2026.2.13

SOMPO美術館で「ウジェーヌ・ブーダン展─瞬間の美学、光の探求」が開催

東京・新宿のSOMPO美術館で、開館50周年を記念した「ウジェーヌ・ブーダン展─瞬間の美学、光の探求」が開催される。会期は4月11日〜6月21日。

ウジェーヌ・ブーダン 《ベルク、出航》 1890 ランス美術館 C. DEVLEESCHAUWER©
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 東京・新宿にあるSOMPO美術館で、開館50周年を記念した「ウジェーヌ・ブーダン展─瞬間の美学、光の探求」が開催される。会期は4月11日〜6月21日。

 「印象派の先駆者」と呼ばれる画家、ウジェーヌ・ブーダン(1824〜98)は、フランス・ノルマンディー地方の港町オンフルールに船乗りの子として生まれた。移住先のル・アーヴルで出会ったバルビゾン派の画家たちと交流するなかで画家を志す。空や雲、海景、牛の群れなどを瑞々しい色彩と軽快な筆致で描き出す作風で知られるブーダンは、1850年代半ばに出会った青年期のクロード・モネとともに戸外制作を行い、これがのちの印象派誕生へつながったと言われている。

 本展はブーダンの、日本では約30年ぶりとなる展覧会である。印象派誕生から150年という節目に、油彩・素描・パステル・版画を中心としたブーダンの初期から晩年までの約100点を通じてその画業を紐解くものとなる。

 本展は8つの切り口から構成されている。第1章「海景」では、ノルマンディーの港町に生まれ育ったブーダンにとって、身近な存在であった海辺の風景を描いた作品が紹介される。海景画が画商やコレクターたちの間で流行した際、ブーダンは海景画の注文制作を行っていた。アントワープ、ボルドー、ロッテルダムなど様々な場所を描いた作品が多く紹介される。

ウジェーヌ・ブーダン 《ドーヴィル》 1888 ランス美術館 C. LE GOFF©

 第2章「空」では、油彩やパステルで「空」を描いた作品が紹介される。雲の動きや絶妙な光の変化をよく観察し、空模様の一瞬の姿を捉えようとするブーダンの鋭敏な観察眼がうかがえるものとなっている。詩人のシャルル・ボードレールや、カミーユ・コロー、ギュスターヴ・クールベら同時代の画家たちは、ブーダンを「空の王者」と称賛したという。

ウジェーヌ・ブーダン 《空の習作》 1880年頃 個人蔵
ウジェーヌ・ブーダン 《干潮》 1884 サン=ロー美術館 ©Musée d’art et d’histoire de Saint-Lô, Pierre-Yves Le Meur

 第3章「風景」では、当時の絵画界の主流になっていた、自然観察に基づいた風景画に着目する。当時ル・アーヴルで画材店を経営していたブーダンは、農民や荷車が行き交う田舎の道を画面の要とした構図や、蛇行する川、小さな港といった水辺の景色を対岸の建物や橋とともに描く構図をバルビゾン派から学んでいた。

ウジェーヌ・ブーダン 《トゥークの古い港》 1890 ブーローニュ=シュル=メール市立美術館 ©coll. Musée Boulogne-sur-Mer Ville de Boulogne-sur-Mer

 第4章「建築」では、生涯に渡り描き続けた、石造あるいは木造の建築を描いた作品が紹介される。ブルターニュでは教会の門や十字架を、オランダやヴェネチアではその土地の特徴的な建築を描いた。ブーダンは、建築という堅固な対象を描くことへの困難を自覚しつつも、晩年までそれを描き続けた。

ウジェーヌ・ブーダン 《廃墟のラッセイ城》 1893 ブーローニュ=シュル=メール市立美術館 ©coll. Musée Boulogne-sur-Mer Ville de Boulogne-sur-Mer

 第5章「動物」では、かつてブーダンが教えを受けたコンスタン・トロワイヨンによる動物画を、画商デュラン=リュエルの要請を受けて、自分流に描き直した作品が紹介される。約10年にわたってブーダンは牧草地の牛の群れを数多く描いたが、その表現は師とは異なり、抽象表現に近いものとなっている。

ウジェーヌ・ブーダン 《水飲み場の牛の群れ》 1880 ランス美術館 C. DEVLEESCHAUWER©

 第6章「人物」では、ブーダンが関心を持った「自然のなかの人物像」を描いた作品が展覧される。夏の海水浴客や浜辺の漁師、川辺で洗濯をする女性などが主題となっている。

ウジェーヌ・ブーダン 《ドゥアルヌネ湾(フィニステール)のサンタンヌ=ラ=パリュのパルドン祭》 1858 アンドレ・マルロー近代美術館 Le Havre, Musée d’art moderne André Malraux ©MuMa Le Havre / Florian Kleinefenn

 「素描」セクションでは、ブーダンが対象の本質を理解するための手段とし、また制作の着想源を養う活力となっていた素描に着目する。印象派世代の画家たちは、あるときは緻密、あるときは即興的なブーダンの素描を重視し、自分たちの先駆者として認識していたという。

ウジェーヌ・ブーダン 《トルーヴィルの海岸の貴婦人(トルーヴィル
の海岸のメッテルニヒ夫人)》 1863 個人蔵

 「版画」セクションでは、版画のための素描をもとに制作されたリトグラフやエッチングが紹介される。19世紀後半当時は版画芸術が花開いた時期でもあったが、ブーダンは自ら版画を制作することはほとんどなかったため、数少ない貴重な展示となりそうだ。

 なお本展を記念して、会期中に担当学芸員によるギャラリートークも開催される予定だ。