2026.10.2

「ART FAIR ASIA FUKUOKA 2026」開幕レポート。地域のギャラリーの個性を引き出す独自色の魅力

「ART FAIR ASIA FUKUOKA 2026」が福岡国際センターで開幕した。会期は10月2日〜4日。会場の様子をレポートする。

文・撮影:安原真広(編集部)

「ART FAIR ASIA FUKUOKA 2026」の会場
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 「ART FAIR ASIA FUKUOKA 2026」が、福岡国際センターで開幕した。会期は10月2日〜4日の3日間。

「ART FAIR ASIA FUKUOKA 2026」の会場となっている福岡国際センターの外観

 今回のフェアは、例年よりも各出展者のブースサイズを大きめに確保した空間設計となり、国内ギャラリーのほか台湾・韓国・フィリピンといった海外ギャラリーを含む約100ギャラリーが集結した。

「Feature」セクションでは宮本華子のパフォーマンスも

 本フェアの看板といえるのが、アジアや福岡に関わりのあるアーティストを紹介する「Feature」のセクションだ。ここでは、カンボジア出身のアーティスト、クゥワイ・サムナンと、2025年度のVOCA賞を受賞したパリを拠点とするアーティスト・宮本華子の展示を行なっている。

「Feature」セクションのクゥワイ・サムナンの作品展示

 東京の小山登美夫ギャラリーが取り扱うサムナンは、植民地時代から続く権力構造や負の歴史の記憶といった深刻な課題に、ユーモアや詩情を交えながら向き合うアーティストだ。会場では映像、立体、造形作品が展示されており、笑いを誘いながらも、現代の複雑な社会の様相も示していた。

「Feature」セクションの宮本華子の作品。会場内に持ち込まれた介護用の浴槽に作家本人が寝そべり、その上に実際の入浴の様子がプロジェクターで投影されている

 福岡のEUREKAが取り扱う宮本華子は、アートフェアらしからぬパーフォマンスを会場で展開し、注目を集めていた。ブースに家具や小物とともに、介護用の浴槽を持ち込んだ宮本は、自身もそのなかに入って擬似的に入浴するパフォーマンスを行なった。祖母が介助を受けながら入浴する様子を「気持ちよさそうだった」と感じたという宮本。ネガティブなイメージを持たれがちな介護だが、誰かの介助を生きるために必要とする状況のなかにも、楽しみや喜びが存在することを身体を通して伝えていた。

地域のギャラリーも独自性をもったプレゼンテーションを実施

 会場で目立っていたのは、gallery UG Fukuokaの野原邦彦を中心に紹介するブース。天井から吊り下げられた巨大なバルーンの作品とともに、野原の彫刻がいくつも並び、インパクトのある場となっていた。

gallery UG Fukuokaのブース、野原邦彦のバルーンや彫刻作品
川田画廊のブース、大沢昌助の作品展示

 神戸の川田画廊は、戦後の二科会の再建に尽力し、国内の国公立館にも多くの作品が収蔵されている大沢昌助を個展形式で紹介。具象から抽象、油彩から水彩まで幅広い作品を見せることで、大沢の再評価の機運を高めていた。

GALLERY SOAPのブース、左壁面が鎌田大介「Japanese Houses」シリーズ、右壁面が「D FRAME」シリーズ

 北九州で長年にわたり様々なアーティストを紹介してきたアーティストラン・スペースのGALLERY SOAPは、建築史や産業史をリサーチして作品を生み出す鎌田大介を紹介。日本国外に建てられた日本家屋を撮影した「Japanese Houses」シリーズのほか、1本の木材を折って四角形をつくり破壊と創造を同時に成立させた新シリーズ「D FRAME」を展示した。

ハベル沖縄アートギャラリーのブース、能勢孝二郎の展示

 沖縄県南城市の私設美術館、南条美術館にあるハベル沖縄アートギャラリーは、長年にわたりコンクリートブロックを素材とした彫刻を制作してきた能勢孝二郎の作品をインスタレーション形式で出展。ブロックの大きさをそのまま生かした様々な形状の手を表現した。

ギャラリー門馬のブース、クスミエリカの展示

 札幌のギャラリー門馬は福岡を拠点とする浦川大志と、札幌を拠点とする葛西由香、クスミエリカ、小林知世、久野志乃、山本雄基を紹介。とくにクスミのコラージュ作品は、アクリルを重ねたレイヤー状の作品にバックライトを当てることで、平面のコラージュの構造を取り出すように展示されていて印象的だった。

一番星画廊のブース、ヴァン・ド・ヴェルド 道子の展示

 東京の一番星画廊はベルギーを拠点に光と影を絵画、版画、インスタレーションと様々なメディアで表現するヴァン・ド・ヴェルド 道子を紹介。多様なメディアをブースでみせることで、各作品に共通するコンセプトの普遍性を伝えていた。

梨元芸術のブース、廖震平の展示

 海外ギャラリーでは台湾のギャラリーが目立った。台北を拠点とする国璽芸術(GSA Gallery)や敦煌藝術中心(敦煌アートセンター)のほか、台中からは梨元芸術が日本のアートフェアに初参加。台中を拠点に活動する若手から中堅のアーティストを積極的に紹介してきた本ギャラリーは、廖震平や邱掇といった30〜40代の作家を紹介し、勢いづく台中のアートシーンの熱量を伝えていた。

ARToVILLAのブース、手前はOKI KENICHのナップザック

百貨店の美術商も積極的に出展

 福岡に店舗を持つ百貨店を積極的に紹介しているのもAFAFの特徴だ。大丸松坂屋百貨店(なお、前述のgallery UG Fukuokaは大丸福岡天神店との連名で参加)、エイチ・ツー・オー リテイリング(阪神阪急百貨店)、Gallery CONTAINER(岩田屋本店)が参加していた。自社メディア「ARToVILLA」名義で初出店した大丸松坂屋は、愛甲次郎、一条ひかる、OKI KENICHI、kurryの4人のアーティストを紹介していた。とくに現在は東京を拠点としているが、地元・福岡を拠点に活動していたOKIは、ライブペインティングや抽選で提供されるナップザックのプレゼントなどの企画を実施していた。

岩田屋本店のブース、安藤しづかの展示

 地元・福岡の天神にある岩田屋本店は、2021年に百貨店内にオープンさせた現代美術専門のギャラリー「Gallery CONTAINER」としてフェアに出店。日本画の技法と毛糸などの素材を用いて様々な人物像を安藤しづかを個展形式で紹介した。また、エイチ・ツー・オー リテイリングははタガ締め技法とアーチ構造を取り入れた中川周士のひのきによる作品を出展していた。

一般財団法人九州美術振興財団のブース、齋藤秀三郎の展示

 また、九州地方にルーツを持つ作家による作品の、保護・保全・普及活動を行う一般財団法人九州美術振興財団も「COLLABORATION」に出展。九州派のメンバーで、その後、独立した「グループ西日本」でも活躍したことで知られる齋藤秀三郎を紹介していた。

15億円のシャガールやパフォーマンスも

 特集ブース「Masters」では、出展者の協力のもと、物故作家を中心に、国内外で高い評価を確立した作家や、時代を超えて受け継がれる貴重な作品を厳選して紹介。8月に逝去した草間彌生の作品を「Masters - A Tribute to Yayoi Kusama」と題して出展するほか、みぞえ画廊が15億円の値をつけたマルク・シャガール《Orphée》(1969)が目玉となっていた。

「Masters」のブースより、マルク・シャガール《Orphée》(1969)
コインを並べるパフォーマンスを行う松田幹也

 「Moment」はパフォーマンスを中心に展示するブースだ。1988年にニューヨークのウォール街で行った、1万個の貨幣を正方形に並べたことでも知られる松田幹也。東京のGALLERY KOGUREのサポートのもと、黒子の衣装をまとって同様のパフォーマンスを実施。また、大阪のYUKIKO NAKAJIMAのサポートで、佐藤鉱子がライブペインティングを行った。

会場外のエントランスに出展されていた、高嶋英男《からっぽに満たされる》(2026)
会場外に出展されていた、古西穂波《Form in flux》(2021〜2022、2026)

 さらに会場の内外で「Infinity」と名づけられた、大型作品の展示も行われている。東京のサテライツ・アート・ラボが高嶋英男の陶製の大型作品や、同じく東京のMEDEL GALLERY SHUによる古西穂波のゆらぎを取り入れた木彫などを見ることができる。

「AFAF AWARD powered by E.SUN BANK」の大賞を受賞した高橘喜代史の展示

 加えて、次世代を担うアーティストの発掘と支援を目的とした公募展「AFAF AWARD powered by E.SUN BANK」も開催。台湾の玉山銀行(E.SUN BANK)の協賛のもと、会場内の特設ブースにて入選作品の展示が行われている。

 会場全体を通して、各地域を拠点とする作家を取り上げる独自性のあるプレゼンテーションが目立ったAFAF。それが本フェアならではの未知の作品との出会いへの期待を生んでおり、魅力のひとつとなっていると感じた。