本レコード大賞作曲賞を受賞している。
本展は、大友の創作の基軸でありアンサンブルの根底にある「即興」をテーマに掲げ、大友とYCAM、そして異なるジャンルのアーティスト5名とのコラボレーションによって構築された新作展である。制作にはYCAMの研究開発チーム「YCAM InterLab」が共同参画。前回の個展から18年のときを経て、建築家・磯崎新が設計したYCAMの建築や周辺環境と呼応しながら、「二度と同じ瞬間が訪れない仕組み」のなかで多彩な音や存在が響き合う、即興的な作品世界を繰り広げている。
共同制作の原点
大友は作品制作において、他者と協働するというプロセスを重視している。その姿勢が色濃く表れた2つの作品が、館内入ってすぐのホワイエで鑑賞者を迎える。この空間には、本展に先駆けて公開されていた《without records》が展示されている。大友、美術家の青山泰知、エンジニアの伊藤隆之による本作は、1970年代前後に流通し、すでに役目を終えた使用済みのポータブル・レコードプレイヤーで構成されている。2005年に大友が初めて手がけた展示作品であり、国内外での発表を重ね、2008年のYCAMでも大規模に展開された代表作だ。


巡回する会場ごとにレコードプレイヤーの使用台数は変わり、今回は約80台で構成される。回を重ねるごとに増えるレコードプレイヤーには、多くの人々の手によってレコードなしで独自の音を発するよう様々な改造が施されている。100ボルトの電流によって音が奏でられる仕組みとなっており、プログラミングされた電源のオン/オフによって空間に響く音が変化する。一見「アナログ」な手法でありながら、二度と同じアンサンブルを生み出さない緻密な仕組みが構築されている。
その頭上には、カラフルな布をつなぎ合わせた「大風呂敷」が広がる。これは東日本大震災後、福島の現状と未来を世界へ発信することを目的に発足した「プロジェクトFUKUSHIMA!」から誕生した作品だ。現在は全国各地の協働プロジェクトとして広がっており、会場には札幌、多治見、愛知、福島、猪苗代、池袋から集められた大風呂敷とともに、山口で新たに制作された大風呂敷が展開されている。























