竹久夢二、ベルリン時代の秘蔵作《南枝早春》を初公開。約90年を経て故郷・岡山へ
竹久夢二が1933年のベルリン滞在中に描いた美人画《南枝早春》が、約90年を経て故郷・岡山へ。夢二郷土美術館の創立60周年特別展「夢二とドイツ」で初公開されている。会期は12月6日まで。

岡山出身の画家・詩人、竹久夢二(1884〜1934)。その晩年の作品《南枝早春》(1933)が同市の夢二郷土美術館に寄贈され、創立60周年特別展「夢二とドイツ」で初公開されている。会期は12月6日まで。
夢二晩年の傑作
《南枝早春》は、夢二が欧米外遊中の1933年、ドイツ・ベルリンで制作した日本画だ。日本髪に赤い着物をまとった女性が、テーブルの上の本を前に物思いにふける姿を描いたもので、画面には「千九百三十三年 南枝早春 伯林客中 夢生」と記されている。
当時の夢二は、ベルリンの美術学校「イッテン・シューレ」で日本画の講師を務めていた。本作はそこで夢二の通訳を務め、生活面でも支えた外交官・今井茂郎に贈られたもの。モデルは今井の妻・公子をイメージしたとされ、その後約90年にわたり今井家で大切に保管されてきた。このたび遺族から夢二郷土美術館へ寄贈され、夢二の故郷である岡山へ「里がえり」することとなった。
作品では、日本画の画材と西洋の画材を組み合わせながら、油彩を思わせる重厚な色彩や西洋的な画面構成が取り入れられている。修復と科学調査も行われており、夢二が晩年に試みていた新たな表現を知るうえでも重要な作品となる。
特別展「夢二とドイツ」は、夢二郷土美術館本館と夢二生家記念館・少年山荘の2会場で開催。幼少期に抱いた異国への憧れから、1931年に始まったアメリカ・ヨーロッパへの外遊、そしてベルリンでたどり着いた晩年の表現までをたどる。
本館では《南枝早春》に加え、イッテン・シューレでの日本画講義のために執筆した『日本画に就いて』、生徒への技法指導を目的として制作された墨絵、生徒たちの習作などを紹介。京都国立近代美術館所蔵の墨絵は岡山初公開、生徒の習作は展示として初公開となる。
さらに、夢二が晩年まで手元に置いていた「外遊スケッチ(正木不如丘旧蔵)」から、ヨーロッパ滞在中に制作された約10点も初公開。ナチスが台頭しつつあった1930年代のベルリンで、夢二が異文化との接触を通じて日本画をどのように見つめ直し、新たな表現を模索したのか。その知られざる晩年に光を当てる展覧会となっている。





