2025.10.6

東博が伝 土佐光孚筆《源氏物語図屏風》修復のためのクラウドファンディングを開始。目標は3000万円

東京国立博物館が、取り壊し間近の民家で発見された伝 土佐光孚筆《源氏物語図屏風》 (江戸時代、19世紀)を修理するためのクラウドファンディングをスタートさせた。

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 東京国立博物館が、取り壊し間近の民家で発見された伝 土佐光孚筆《源氏物語図屏風》(江戸時代、19世紀)を修理するために、クラウドファンディングサービス「READYFOR」で3000万円を目標に12月19日まで支援を募る。

 2024年11月、東京都内の古民家で発見された一双の屏風《源氏物語図屏風》 が、家屋の取り壊しに伴い廃棄される危機に直面。東京国立博物館の研究員が現地で調査した結果、この屏風が貴重な文化財であることが判明。所有者の厚意により同館が引き取ることが決まった。

 本作は題名のとおり、紫式部による『源氏物語』を題材にした作品で室町時代から続く土佐派の伝統を感じさせる荘厳さを持つ。屏風の一隻の大きさは、縦約160センチメートル、横約370メートル。一対の屏風として並べると、全長7メートルにも及ぶ。『源氏物語』作中の場面が、全18場面描かれており、金色の雲をかいくぐるように描かれ、貴族文化の華やかな世界を覗き見ているような演出が感じられる。

伝 土佐光孚筆 源氏物語図屏風 江戸時代、19世紀

 しかしながらこの屏風は、各パネルをつなぐ蝶番が壊れ、絵具の剥落や猫による引っ掻き傷、虫食いが見られるなど、極めて危険な状態となっているという。このままでは作品の価値を維持することが困難であるため、大規模な修復が不可欠と判断された。

伝 土佐光孚筆 源氏物語図屏風 江戸時代、19世紀

 文化財の修理や維持・管理の費用の多くは国の運営費交付金によって賄われているが費用には限りがあり、国宝や重要文化財を含む多くの文化財が修理を待っている状況にある。《源氏物語図屏風》 のように未指定の文化財の修理費用を捻出することは容易ではない。こうした背景から、同館は貴重な文化財を未来につなぐという使命を果たすため、クラウドファンディングを通じて広く支援を募ることを決定した。 

 なお、本プロジェクトはたんに作品を修理するのみならず、文化財の修理過程を公開することで、その重要性を広く認知させることも目的としている。文化財を未来に伝えるための裏舞台に触れるための、文化継承への理解を深める機会を提供する。

  リターンとしては、《源氏物語図屏風》 の修理見学参加権や、文化財修理に関する講演会とレセプションへの招待、屏風修理に使用する鋲を使ったピンバッジといったものが用意されている。