「佐藤雅彦展 新しい ×(作り方+分かり方)」(横浜美術館)開幕レポート。「作り方を作る」を続けた40年とその現在地を見る
3年以上におよぶ大規模改修工事を経て、全面開館を迎えた横浜美術館。そのリニューアルオープン記念展として佐藤雅彦の展覧会「佐藤雅彦展 新しい ×(作り方+分かり方)」がスタートした。会期は11月3日まで。

横浜美術館のリニューアルオープンを記念する展覧会として、佐藤雅彦(1954〜)の展覧会「佐藤雅彦展 新しい ×(作り方+分かり方)」がスタートした。担当学芸員は松永真太郎(横浜美術館 学芸グループ長、主席学芸員)。
「佐藤雅彦ほど、作品の知名度に比べて名前が知られていない表現者はいないのではないか?」そう松永は語る。佐藤といえば、サントリー「モルツ」、湖池屋「スコーン」「ポリンキー」「ドンタコス」、NEC「バザールでござーる」などのヒットCMを生み出したほか、慶應義塾大学 佐藤雅彦研究室の活動として、NHK教育テレビの幼児教育番組『ピタゴラスイッチ』を監修した人物である。誰もが一度は目にしたことがありそうな有名作品を数多く世に送り出してきた佐藤だが、「誰がつくったのか」と聞かれて、その名をすぐに答えられる人はそう多くないだろう。
本展は、そんな佐藤の40年にもわたる取り組みやキャリアの広がり方を紹介し、すべての根底に流れる思考を展覧会というかたちで紐解いていこうというところから企画がスタートした。その後、やりとりを重ねるうちに、次第に展覧会が佐藤によるメディアコミュニケーションのひとつとしてディレクションされていったのだという。
何事においても「どうすれば、伝わるのか」を考え続けてきた佐藤。それはもちろん、世界初・巡回なしの大回顧展となった本展も例外ではなく、そのこだわりようから、設営は記者会見当日の朝9時頃まで続けられたという。心なしか、蔵屋館長のにこやかな表情に比べ、佐藤と松永の顔には高揚と疲労の色が浮かんでいるように見えた。
