ダンス×テクノロジーの交差点に注目を。クラウド・ゲイト・ダンスシアター(雲門舞集)16年ぶりの来日公演で真鍋大度とコラボ
横浜・京都・北九州の3都市で、台湾を代表するコンテンポラリー・ダンスカンパニー「クラウド・ゲイト・ダンスシアター(雲門舞集)」の16年ぶりの来日公演が行われる。

クラウド・ゲイト・ダンスシアターは、2020年にチェン・ゾンロン(鄭󠄀宗龍)が芸術監督に就任し、革新的な舞台を次々に発表してきた。本作『WAVES』は、アーティスト、コンポーザー、プログラマーの真鍋大度とのコラボレーションによって生まれた作品だ。

クラウド・ゲイト・ダンスシアターは、中国語圏初のコンテンポラリー・ダンスカンパニーであり、世界38ヶ国以上で活動するなど、グローバルな展開を見せている。本作は創設50周年を迎えた2023年に、“目に見えない身体を想像する試み”として、メディアアーティスト・真鍋大度とのコラボレーションにより生まれた作品。鄭󠄀宗龍(チェン・ゾンロン)のディレクションのもと、真鍋が音楽と映像制作を手がけ、ダンサーが発する見えない動的エネルギーの「波」の可視化に挑戦。ダンサーたちとともに人間の運動認知の限界を探り、私たちが世界をどのようにとらえるかについて、新たな視点を投げかけるものだ。

真鍋は本作に取り組んだきっかけについて、こう語っている。
2016 年のリオ・オリンピック閉会式で、プロジェクション映像や拡張現実(AR)の演出を担当した「8分間のプレゼンテーション」を、チェン氏がテレビで見て興味を持ってくれたことが最初のきっかけです。コロナ禍の2020年にオンラインで話をする機会があって、本作のオファーをいただき、2021年に東京の私のスタジオで初めて彼と会いました。チェン氏から「テクノロジーを活用して新しいダンスの発想ができないか?」という相談を受け、これまでのクラウド・ゲイトの活動歴や台湾・高雄の劇場で上演された作品を観て、彼らとなら新しいことができるのではないかと思いました。

また、ダンサーの身体の動きと映像・音楽によって、「WAVES(波)」を表現するため試みたアプローチについては、次のように話す。
それぞれのシーンで“WAVES”(波)というテーマを抽象化し、あえて言語化しない創作のやり方でディレクションが行われました。人間を超えるほどの見えない大きな力で動きを伝達していく“WAVES”(波)を表現するためには、個性の強いダンサーたちの群舞を俯瞰することが重要になります。映像と音楽はその柱となるもので、創作の初期段階ですでに多くの音楽制作が必要でした。映像と音楽の素材をたくさんつくってチェン氏に提示し、彼はそれらを直観的に選んで、好きなように料理するという感じです。
今回のプロジェクトで、私がもっとも深く関わったのが音楽制作でした。ダンス作品における音楽は、身体にもっとも強く影響を与える要素のひとつです。とくにクラウド・ゲイトのダンサーたちにとって、音とダンスは完全に同期するもので、目に見えない心情や動きのあわいにある磁場や感性というような、ダンスの動きだけでは語りきれないものを補助する役割として音楽を捉えていました。音楽はインスピレーションの源であり、音色のニュアンスが変わると動きのイメージにも影響するということを強く主張されていたのが印象的です。

創作にあたり、延べ2週間ほど台湾に滞在し、初期段階には多くのワークショップを実施した真鍋。本作の見どころについては次のように自信をのぞかせる。
長期間のワークショップで、舞台装置や音響、映像といったテクニカル面のシミュレーションに取り組み、じっくり時間をかけて作品の方向性を決められたことはとても良かったと思います。
チェン氏は振付を極限まで突き詰めていく人なので、映像や音楽はあとから修正や変更のきかない、大きな流れのなかにあるものでした。大勢のダンサーの力強い群舞とそれに伴う音楽の解釈との融合には興味深いポイントが多くあります。多彩な表現を楽しみにしていただければと思います。
2024年のヴェネチア・ビエンナーレ(ダンス部門)でも高い評価を得た本作。待望の日本上陸を見逃す手はない。




