2025.12.8

東京オペラシティ アートギャラリーでダン・グレアム大規模展が2026年に開催。多面的実践を再考する

東京オペラシティ アートギャラリーにて、ダン・グレアムの包括的な回顧展が2026年10月17日〜12月20日の会期で開催される。寺田コレクションの秋景展、若手作家・田中藍衣の新作展示も同時期に展開される。

ダン・グレアム Clinic for a Suburban Site 1978 Architectural model, mixed media 34.5 x 106.3 x 71.9 cm Edition 2 of 3 © Dan Graham. Courtesy of Dan Graham Estate, Marian Goodman Gallery, and Taka Ishii Gallery / Photo: Kenji Takahashi
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 東京オペラシティ アートギャラリーにて、企画展「ダン・グレアム Dan Graham」が2026年10月17日〜12月20日の会期で開催される。

 ダン・グレアム(1942〜2022)は、ポストモダン以降のアートに多大な影響を与えたアーティストである。ギャラリー運営、雑誌広告の形式をとった作品、写真やヴィデオ、建築的立体、さらには批評・エッセイ執筆まで、活動領域は多岐にわたり、その多面的(Multifaceted)な実践は近年あらためて注目を集めている。とりわけ若い世代のアーティストから強い関心を寄せられている点も特徴だ。

ダン・グレアム House, Staten Island, N.Y. 1976(上)/Housing Development, Bayonne, N.J. 1975(下) C-print
© Dan Graham. Courtesy of Dan Graham Estate and Taka Ishii Gallery / Photo: Kenji Takahashi

 本展は、こうしたグレアムの活動を包括的に紹介するもので、前半では初期から晩年までの代表作を通し、その思考の変遷をたどる。後半では、晩年に本人がキュレーションを手がけ、ポルトガルで開催された建築展「Not Post-modernism」を“遺作”として再構成。展覧会の内部に別の展覧会を組み込む入れ子構造により、グレアム特有の独創的な思考を可視化する。会場構成は、生前より交流の深かったアトリエ・ワンが担当する。

ダン・グレアム Model C 2022 Architectural model; two-way mirror, frame, glass, wood 100 x 175 x 91 cm Edition 2 of 3
© Dan Graham. Courtesy of Dan Graham Estate, Marian Goodman Gallery, and Taka Ishii Gallery / Photo: Kenji Takahashi

 同時期には、寺田コレクションによる収蔵品展「秋の風景 収蔵品展088」、若手作家を紹介する「project N 104 田中藍衣」も開催される。

 寺田小太郎の収集による寺田コレクションには、日本画を中心とした作品が多く、武蔵野の自然を愛し、自ら造園も手がけた寺田の自然観や、「日本的なるもの」を問い続けた思想が反映されている。本展では会期にあわせ、秋の情景を想起させる作品を選りすぐって紹介する。

松本祐子 月の雫 1995 撮影=斉藤新

 「project N 104」では、日本画の技法を基盤に抽象表現を追求する田中藍衣に焦点を当てる。粒子の粗い岩絵具を用いることで、混色しても個々の色が自立して存在し続ける素材特性を活かし、制約のなかから生まれる必然的な表現を探る姿勢が特徴だ。静謐でミニマルな画面の背後には、社会のなかで自身の存在を問い続ける作家のまなざしが宿っている。

田中藍衣 Your Movement 2025 木製パネルに岩絵具 90.0×140.0cm