「下呂 Art Discovery 2026」開幕レポート。「日本最深部」で展開される新たな芸術祭の見どころとは?
岐阜県下呂市の市内各所を舞台に、芸術祭「下呂 Art Discovery 2026」が開幕した。会期は11月8日まで。

岐阜県下呂市の市内各所を舞台に、芸術祭「下呂 Art Discovery 2026」が開幕した。会期は11月8日まで。
日本三名泉のひとつ、下呂温泉で知られる岐阜県下呂市。人口約2万8000人、総面積の約9割を森林が占める豊かな自然に恵まれた地域だ。いっぽうで、観光地としての知名度とは裏腹に、過疎高齢化という深刻な課題を抱えており、地域全体の活性化が急務となっている。
こうした状況のなか、2024年秋には本芸術祭の前身となる清流の国文化探訪「南飛騨 Art Discovery」が開催された。21組のアーティストによる現代美術やパフォーミングアーツ、伝統産業や食を紹介するマルシェ「楽市楽座」などを展開し成功を収めた同イベントを受け、開催エリアを市内の複数箇所へ拡大・展開したのが、今回の「下呂 Art Discovery 2026」である。
総合ディレクターを務めるのは、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」や「瀬戸内国際芸術祭」を手がけてきた北川フラム。北川は岐阜という土地を、戦国時代の歴史において重要な舞台であった歴史的背景や、日本列島の中心に位置する地理的条件から「日本最深部」と捉える。その「日本最深部」を舞台とする本芸術祭には、14の国と地域から59組のアーティストが参加している。
会場は大きく3つのエリアで構成される。飛騨川沿いの温泉街や合掌造りの家々を移設した「合掌村」を擁する「下呂エリア」、自然豊かな南飛騨健康増進センターと街並みが広がる萩原商店街からなる「萩原エリア」、そして築70年の旧湯屋小学校を再利用した御嶽山の麓の「小坂エリア」だ。
下呂エリア
まずは温泉街や合掌村がある「下呂エリア」。ここでは2組の作家が作品を展開している。温泉街の地下2階建ての建物を舞台にするのは、弓指寛治の新作《Small Town》(2026)だ。

観光地としての下呂だけではなく、この土地で生活を営む人々に焦点を当てた本作。弓指は実際に滞在し、スナック「ラウンジ魔女」で働くなどして住民への取材を重ねた。屋内空間から川沿いの屋外へと連なる展示には、猟師やスナックのママらの生の声やモチーフが、手書き文字や立体作品として刻まれ、この土地のリアルな営みを浮き彫りにする。なお、開幕前日の取材時点では施工の途上であったが、会期中には下呂の魚をモチーフにしたぬいぐるみが展示空間の各所に配されるほか、テキストの英訳版も用意される予定だ。

合掌村の駐車場に巨大な「架空の発掘現場」を出現させたのは、台湾出身のアーティスト、トゥ・ウェイチェン(涂維政)だ。飛騨の伝説に登場する豪傑・両面宿儺(りょうめんすくな)の骨が発掘された──という想像力をもとに構築した本作は、幅8メートル、長さ12メートルにおよぶ大作である。精巧につくられた現場の解説パネルにあるQRコードを読み込むと、架空の報道ニュースへ遷移する仕かけも遊び心に溢れている。

























