2026.3.5

東京湾岸で開催の国際美術展「TOKYO ATLAS」、草間彌生の日本初公開作品も

東京都と東京国際文化芸術祭実行委員会は国際美術展「TOKYO ATLAS」を10月10日から12月20日まで開催する。会場は台場、公園、青海、天王洲といった東京湾岸エリア。

草間彌⽣ 宇宙へ⾏って⾒た愛の花束 2021 「Yayoi Kusama: A Retrospective」(グロピウス・バウ、ベルリン、ドイツ、2021)での展⽰⾵景
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 この秋、東京都と東京国際文化芸術祭実行委員会が、国際美術展「TOKYO ATLAS」を初開催する。会期は10月10日〜12月20日。会場は台場、公園、青海、天王洲といった東京湾岸エリアに広がり、美術館という枠組みを超え、都市空間そのものを舞台とする大規模な国際展となる。

 本展のタイトル「ATLAS」は、世界を支える神話上の巨人アトラスと「地図帳」を意味する語に由来する。街なかに点在する作品を巡る行為そのものを、新たな地図を描く体験へと転換させる構想。アートを都市の日常へ挿入することで、既存の風景やインフラ、歴史の記憶に新たな視座を与えることを目指す。

 アーティスティック・ディレクターは、草間彌生美術館館長であり数々の国際展を手がけてきた建畠晢と、直島新美術館館長の三木あき子が務める。

歴史と海とインフラが交錯する台場・青海エリア

 主会場のひとつである台場公園は、幕末に砲台として築かれた人工島である。黒船来航という歴史的緊張の記憶を内包しながら、現在は都立公園として開かれているこの場所に、草間彌生《ナルシスの庭》(1966-)や、趙要(ジャオ・ヤオ)の《精緻紅RGB(I&II)》(2022-2025)、石毛健太による音響インスタレーションなどが展開。人工砂浜を擁するお台場海浜公園とあわせ、自然、歴史、都市景観が交錯する環境そのものが展示空間となる。

趙要(ジャオ・ヤオ) Something in the Air 2019 © Zhao Yao, Courtesy Ota Fine Arts

 青海南ふ頭公園では、コンテナ埠頭とクルーズターミナルを望む国際物流の現場を背景に、アブラハム・ポワンシュヴァルが巨大なボトル内で生活するパフォーマンス《La Bouteille》(2015-)を実施予定。また、東京藝術大学小沢剛研究室を中心とするプロジェクト「ヤギの目」は、ヤギの飼育を通じて持続可能な創作やコミュニティ形成を探る。

 さらに、現在は使用休止中の全長197.5メートルにおよぶ地下駐車場が特別公開され、ケイティ・パターソンやイペェ・ヌルによる展示が構想されている。

ケイティ・パターソン Totality 2016 Photo © Julie Lovens, 2016
Courtesy Kunsthaus Pasquart, Biel

 青海エリアのテレコムセンタービルでは、草間彌生によるバルーン作品《ヤヨイちゃん》(2012)と、《宇宙へ行って見た愛の花束》(2021)を同一空間に展示する。後者は日本初公開であり、この2作品を並置する試みは世界初となる。37メートルの吹き抜けアトリウムに展開される巨大作品群は、内なる宇宙と外なる宇宙の対話を体現する場となる。

草間彌⽣ 宇宙へ⾏って⾒た愛の花束 2021 「Yayoi Kusama: A Retrospective」(グロピウス・バウ、ベルリン、ドイツ、2021)での展⽰⾵景
テレコムセンタービル

 天王洲エリアのアイルしながわでは、笹岡由梨子の映像インスタレーションが予定されるほか、WHAT MUSEUMでは若手特別展示も実施。トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)のネットワークや人材育成の蓄積を活かし、新たな才能の発掘と発信を図る。

 本展は、単一の建築に作品を収める形式ではなく、都市の中へアートを挿入することで風景そのものを再編する構造を持つ。歴史的史跡、港湾インフラ、再開発地区、地下空間といった異なるレイヤーを横断しながら、来場者は身体を移動させつつ作品と遭遇する。

 東京湾岸は、近代日本の開国、戦後の再開発、そして現在の国際都市化という複数の時間軸が交錯する場所である。その地勢を「ATLAS」として読み替える本展は、東京という都市の潜在的なダイナミズムを可視化する試みと言えるだろう。なお、会場は一部を除き無料となる予定だ。