2026.1.11

スイス、アルプスの山間に新たな文化拠点。アートホテル兼レストラン「チェーザ・マルケッタ」が開業

メガギャラリー「ハウザー&ワース」の創設者が手がけるアートファームによる新たなアートホテル兼レストラン「チェーザ・マルケッタ」が昨年冬、スイス東部エンガディン地方に開業した。

チェーザ・マルケッタの外観 All photos by Dave Watts. Courtesy of Chesa Marchetta
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 スイス東部エンガディン地方のシルス・マリアに、ホテル兼レストラン「チェーザ・マルケッタ(Chesa Marchetta)」が2025年冬に開業した。

 本施設は、メガギャラリー「ハウザー&ワース」を率いるイワン・ワースとマヌエラ・ワースが2014年に設立したホスピタリティ事業「アートファーム(Artfarm)」による2軒目のホテルで、2019年にスコットランド・ブレーマーで開業した「ザ・ファイフ・アームズ(The Fife Arms)」に続くプロジェクトとなる。

 シルス・マリアは、フリードリヒ・ニーチェをはじめ、マルセル・プルースト、アルベルト・ジャコメッティ、トーマス・マン、ヘルマン・ヘッセら、数多くの思想家や芸術家を魅了してきた土地として知られる。澄んだ空気と独特の光に包まれた景観は、エンガディン地方の文化的中心地として、いまなお特別な存在感を放っている。

チェーザ・マルケッタ レストラン&バーの外観

 チェーザ・マルケッタはもともと、1947年からゴドリー家が営んできた名高いレストラン兼ペンションで、ゲルハルト・リヒタージャン=ミシェル・バスキアなどのアーティストが滞在したことでも知られる。過去4年間にわたる改修を経て、現在は13室の客室、46席のレストラン、さらに貸切可能な3ベッドルームの独立棟を備える施設へと生まれ変わった。

The Tree of Life Deluxe Room

 館内には、エンガディンに滞在した芸術家や思想家の物語に着想を得た、歴史的作品から現代美術まで幅広いコレクションが配されている。レストラン空間には、ジャコメッティによる1950年代のアトリエを描いた作品をはじめ、フィリップ・ガストンの絵画、オランダ絵画の系譜を伝えるアドリアーン・ファン・オスターデの作品などが展示され、食と美術が自然に交差する構成となっている。

The Pearl Mussel Bedroom

 ラウンジバーでは、ルイーズ・ブルジョワの彫刻作品や、ニコラス・パーティの鮮やかな絵画が空間を彩るほか、ジェイソン・ローデスによるシャンデリア作品が強烈なアクセントに。また館内の回廊や共用部には、スボード・グプタ、ダニエル・スペーリ、ヴァレンティン・キャロンらの作品が点在し、滞在そのものが展示体験へと拡張されている点も大きな特徴だ。

レストランの様子
レストランの様子

 屋外には、ウィリアム・ケントリッジやポール・マッカーシーによる彫刻作品が設置され、雄大な自然と現代美術との対話を生み出す。

 建築設計は、アートファームおよびハウザー&ワースの数々の空間を手がけてきた建築家ルイス・ラプラス(Laplace)が担当した。レストランでは、かつてのオーナーであったマリアとクリスティーナ・ゴドリーの哲学を継承し、イタリアとスイスの食文化を融合させた季節料理を提供する。宿泊客に限らず、一般客の利用も可能だ。

 芸術、建築、食、そして土地の記憶が重なり合うチェーザ・マルケッタは、アルプスの山間における新たな文化的デスティネーションとして注目を集めそうだ。

チェーザ・マルケッタの外観