2025.6.19

土門拳写真美術館が「東松照明と土門拳―語りつぐ写真―」を開催。新ロゴマークも発表

山形・酒田市の土門拳写真美術館で、東松照明と土門拳の二人展「東松照明と土門拳―語りつぐ写真―」が開催される。会期は7月11日〜10月26日。

東松照明 大島瑛子 映画「飼育」より 1961
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 山形・酒田市の土門拳写真美術館で戦後80年記念特別展「東松照明と土門拳―語りつぐ写真―」が開催される。会期は7月11日〜10月26日。

 土門拳写真美術館は酒田市出身の写真家・土門拳(1909〜1990)の作品約13万5000点を収蔵する日本初の写真専門美術館で、今年4月に土門拳記念館より呼称を変更した。1983年に開館し、土門の代表作「古寺巡礼」をはじめ、「ヒロシマ」「風貌」「筑豊のこどもたち」など昭和のドキュメント、日本の美と心を追求した名作を展示替し、テーマごとに紹介している。なお、呼称変更にともない、公募による新ロゴマークも制定された。

土門拳写真美術館ロゴマーク

 「東松照明と土門拳―語りつぐ写真―」は東松照明(1930〜2012)と土門拳の二人展となる。両者はともに20世紀の日本写真界を牽引した写真家だ。戦前に報道写真家として出発した土門、戦後に活動を始めた東松では、やや世代が異なるものの、少なからぬ接点を持っていた。

土門拳 原爆ドーム 1957

 1950年代初頭、土門は写真雑誌のコンテスト審査員を務める中で独自のリアリズム写真運動を展開し、大きなムーブメントを巻き起こした。当時大学生だった東松もこのコンテストにしばしば入賞し、土門から高い評価を得ていた。

東松照明 チューインガムとチョコレート 横須賀 1959
土門拳 路傍 銀座 1954

 その後の東松は、土門の師でもある写真家・編集者、名取洋之助が立ち上げた『岩波写真文庫』のスタッフを経て独立し、敗戦後の日本の社会状況を題材にした「占領」シリーズなどを発表。そして1961年には土門らとの共作による写真集『Hiroshima-Nagasaki Document 1961』で長崎の撮影を担当し、土門の広島の写真とともに、原爆に関する強烈なメッセージを提示した。

土門拳 入院生活 『ヒロシマ』より 1957
東松照明 熱線とその後の火災で溶解変形した瓶 長崎 1961

 晩年の土門は日本中の寺院を撮り歩く『古寺巡礼』シリーズを展開したが、東松はその後、琉球弧やアフガニスタンへも撮影のフィールドを広げ、沖縄や長崎への移住も経験するなど、自身の活動を拡張していった。

東松照明 波照間島 沖縄 1971

 本展は、戦争や原爆をはじめとする日本の社会状況を見つめながら、写真界に大きな足跡を残した両者の作品を展覧する初の二人展となる。戦後80年という節目に、20世紀の写真がたどってきた道程を振り返るとともに、写真を通していまなお世界中で止まない戦火について考え、語りつぐ機会となることを目指す。

土門拳 母のない姉妹 『筑豊のこどもたち』より 1959