2026.7.4

企画展「こどもとおとなの自由研究 もようわくわく²」(国立工芸館)開幕レポート。ポケモン×江戸小紋の作品が再びお披露目へ

石川県金沢市の国立工芸館で、企画展「こどもとおとなの自由研究 もようわくわく²」が開幕した。会期は9月23日まで。会場の様子をレポートする。

文・撮影=三澤麦(編集部)

高野松山《群蝶木地蒔絵手箱》(1963)。大小の蝶が描かれることで、蒔絵手箱により立体的な空間性をもたらしている
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 石川県金沢市の国立工芸館で、企画展「こどもとおとなの自由研究 もようわくわく²」が開幕した。会期は9月23日まで。担当は同館教育普及室長の今井陽子。

 同館では「自由研究」をコンセプトに、子供と大人がともに学び、楽しめる企画展を定期的に開催してきた。今回の展覧会は「“もよう”はなぜ存在するのか」という問いをテーマに据え、工芸ビギナーから愛好家まで満喫できる、近・現代工芸の名品約140点を紹介するものとなる。

 開幕前の報道内覧会で、4月1日付で同館の新館長に就任した山﨑秀保は「生活様式に合わせてその様相を変化させてきた工芸。今回の展覧会では、日常を彩る『もよう』の魅力に注目する。夏休みにあわせて自由研究としても活用いただければ」とコメント。また今井は、「工芸作品における『もよう』は、色や形、質感が一体となって生み出されている。日々をより美しく、楽しくしてくれるこれらについて考える機会にしたい」と企画の意図を述べた。

「いき・もの ~もようが紡ぐ日々のかがやき」の展示風景。章タイトルには、作品を見たときに湧き起こるであろう感情が名づけられている

モチーフやパターンへのまなざし

 会場は3つの展示室で構成され、それぞれ異なるアプローチから「もよう」の魅力を紐解いていく。

 まず最初の展示室 「いき・もの ~もようが紡ぐ日々のかがやき」では、「もよう」のもととなったモチーフに注目する。動植物などの自然から着想を得て、そのモチーフらしさを引き出しながら図案化された姿を作品のなかで発見できるほか、そこに込められた人々の願いやストーリーを読み解くこともできる。

 作家はなぜこのモチーフのこの姿を選び、どのように作品へと落とし込んだのか。また、どのような願いを込めたのか。そのイメージの源泉を見つめてほしい。

喜多川平朗《紅地鳥蝶唐花文錦》(1960)
初代宮川香山《鳩桜花図高浮彫花瓶》(1871-82)

ポケモン×江戸小紋が再登場

 続く 「いっこ・いっぱい ~構成力でもようの魅力を拡張する」では、工芸作品に施された「もよう」の「数」に注目する。「もよう」と言っても、一定のパターンが繰り返されるものだけが「もよう」なわけではない。あえて1つだけ主役として描かれたものと、パターンとして無数に繰り返されるもの。作家はこの意匠をどのような意図で施したのか。配置や構成の工夫を想像しながら鑑賞する楽しさをここでは提案している。

「いっこ・いっぱい ~構成力でもようの魅力を拡張する」の展示風景。手前は木村雨山《縮緬地友禅あおい文振袖》
左から石黒宗麿《白地黒絵魚文扁壺》(1940-41)、北原千鹿《鯰文水滴》

 また本章では、2023年に同館で開催された「ポケモン×工芸展ー美とわざの大発見ー」の出品作「ポケモン×江戸小紋」が、巡回中に登場した新作とともに再び披露されているのも見逃せない。緻密な文様を染め上げる作家の手腕とポケモンのパターンが織りなす、現代ならではの江戸小紋のあり方を示している。俯瞰して見るときと近づいて見るときで印象が変わるのも、江戸小紋の特徴だ。

「ポケモン×江戸小紋」シリーズ。左から小宮康義《江戸小紋 着尺「ゲンガー・ゴースト」》(2022)、《江戸小紋 着尺「ニョロゾ」》(2024)
小宮康義《江戸小紋 着尺「ゲンガー・ゴースト」》(部分、2022)

「わからなさ」を楽しむ

 3つ目の展示室「きっちり・どっきり ~もようを生み出すわざに震える」では、素材と「わざ」が織りなす、独特の存在感を放つ工芸作品を紹介している。

 本章のポイントは、「わからなさ」ではないだろうか。模様を浮かび上がらせるための素材や手法の見当がつかないものも、作品のなかには見受けられる。ここでは、素材や製法を熟知した作家の成せる「わざ」が鑑賞者に投げかける新鮮な問いを楽しんでほしい。

「きっちり・どっきり ~もようを生み出すわざに震える」の展示風景より、松井康成《練上嘯裂文茜手大壺》(1981)
左から池田晃将《Error403》(2020)、《電光無量無辺大棗》(2022)
上原美智子《カスリ布》(1997)

 展示室のあいだにある小スペースでは、染色家・芹沢銈介(1895〜1984)の作品の数々を、「もよう」という切り口で特集している。2015年に同館に寄贈された芹沢作品167件430点のなかから、その遊び心満点の「もようわくわく」を選りすぐって展示。花鳥風月、人間、文字、日用品などありとあらゆるものをモチーフとしており、戦後に彫られた型紙は1万点以上にも及ぶという。

芹沢銈介による色鮮やかな作品群と型紙が展示されている
芹沢が手がけたうちわとマッチ箱

 また、「自由研究」をテーマとした子供向けの鑑賞グッズやワークショップ企画も用意されている。出展作品の写真とともにその魅力や鑑賞のヒントを伝えるワークブック(中学生以下を対象に無料配布)や、視点を絞ってじっくり観察するためのツール「ジロメガネ」。子供たちが得た気づきや成果をイラストとキーワードで表現し、ほかの来場者と共有できる「ずかんカード」の展示といったユニークな取り組みも実施される。

 さらに、Adobe Foundationの支援のもと企画された「もようわくわくワークショップ」「珠洲をおもう やきものワークショップ」も会期中に開催。参加は無料となるため、足を運ぶ際はぜひ公式ウェブサイトをチェックしてみてほしい。

作品の魅力や鑑賞のヒントを伝えるワークブック
視点を絞って展示作品をじっくり観察するための「ジロメガネ」