2025.6.27

今週末に見たい展覧会ベスト12。「彼女たちのアボリジナル・アート」から「佐藤雅彦展」まで

今週閉幕する/開幕した展覧会のなかから、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。なお、最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

展示風景より、イワニ・スケース《えぐられた大地》(2017) 石橋財団アーティゾン美術館 ©︎ Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY
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もうすぐ閉幕

「MOT Plus サウンドウォーク・コレクティヴ&パティ・スミス|コレスポンデンス」(東京都現代美術館

 東京・清澄白河の東京都現代美術館で、アーティスト・詩人であるパティ・スミスと、現代音響芸術集団のサウンドウォーク・コレクティヴによる最新プロジェクト「コレスポンデンス」の展覧会が、6月29日に閉幕する。

 パティ・スミスは1946年生まれ。70年代半ばより、ニューヨークのパンク・ロックシーンで活動。ライブ・ツアーをはじめとする音楽活動のほか、絵画、写真、執筆など幅広い分野で現在にいたるまで活躍している。いっぽうサウンドウォーク・コレクティヴは、アーティストのステファン・クラスニアンスキーとプロデューサーのシモーヌ・メルリによるサウンド・プロジェクトで、過去にも様々なアーティストやミュージシャンとの共同作業を通じて、場所や状況に応じたサウンドプロジェクトに取り組んできた。

 本展は、そんなパティ・スミスとサウンドウォーク・コレクティヴの最新プロジェクト「コレスポンデンス」の日本初公開となっている。

会期:2025年4月26日〜6月29日
会場:東京都現代美術館 企画展示室 B2F
住所:東京都江東区三好4-1-1
開館時間:10:00〜18:00 ※入館は閉館の30分前まで
料金:一般 1800円 / 小学生以下 無料

「スペクトラム スペクトラム」(銀座メゾンエルメス フォーラム

Installation view of the exhibition “Spektrum,” 2024 「スペクトラム」 展示風景(2024年)
© Isabelle Arthuis / Courtesy of Fondation d’entreprise Hermès

 東京・銀座にある銀座メゾンエルメス フォーラムで、エマニュエル・カステラン、題府基之、川端健太郎、マリー・ローランサン、ヨハネス・ナ―ゲル、ヴァルター・スウェネン、津田道子による展覧会「スペクトラム スペクトラム」が6月29日に閉幕する。

 本展は、ブリュッセルにあるラ・ヴェリエール(La Verrière)にて開催された「Spektrum」(2024年5月16日~7月27日)をもとに、日本における新たなナラティブの構造をかさねあわせた展覧会。

 ベルリンを拠点とするアーティスト・エマニュエル・カステランの拡張的個展として展開したブリュッセルでの展覧会に対し、本展では展覧会をひとつの小説のようにとらえ、真実と虚の「あいだ」にとどまることのできる居場所として、密やかな室内のナラティブを生み出そうと試みている。

会期:2025年3月20日~6月29日
会場:銀座メゾンエルメス フォーラム
住所:東京都中央区銀座5-4-1
開館時間:11:00~19:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:水
料金:無料

「中屋敷智生 × 光島貴之〈みるものたち〉」(BUG

 東京・丸の内にあるBUGで、アートワーカー(企画者)向けプログラム「CRAWL」の選出企画「中屋敷智生 × 光島貴之〈みるものたち〉」が6月29日に閉幕する。

 本展では、全盲の光島貴之、色弱の中屋敷智生という独自の仕方で世界をとらえるふたりの美術作家を取り上げ、「見る」ということについて改めて意識を向けるきっかけをつくる。さらに来場者は展示されている作品に直接手で触れることができ、様々な感覚をひらいて鑑賞する体験ができる。「見る」こととの新しい出会いをもたらし、人々の共通だと思われていた認識の更新を促す展示となっている。

会期:2025年6月4日~6月29日 
会場:BUG
住所:東京都千代田区丸の内1-9-2 グラントウキョウサウスタワー1階
開館時間:11:00~19:00
休館日:火
料金:無料

今週開幕

「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」(アーティゾン美術館

展示風景より、イワニ・スケース《えぐられた大地》(2017) 石橋財団アーティゾン美術館 ©︎ Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY

 東京・京橋のアーティゾン美術館で、「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」が開催した。会期は9月21日まで。レポートはこちら

 オーストラリア先住民によるアボリジナル・アートは、地域独自の文脈で生まれた作品への再考が進む近年の、国際的な現代美術の動向とも呼応し、いま改めて注目を集めている。昨年開催された第60回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展では、アボリジナル作家の個展を展示したオーストラリア館が国別参加部門の金獅子賞を受賞した。

 日本において、複数の女性アボリジナル作家に焦点を当てる展覧会の開催は初。所蔵作家4名を含む7名と1組による計52点の出展作品を通じて、アボリジナル・アートに脈々と流れる伝統文化の息づかいを感じ取る機会になるだろう。

会期:2025年6月24日〜9月21日
会場:アーティゾン美術館
住所:東京都中央区京橋1-7-2
開館時間:10:00〜18:00(金〜20:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日: 月(ただし、7月21日、8月11日、9月15日は開館)、7月22日、8月12日、9月16日
料金:[ウェブ予約]1800円 /[窓口販売]2000円 / 学生無料(要ウェブ予約)

「あ!っと北斎~みて、みつけて、みえてくる浮世絵~」(すみだ北斎美術館

展示風景より

 東京・墨田にあるすみだ北斎美術館で、「あ!っと北斎 ~みて、みつけて、みえてくる浮世絵~」が開幕した。会期は8月31日まで。レポートはこちら

 葛飾北斎は、江戸時代中後期に活躍した浮世絵師で、代表作として「冨嶽三十六景」シリーズなどが挙げられる。19歳で浮世絵師としてデビューし、90歳で亡くなるまで生涯絵師として活躍した。

 本展では、「at Hokusai」=「北斎の作品から得られる発見」を通して、作品の魅力を紐解く展示構成となっている。わかりやすい解説による紹介が多く、北斎や浮世絵に興味を持つ入口となるだろう。

会期:2025年6月24日~8月31日 
会場:すみだ北斎美術館 3階企画展示室
住所:東京都墨田区亀沢2丁目7番2号
開館時間:9:30~17:30 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月、7月22日、8月12日(ただし、7月21日、8月11日は開館)
料金:一般 1000円 / 高校生・大学生・65歳以上 700円 / 中学生・障がい者手帳をお持ちの方 300円 / 小学生以下無料

「Dressing Up: Pushpamala N」(シャネル・ネクサス・ホール

プシュパマラ・N「Return of the Phantom Lady」(2012) ©PushpamalaN

 東京・銀座のシャネル・ネクサス・ホールで、インド出身のアーティスト・プシュパマラ・Nの個展「Dressing Up: Pushpamala N」が開幕した。会期は8月17日まで。

 プシュパマラは、インドのバンガロール(現ベンガルール)を拠点に活動するアーティスト。当初、彫刻家として始まった創作活動を写真や映画へと移行させ、1990年代半ばから自らがさまざまな役柄に扮して示唆に富んだ物語をつくり上げるフォト・パフォーマンスやステージド・フォトの創作を始めた。その作品は、女性像の構築や国家の枠組みを探求するもので、美術史、アーカイヴ資料、大衆文化から引き出された象徴的なイメージや原型を再現している。

 本展では、プシュパマラがフォト・パフォーマンスという表現手法を探求し始めた最初の作品シリーズである「Phantom Lady or Kismet」(1996-98)に加え、「Return of the Phantom Lady」(2012)、「The Navarasa Suite」の3シリーズが展示されている。

会期:2025年6月27日〜8月17日
会場:シャネル・ネクサス・ホール
住所:東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング 4F
開館時間:11:00〜19:00 ※入場は閉場の30分前まで
休館日:会期中無休 
料金:無料

「2025イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」(板橋区立美術館

 東京・板橋にある板橋区立美術館で「2025イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」が開幕した。会期は8月11日まで。

 「ボローニャ国際絵本原画展(Illustrators Exhibition)」は、児童書のためのイラストレーション・コンクールの入選作品を紹介する展覧会として、ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアに伴って毎年開催されている。児童書のトレンドや今後の動向を展観することができ、新人イラストレーターたちの登竜門となっている。

 59回目となる本展では、89の国と地域から過去最多となる4374名の応募があり、日本人の6名を含む29の国と地域の77名(76組)が入選。本展ではその全入選作品が一堂に展示されている。なお会期中には、絵本に関する講演会や連続講座、ワークショップなどのイベントも実施される予定だ。

会期:2025年6月27日~8月11日
会場:板橋区立美術館
住所:東京都板橋区赤塚5-34-27
開館時間:9:30~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月、7月22日(ただし、7月21日、8月11日は開館)
料金:一般900円 / 大学生600円 / 高校生以下無料

「高畑勲展─日本のアニメーションを作った男。」(麻布台ヒルズギャラリー

 東京・麻布台にある麻布台ヒルズギャラリーで、「高畑勲展─日本のアニメーションを作った男。」が開幕した。会期は9月15日まで。レポートはこちら

 2025年は高畑勲(1935〜2018)の生誕90年であり、高畑が大きな影響を受けた太平洋戦争終戦から80年が経過する年であることから、本展の今夏の開催が決定した。

 本展の目玉のひとつとなるのが、新たに発見された『火垂るの墓』重巡洋艦摩耶のシーンのレイアウト。これは、「エヴァンゲリオン」シリーズで知られる監督・プロデューサーの庵野秀明がかつて『火垂るの墓』に原画スタッフとして参加していた際に描いたものである。本展では、それをもとにして描かれたハーモニーセル(絵画のようなタッチで描きこまれたセルのこと)とともに初公開されている。

会期:2025年6月27日〜9月15日
会場:麻布台ヒルズギャラリー
住所:東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA MB階
開館時間:10:00〜20:00(6月27日〜7月18日の火・日〜17:00) ※入館は閉館の30分前まで
料金:一般 2000円 / 専門・大学・高校生 1700円 / 4歳〜中学生 1400円

横浜美術館リニューアルオープン記念展 佐藤雅彦展 新しい ×(作り方+分かり方)」(横浜美術館

 横浜美術館のリニューアルオープンを記念する展覧会として、佐藤雅彦(1954〜)の展覧会「佐藤雅彦展 新しい ×(作り方+分かり方)」が開幕する。会期は6月28日〜11月3日。

 佐藤は、サントリー「モルツ」、湖池屋「スコーン」「ポリンキー」「ドンタコス」、NEC「バザールでござーる」などのヒットCMを生み出したほか、慶應義塾大学佐藤雅彦研究室の活動として、NHK教育テレビの幼児教育番組『ピタゴラスイッチ』を監修した人物である。

 本展は、佐藤の創作活動の軌跡をたどる世界初の大規模個展。佐藤が表現者/教育者として世に送り出してきたコンテンツを一堂に紹介するとともに、佐藤が長年にわたって実践してきた「作り方を作る」といった制作物の根底となる視点を紐解くものとなる。

会期:2025年6月28日〜11月3日
会場:横浜美術館
住所:横浜市西区みなとみらい3-4-1
開館時間:10:00〜18:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:木
料金:一般 2000円 / 大学生 1600円 / 高校・中学生 1000円 / 小学生以下無料

「非常の常」(国立国際美術館

 大阪の国立国際美術館で、「非常の常」が開幕する。会期は6月28日~10月5日。

 理不尽な攻撃や突然のクーデター、地震、洪水、山火事などの自然災害、未知のウイルスの発生、人工知能を含むテクノロジーの飛躍的発達、それによる政治的混乱や人間関係の分断、日常の喪失が起こる現代。こうした「非常の常」の時代を、どのように生きることができるのかについて、8 名の作家の表現を通じて模索する展示となる。

 本展では、世界的にも注目の集まる、袁廣鳴(ユェン・グァンミン)、キム・アヨン、リー・キットなどの作家の話題作や新作が展示される。

会期:2025年6月28日~10月5日
会場:国立国際美術館 地下3階展示室
住所:大阪市北区中之島4-2-55
開館時間:10:00~17:00(金土~20:00) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月、7月22日、8月12日、9月16日(ただし7月21日、8月11日、9月15日は開館)
料金:一般 1800円 / 高大生 1500円 / 小中生 500円

「伊藤慶二 祈・これから」(岐阜県現代陶芸美術館

 岐阜・多治見にある岐阜県現代陶芸美術館で「伊藤慶二 祈・これから」が開幕する。会期は6月28日~9月28日。

 伊藤慶二(1935〜)は、岐阜県土岐市出身。武蔵野美術学校(現・武蔵野美術大学)で油画を学んだ後、美濃へ戻り岐阜県陶磁器試験場に勤め、陶磁器デザイナーの日根野作三(1907〜1984)との出会いなどを通じ、本格的に陶芸の道に進んだ。クラフトの器から始まった伊藤のやきものの制作は、陶による造形、オブジェへと拡がりをみせ、多様なメディウムを取り入れながら展開を続けている。

 本展は、今年90歳を迎える伊藤慶二の「HIROSHIMA」「沈黙」「尺度」「いのり」などの代表的なシリーズ、そして新作となるインスタレーションを通じて、伊藤の創作の現在地を紹介する展示となる。

会期:2025年6月28日~9月28日
会場:岐阜県現代陶芸美術館 ギャラリーⅠ・Ⅱ
住所:岐阜県多治見市東町4-2-5 セラミックパークMINO内
開館時間:10:00〜18:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月、7月22日、8月12日、9月16日(ただし、7月21日、8月11日、9月15日は開館)
料金:一般1000円 / 大学生800円 / 高校生以下・障がい者手帳をお持ちの方は無料

落合陽一個展 総集編「ヌルのテトラレンマ 記号に帰納する人間の物語」(日下部民藝館)

 岐阜・高山にある国指定重要文化財の日下部民藝館で、日下部民藝館令和7年度特別展 落合陽一個展 総集編「ヌルのテトラレンマ 記号に帰納する人間の物語」が開幕する。会期は6月28日~9月15日。

 日下部民藝館は、昭和41年より重要文化財日下部家住宅を、建物の公開と日下部家所蔵の文物を展示、また建物を活かした多様な文化事業を行う施設として誕生した。そんな日下部民藝館と、ヒューマンコンピュータインタラクション研究の第一人者であり、メディアアーティストの落合陽一とのコラボレーションの5回目となる本展は、これまでの5年間にわたる日下部民藝館で行ってきた落合の展覧会を総括するものとなり、新作をあわせて全100点以上の作品で構成される。

 また本展は、日下部民藝館以外にも、吉島家住宅と、古民家を改装したギャラリー&カフェ「おんど」の3会場に加え、大阪・関西万博の「null²」を含めた4つの空間で構成される。

会期:2025年6月28日~9月15日
会場:日下部民藝館 、吉島家住宅、おんどギャラリー
住所:岐阜県高山市大新町1丁目、下二之町
開館時間:10:00~16:00
休館日:会期中無休(ただしおんどギャラリーは水)
料金:3000円(日下部民藝館・吉島家住宅・おんど共通入館可能)