2026.5.20

「竹久夢二 時代を創る表現者」が東京国立近代美術館で開催。《黒船屋》が約40年ぶりに東京で公開

東京・竹橋の東京国立近代美術館で、竹久夢二(1884〜1934)の多岐にわたる仕事に迫る展覧会「竹久夢二 時代を創る表現者」が開催される。会期は10月23日~2027年1月11日。

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 東京・竹橋の東京国立近代美術館で、大正ロマンを象徴する表現者、竹久夢二(1884〜1934)の多岐にわたる仕事に迫る展覧会「竹久夢二 時代を創る表現者」が開催される 。会期は10月23日~2027年1月11日。

 竹久夢二は、明治の終わりから昭和のはじめにかけて、画家、詩人、ジャーナリスト、デザイナー、イラストレーターなど、いくつもの顔をもつ表現者として活躍した。「夢二式」と呼ばれた女性像や、レトロモダンなデザインによって、大正ロマンを象徴する人物としても知られている。さらに、日用雑貨のデザインや子供のための本や雑誌づくり、流行歌「宵待草」の作詩、関東大震災の記録など、アートとメディアを横断しながら数多くの作品を手がけた。  

 本展は、全国の夢二コレクションから、日本画、油彩画、木版画、スケッチ、多種多様なデザイン、貴重な資料など約500点を一堂に集める大規模な展覧会となる。夢二の最高傑作と名高い《黒船屋》(1919)が、約40年ぶりに東京で公開される点も見どころのひとつ。当時結核を患っていた恋人の彦乃を想って描いたとされる本作は、モダンな色彩感覚と、日本の浮世絵と西洋近代絵画のエッセンスが融合した円熟期の傑作である。

第1章 夢二式のはじまり

 本展は全5章で構成される。第1章「夢二式のはじまり」では、  明治末期から大正初期にかけて、夢二が手がけた雑誌の挿絵や詩画集、絵葉書が、若者を中心に人気を博していった軌跡をたどる。細身の体つきに大きな目が特徴的な「夢二式」の女性像は、街にそれを模した女性たちがあふれるほどの社会現象を巻き起こした。本章では、その代表格である《草に憩う女》(大正初期)や、ベストセラーとなった『夢二画集 春の巻』を紹介。また、日露戦争を受けて描かれた反戦の想いが込められたコマ絵をはじめ、労働者や貧しい人へ向けられた、夢二のまなざしにも焦点を当てる。  

第2章 夢二式のデザイン

 第2章「夢二式のデザイン」では、千代紙や便箋、手拭い、浴衣、書籍や楽譜の装幀にいたるまで、夢二が古今東西の美術を参照しながら、植物や幾何学を鮮やかな色彩で大胆に配置した斬新なデザインの仕事を紹介する。会場では、夢二が自らデザインした小物を販売する「港屋絵草紙店」にまつわる作品を展示。さらに、多忠亮が曲をつけ大ヒットした流行歌「宵待草」の、夢二デザインによる「セノオ楽譜」の表紙なども公開される。

第3章 レトロモダンの創出

 第3章「レトロモダンの創出」では、急速な近代化が進むなかで、遠のきつつある江戸時代への追憶と、まだ見ぬ異国への憧憬を矛盾なく自身の表現へと統一させた夢二の、画家としての円熟期に焦点を当てる。ベンチに身を預けて座る女性を描いた《秋のいこい》(1920)をはじめ、風景画家としての力量を示す《嵐峡の春》(1923)や《猪苗代の秋》(1923)も展示される。また、中国の歌曲をモチーフに、異国情緒とモダンな感性が凝縮された名作《九連環》も見どころのひとつで、本作は約40年ぶりに展覧会に出品される。 

第4章 生活の美の理想郷を求めて

第4章「生活の美の理想郷を求めて」 では、関東大震災を経て夢二人気が終焉へと向かうなか、生活と結びついた芸術の理想郷を追い求めた活動を紐解く。夢二は自宅兼アトリエ「少年山荘」で創作人形に取り組むほか、群馬県の榛名に「榛名山美術研究所」を構想していた。本章では、春の女神・佐保姫を描いた《榛名山賦》(1931)と、秋の女神・立田姫を描いた《立田姫》(1931)が14年ぶりに揃って展示される。また、震災直後の東京を歩き回って描いた、被災地の様子やたくましく生きる人々を捉えたスケッチなどを通して、夢二のジャーナリスト精神に迫る。  

第5章 着物と洋服のモダンガール

 第5章「着物と洋服のモダンガール」では、大正末期から昭和初期、復興を遂げた都市に登場した新しいファッションに身を包んだ「モダンガール」たちを描いた作品が紹介される。夢二は西洋風の装身具を身につけた女性や、流行のウェーブヘアで着物をモダンに着こなす女性たちを描き、モダンガールのイメージ形成に大きく貢献した。当時の流行の発信源となった雑誌『婦人グラフ』や『若草』の表紙・挿絵を紹介するほか、季節の移ろいとともにモダンな雰囲気を漂わせる女性たちを描いた押絵貼屏風の名作《四季の女》(1929)が展示される。

 なお同展は、静岡市美術館(2027年1月23日〜3月28日)、富山県美術館(4月24日〜6月13日)、大阪中之島美術館(未定)に巡回する予定だ。