2025.8.22

今週末に見たい展覧会ベスト11。「笹本晃」展から「神戸六甲ミーツ・アート2025」まで

今週閉幕する/開幕した展覧会のなかから、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。なお、最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

笹本晃 Point Reflection(ヴィデオ) 2023よりスチル © Aki Sasamoto. Courtesy of Take Ninagawa, Tokyo
前へ
次へ

もうすぐ閉幕

クレス・オルデンバーグ「いろいろ」(Pace東京

Claes Oldenburg Geometric Mouse, Scale B(Red) 1971 SCULPTURE
acrylic lacquer on aluminum with brass 95.3 cm x 109.2 cm x 86.4 cm, overall installation dimensions variable

 東京・麻布台にあるPace 東京で、アメリカ人アーティストのクレス・オルデンバーグによる個展「いろいろ」が開催されている。会期は8月23日まで。

 本展では、1960年代から2000年代半ばにかけて、オルデンバーグが制作したシリーズ作品のなかから彫刻と版画が紹介される。この回顧展は、オルデンバーグの創作における多様性に焦点をあて、その風変わりな世界観に浸りながら、日本文化との共鳴や接点を見出す機会を創出するものだ。

 今回の展示は、PaceのCEOであるマーク・グリムシャーと、マーチャ・オルデンバーグによってキュレーションされ、Paceの創立65周年記念の一環として企画されている。1996年以来の大規模なオルデンバーグの回顧展となる本展を、ぜひお見逃しなく。

 会期:2025年7月17日~8月23日
会場:Pace 東京
住所:東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズガーデンプラザA 1・2階 Pace 東京
電話:03-6681-9400
開館時間:11:00~20:00(日は18:00〜20:00、それ以外は19:00〜20:00でアポイントメント制)
休館日:月
料金:無料

 「古代エジプト美術館展」(山形美術館

ミイラマスク プトレマイオス朝時代

 山形美術館で、山形新聞・山形放送8大事業「古代エジプト美術館展」が開催されている。会期は8月23日まで。

 「古代エジプト美術館 渋谷」は、日本唯一の古代エジプト専門美術館として、2009年東京・渋谷に開館した。先王朝時代からローマ支配時代までを網羅した2000点以上にのぼるコレクションによって、古代エジプト文化の全貌をたどることができる。

 本展は、「古代エジプト美術館 渋谷」コレクションの巡回展となっており、世界的に貴重な遺物であるミイラやミイラマスク、人型木棺、神殿の石柱、ツタンカーメンの指輪をはじめ、当時の生活様式がわかる化粧用容器や装飾品を含む約200点が展示されている。また過去100年間学術調査がされてこなかったメイドゥム(マイドゥーム)・ピラミッドの最新調査(2022)の様子もあわせて紹介され、古代エジプト人が築いた神々への信仰や国家、暮らし、死生観を通して、3000年にわたる巨大文明の歴史に迫る機会となっている。

会期:2025年7月11日~8月23日
会場:山形美術館
住所:山形県山形市大手町1-63 
電話:023-622-3090
開館時間:10:00~17:00 ※入館は閉館30分前まで
休館日:7月14日、7月22日、7月28日、8月12日
料金:一般 1600円 / 高校・大学生 1300円 / 小学・中学生 700円

「建物公開2025 時を紡ぐ館」(東京都庭園美術館

 東京・目黒の東京都庭園美術館で、「建物公開2025 時を紡ぐ館」が開催されている。会期は8月24日まで。

 本展は毎年恒例となっている、1933年竣工の旧朝香宮邸(現・東京都庭園美術館本館)の建築の魅力に迫る建物公開展。今回は、同館が経てきた時代と歴史に焦点を当てた展覧会となる。各時代を彩るゆかりの作品や写真・映像資料を通して、建物の記憶をひも解く展示構成。建物自体の魅力を楽しめるように、家具や調度品を用いた再現展示が行われ、3階ウインターガーデンが特別公開される。夏の建物公開の開催は約6年ぶりとなっている。

 新館では、美術館として開館して以来、国内外問わず収集している現代作家の作品を展示。さらに、触れることができる展示コーナーを設け、来館者とのインタラクティブな体験機会が設けられている。

 会期:2025年6月7日〜8月24日
会場:東京都庭園美術館(本館+新館)
住所:東京都港区白金台5-21-9
開館時間:10:00〜18:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月
料金:一般 1000円 / 大学生 800円 / 高校生 500円

「まだまだざわつく日本美術」(サントリー美術館

 東京・六本木のサントリー美術館で「まだまだざわつく日本美術」が開催されている。会期は8月24日まで。レポートはこちら

 作品を見た時に感じる言葉にならない「心のざわめき」は、作品をよく見るための重要なきっかけとなる。本展は、2021年に同館で開催された展覧会「ざわつく日本美術」の第2弾。「心がざわつく」ような展示方法や作品を通じて、目や頭、心をほぐし、「作品を見たい」という気持ちを高めてもらいたいという思いのもと企画された。

 会場は「ぎゅうぎゅうする」「おりおりする」「らぶらぶする」「ぱたぱたする」「ちくちくする」「しゅうしゅうする」の6つのテーマにわけられる。まだ知られていないサントリー美術館のコレクションを通して、新しい日本美術との出会いを提案する試みとなっている。

会期:2025年7月2日~8月24日
会場:サントリー美術館
住所:東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階
電話:03-3479-8600
開館時間:10:00~18:00(金、8月9日、8月10日、8月23日は〜20:00)※入館は閉館30分前まで
休館日:火
料金:一般 1700円 / 大学生 1200円 / 高校生 1000円 / 中学生以下無料

「喜如嘉の芭蕉布展」(国立工芸館

展示風景より

 石川・金沢の国立工芸館で「移転開館5周年記念 重要無形文化財指定50周年記念 喜如嘉の芭蕉布展」が開催されている。会期は8月24日まで。レポートはこちら

 「沖縄の風土が生んだ最も沖縄らしい織物」といわれる芭蕉布(ばしょうふ)は、現在、沖縄本島の大宜味村喜如嘉(おおぎみそんきじょか)でその製法が伝承されるのみとなっている。

 本展では、重要無形文化財の指定から50周年を記念して、芭蕉布の技術復興に尽力した人間国宝、故・平良敏子とその工房の作品を中心に、芭蕉布の歴史的名品もあわせて展示し、その魅力を紹介する。

会期:2025年7月11日~8月24日
会場:国立工芸館
住所:石川県金沢市出羽町3-2
電話:03-6869-7881
開館時間:9:30〜17:30
休館日:月
観覧料:一般 900円 / 大学生 600円 / 高校生 400円

「ポップ・アート 時代を変えた4人」(⼭梨県⽴美術館

第5章「アンディ・ウォーホル」の展示風景より

 ⼭梨・甲府にある⼭梨県⽴美術館で、1960年代のアメリカなどを中⼼に発展した芸術動向である「ポップ・アート」を取り上げる特別展「ポップ・アート 時代を変えた4⼈」が開催されている。会期は 8月24日まで。レポートはこちら

 「ポップ・アート」とは、⼤量⽣産された商品、広告やコミック、著名⼈のポートレートなど、誰もが知っているものをモチーフとする特徴がある。現代⽣活や⼤衆⽂化をテーマとした作品は⾊鮮やかに、時に社会⾵刺的に表現され、20世紀以降の芸術に大きく影響を与えた芸術動向だ。

 本展の展⽰作品は、スペイン出⾝のコレクターであるホセルイス・ルペレスが所蔵する版画やポスター約120点で構成され、すべて⽇本初公開となる。展示は全12章構成となっており、なかでもロイ・リキテンスタインジャスパー・ジョーンズ、ロバート・ラウシェンバーグ、アンディ・ウォーホルといったアメリカのポップ・アートを代表する4名のアーティストを中心とした展示となっている。

会期:2025年7⽉12⽇~8⽉24⽇
会場:⼭梨県⽴美術館 特別展⽰室
住所:⼭梨県甲府市貢川 1-4-27
電話番号:055-228-3322 
開館時間:9:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
料金:一般 1000円 / 大学生 500円 / 65歳以上・高校生以下無料

今週開幕

中村萌「connect connect」(ポーラ ミュージアム アネックス

中村萌 Summit’s Prayer 2025

 東京・銀座にあるポーラ ミュージアム アネックスで、中村萌の4年ぶりとなる個展「connect connect」が開催される。会期は8月19日~9月28日。

 中村は1988年東京生まれ。2012年に女子美術大学大学院美術研究科美術専攻を修了した。中村はおもに楠の丸太をもちいて、心にひそむ姿かたちや、遠い記憶のかけら、植物や自然などをモチーフにした作品を制作している。

 本展では、新作を含む木彫と平面作品の約10点を展示。コロナ禍を経て変容した人と人との関係性やコミュニティのあり方を背景に、「作品」「心」「記憶」「未来」などをテーマに据え、自身の内なる「つながり」を見つめ直す機会を提示する機会となる。

会期:2025年8月19日~9月28日
会場:ポーラ ミュージアム アネックス
住所:東京都中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
電話番号:050-5541-8600
開館時間:11:00~19:00(入場は閉館の30分前まで)
休館日:8月27日
料金:無料

「絵から読む物語」(静岡県立美術館

橋本雅邦 三井寺 1894 静岡県立美術館蔵

 静岡県立美術館で「絵から読む物語」が開催される。会期は8月19日~9月28日。

 物語の情景を描く絵画は、挿絵としてテキストを視覚化し、読者の理解を助けるものとして生まれた。その後挿絵は物語絵としてテキストから独立し、絵画表現のみで登場人物の感情を表すことで、物語の結末への想像を掻き立てるための様々な演出が施された。本展は、日本の近世から近代に至る物語絵を展観し、心情や物語の展開を想像しながら鑑賞する絵画の魅力に迫るものとなる。

会期:2025年8月19日~9月28日
会場:静岡県立美術館
住所:静岡県静岡市駿河区谷田53-2
電話番号:054-263-5755
開館時間:10:00~17:30 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(祝日の場合開館・翌日休館)
料金:一般 300円 / 70歳以上・大学生以下 無料

「笹本晃 ラボラトリー」(東京都現代美術館

笹本晃 Point Reflection(ヴィデオ) 2023よりスチル © Aki Sasamoto. Courtesy of Take Ninagawa, Tokyo

 東京都現代美術館では、アーティスト・笹本晃の個展「笹本晃 ラボラトリー」が開催される。会期は8月23日〜11月24日。

 笹本晃はニューヨークを拠点に、彫刻や装置による空間構成と即興的なパフォーマンスを組み合わせた独自の手法で国際的に注目されるアーティスト。本展は、笹本が2000年代半ばより展開してきた約20年にわたる活動を回顧し、その変遷と現在地をたどる初の本格的個展となる。

 日常的な所作や個人的な記憶を語りに取り込みながら、観察・記録・構築というプロセスを通じて空間と時間の在り方を問い続けてきた笹本。彫刻的な造形物は、パフォーマンスの舞台装置であると同時に、思いがけない展開を引き出す「スコア」として機能し、会期中にはその空間で複数回のパフォーマンスも行われる予定だ。

 展覧会タイトル「ラボラトリー」は、実験や観察の場という意味を持ち、私たちがこの世界で起こる現象に目を凝らすための視点としても機能する。初期から最新作までを網羅し、動植物や気象現象といった自然界への関心も交えながら、笹本作品の変化と深化を動的に体感できる機会となるだろう。

会期:2025年8月23日〜11月24日
会場:東京都現代美術館 企画展示室 3F
住所:東京都江東区三好4-1-1
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00~18:00(8・9月の毎金〜21:00)※入室は閉館の30分前まで
休館日:月(9月15日、10月13日、11月3日、11月24日は開館)、9月16日、10月14日、11月4日
料金:一般 1500円 / 大学生・専門学校生・65歳以上 1000円 / 中高生 600円 / 小学生以下 無料

「開館30周年記念展 日常のコレオ」(東京都現代美術館)

 東京都現代美術館では、開館30周年を記念して国際展「日常のコレオ」が開催される。会期は8月23日~11月24日。

 本展は、「日常」に潜む制度や規範、そしてそこに抗い逸脱する創造的な身振りに注目し、アジアを中心に15を超える国と地域で活動する約30組のアーティストによる絵画、映像、写真、インスタレーション、パフォーマンスやワークショップなど様々な表現方法を用いた作品が紹介される。

 展覧会タイトルにある「コレオ(コレオグラフィー)」は、制度によって規定される振る舞いと、それに対する批評的応答の両義を含む。本展では、家庭、都市空間、美術館など多様な場所での人々の営みに焦点をあて、抑圧の力学やそこに生まれる抵抗、ユーモアを可視化する。

 東京でのリサーチを経て制作された新作も多数登場。同館のある深川・木場エリアを題材にしたパフォーマンスや、移民コミュニティと連携した参加型作品など、地域との関わりも重視された作品が展開される。

会期:2025年8月23日~11月24日
会場:東京都現代美術館
住所:東京都江東区三好4-1-1
電話番号:03-5245-4111
開館時間:10:00~18:00(8月、9月の金は〜21:00) ※展示室入場は閉館の30分前まで
休館日:月、9月16日、10月14日、11月4日(9月15日、10月13日、11月3日、11月24日は開館)
料金:一般 2100円 / 大学生・専門学校生・65 歳以上 1100円 / 中高生 500円 / 小学生以下 無料

「神戸六甲ミーツ・アート2025」

 神戸・六甲山上を舞台にした現代アートの芸術祭「神戸六甲ミーツ・アート2025」が開催される。会期は8月23日~11月30日。

 本芸術祭は2010年にスタートし、今年で16回目の開催を迎える。これまでに延べ580組以上のアーティストが参加し、山の自然と共鳴する多彩な作品を発表してきた。今年のテーマは「環境への視座と思考」。かつて自然破壊に直面しながらも、人々の努力によって豊かな森を取り戻した六甲山の歴史を踏まえ、自然・文化・社会といった広義の環境について、アートを通じて考える機会を提示する。

 会場となるのは、「ROKKO森の音ミュージアム」や「六甲高山植物園」など六甲山上の各エリア。登山道沿いに作品が点在するトレイルエリアでは、自然のなかでのアート鑑賞を楽しみながら、地域の風土や文化に触れることができる。

 出展作家は国内外から60組以上を予定。そのうち約15組は公募によって選出された新進作家となる。また、奈良美智の作品《Peace Head》が常設され、子供向けワークショップなどの教育プログラムも実施される予定だ。

会期:2025年8月23日~11月30日
会場:ミュージアムエリア(ROKKO森の音ミュージアム・六甲高山植物園・新池)、六甲ケーブル(六甲ケーブル下駅・山上駅)、天覧台、兵庫県立六甲山ビジターセンター(記念碑台)、六甲山サイレンスリゾート(旧六甲山ホテル)、トレイルエリア、みよし観音エリア、六甲ガーデンテラスエリア、風の教会エリア 
開催時間:10:00~17:00 ※営業日・時間は会場により一部異なる 
料金:大人 4000円 / 4歳~小学生 1700円 / 3歳以下無料