2025.7.25

東京藝術大学はいまなぜ「ゲーム・インタラクティブアート専攻」を新設するのか? 芸術としての「ゲーム」追求へ

東京藝術大学が、大学院映像研究科修士課程の新たな専攻として「ゲーム・インタラクティブアート専攻」を2026年に開設する。藝大がいま「ゲーム」に注目する理由とは?

ゲーム・インタラクティブアート専攻就任予定教員と学長の日比野克彦。前列左から三宅陽一郎、小山順一朗、日比野克彦、八谷和彦、牧奈歩美、桐山孝司。後列は左から岡本美津子(アニメーション専攻教授)、薄⽻涼彌(助教)、⾦井啓太(助教)、亀川徹(音楽学部音楽環境創造科教授 兼 演奏芸術センター長)
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 東京藝術大学が、大学院映像研究科修士課程の新たな専攻として「ゲーム・インタラクティブアート専攻」を2026年に開設する。

 同大学では、美術や音楽、映像、プログラミングなどのデジタル技術など、様々な技術を組み合わせて構成されるゲームを「現代における新しい総合芸術」としてとらえ、2019年より映像研究科メディア映像専攻・アニメーション専攻内にゲームコースを新設。ゲームに関わる教育研究が展開されてきた。

 今回修士課程としてゲーム・インタラクティブアート専攻が新設されることとなった背景には、遊びとしてのゲームのみならず、教育や医療、地域振興の現場など幅広く活用されるようになってきたことを受けたものでもあるという。従来のゲームコースでの実績を発展させ、芸術分野のアプローチによってゲームの多様性や可能性をさらに拡大させるべく、様々な角度から教育研究を展開させることが目的となっている。

 同専攻の新設について、学長・日比野克彦は挨拶のなかで次のように述べた。「インタラクティブという行為は、絵画や彫刻を鑑賞するように、アートの素地としてあったものだ。ゲームの爆発的な普及を鑑みながらも、藝大がこの専攻をつくることで、アートの領域からゲームの在り方を広げていきたい」。さらに、自動車産業の時価総額をエンタメ産業が抜いたという昨今の状況も踏まえ、「今後日本が対外的に発信していくのに重要なのは芸術文化の姿である」と産業界とのつながりをも意識していく旨も語った。

選考開設発表会の様子

 ゲーム・インタラクティブアート専攻に就任予定の教員と担当は、小山順一朗(企画・ゲームデザイン領域担当)、三宅陽一郎(ゲームテクノロジー領域担当)、桐山孝司(社会応用領域担当)、八谷和彦、牧奈歩美、薄⽻涼彌(助教)、⾦井啓太(助教)。また、兼担・協力予定の教員には、岡本美津子(東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻教授)、亀川徹(同大学音楽学部音楽環境創造科教授 兼 演奏芸術センター長)。講師陣には、待場勝利(ゲーム表現技術)、中川大地(ゲーム文化研究)、小野憲史(ゲーム文化研究)、北村一樹(インタラクティブミュージック/ゲームサウンド実装演習)、増野宏之(インタラクティブミュージック/ゲームサウンド実装演習)、Jini(現代ゲーム概論)らが予定されている。

 また、求める入学者像には芸術分野のみならず、情報・工学分野の学生も想定されていることにも注目したい。教授・講師陣の顔ぶれやこのアドミッションポリシーからも、既存の枠にとらわれない新たな「ゲーム」の在り方を追求することが同専攻の大きな特色だと言えるだろう。

 なお、同専攻の入学試験は2026年1〜2月頃を予定。今年8月上旬に募集要項の公開、さらに8月31日には同専攻への入学希望者を対象とした入試説明会も実施されるため、関心のある方はぜひこちらへの参加をおすすめしたい。

選考開設発表会の様子