2024.10.4

今週末に見たい展覧会ベスト11。梅津庸一、グッチ、ハニワからモネまで

今週閉幕する/開幕した展覧会のなかから、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。なお、最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「GUCCI COSMOS」(京都市京セラ美術館)展示風景より
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もうすぐ閉幕

「梅津庸一 クリスタルパレス」(国立国際美術館

展示風景より

 美術家・梅津庸一(1982〜)の、2000年代半ばより始まる仕事を総覧する大規模個展「梅津庸一 クリスタルパレス」は、大阪・中之島の国立国際美術館で10月6日まで。会場レポートはこちら

 梅津庸一は1982年山形県生まれ。東京造形大学絵画科卒業。ラファエル・コランの代表作《フロレアル》を自らの裸像に置き換えた《フロレアル(わたし)》(2004〜07)や、同じく自身がモデルとなり、黒田清輝の《智・感・情》(1897〜90)を4枚の絵画で構成した《智・感・情・A》など日本の近代洋画の黎明期の作品を自らに憑依させた自画像をはじめとする絵画作品を発表してきた。

 本展は、こうした梅津の活動の軌跡をたどる試みとなる。梅津が今回の展覧会タイトルに選んだ「クリスタルパレス」は、1851年にロンドンでの万国博覧会に登場し、後には巨大な温室を含む複合施設として転用された鉄骨とガラスのパビリオンのことだ。美術史を深く参照しつつ、多種多様な仕事ぶりを「花粉」に例えてきた梅津のこれまでの足跡とも重なり合う展覧会だ。

会期:2024年6月4日~10月6日
会場:国立国際美術館 地下3階展示室
住所:大阪市北区中之島4-2-55
開館時間:10:00~17:00(金土~20:00) ※ 入場は閉館の30分前まで 
料金:一般 1200円 / 大学生 700円

「大地に耳をすます 気配と手ざわり」(東京都美術館

展示風景より、ミロコマチコによる奄美大島をイメージした新作インスタレーション(内部)

 東京・上野の東京都美術館で、自然に深く関わりながら制作を続ける現代作家5人を紹介する企画展「大地に耳をすます 気配と手ざわり」が10月9日まで開催中。参加作家は、川村喜一、ふるさかはるか、ミロコマチコ、倉科光子、榎本裕一。会場レポートはこちら

 国内における様々な地域を拠点に、もしくは足を運びながら制作を行っている作家らが、各々がその土地の人や自然環境、生き物といったものと交感することで、そこから得た感覚やパワー、いままでになかった価値観などから影響を受け、作品に落とし込んだ展覧会となっている。

会期:2024年7月20日~10月9日
会場:東京都美術館 ギャラリーA・B・C
開室時間:9:30~17:30(金~20:00)※入室は閉室の30分前まで
料金:一般 1100円 / 大学生・専門学校生 700円 / 65歳以上 800円 / 高校生以下無料

「山下麻衣+小林直人 他者に対して、また他者と共に」(水戸芸術館現代美術ギャラリー

山下麻衣+小林直人 《人が花に対して、また花と共に行う営み》のためのイメージスケッチ 2024

 水戸芸術館現代美術ギャラリーで「山下麻衣+小林直人 他者に対して、また他者と共に」が10月6日まで開催されている。

 山下麻衣+小林直人は、映像作品やインスタレーションによって国内外で活躍するアート・ユニットだ。コントロールの効かない不確かな存在としての自然をわからないままにとらえ、どうにかして関係性を構築しようとする山下+小林の作品では、些細な日常が価値を持ったり、奇跡的な出来事へと転換したりといった場面に少なからず遭遇する。

 本展では、山下+小林による多彩な表現と実践を、最初期の作品や国内未発表作を含め網羅的に紹介し、その全貌を紐解く。また新作として、同センターの場の特性を活かし屋外広場で会期中に巨大な参加型作品を展開。災害やパンデミックを経て人と自然との不安定な関係が可視化され、また世界的な紛争の続く現在において、本展を通して「他者」との関係性を改めて考え、人々がそれぞれに見ている世界への認識を更新し、個々の存在のあり方を問う機会を創出している。

会期:2024年7月27日~10月6日
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー
住所:茨城県水戸市五軒町1-6-8
電話:029-227-8111
開館時間:10:00~18:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし、8月12日、9月16日、9月23日は開館)、8月13日、9月17日、9月24日
観覧料:一般 900円 / 高校生以下 無料

今週開幕

「ハニワと土偶の近代」(東京国立近代美術館

展示風景より、都路華香《埴輪》(1916頃)京都国立近代美術館

 東京国立近代美術館で、「ハニワと土偶の近代」展がスタートした。会期は12月22日まで。会場レポートはこちら

 本展では、ハニワや土偶の実物がずらりと並ぶわけではない。ハニワや土偶が各時代においてどのようにとらえられ、どんな作品のモチーフとなってきたのか。はたまた、ハニワや土偶のブームがいかにして起こったか、といったその裏側を掘り起こし読み解くものとなっている。

 担当のひとりである同館主任研究員の花井久穂は記者発表にて、本展について次のように語っている。「ハニワと土偶に注がれてきた視線の変遷に焦点を当てた展覧会となる。幅広い世代がハニワや土偶の歴史的な意味を踏まえたうえでとらえなおせる展覧会となれば」。

会期:2024年10月1日〜12月22日
会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
住所:東京都千代田区北の丸公園3-1
開館時間:10:00〜17:00(金土〜20:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし10月14日、11月4日は開館)、10月15日、11月5日
料金:一般 1800円 / 大学生 1200円 / 高校生 700円 / 中学生以下、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料

「松谷武判」(東京オペラシティ アートギャラリー

展示風景より

 1960年代に「具体美術協会」(具体)の第2世代として名を馳せた現代美術家・松谷武判(1937〜)。その過去最大規模の回顧展が東京オペラシティ アートギャラリーで始まった。会期は12月17日まで。会場のレポートはこちら

 松谷は1937年大阪生まれ。63年に具体美術協会に加入し松谷は当時の新素材であるビニール系接着剤を用いてレリーフ状の作品を制作。注目を集めた。66年には渡仏し、パリを拠点に版画制作に取り組み始め、ボンドと鉛筆の黒鉛を組み合わせた独自の作品スタイルを確立。さらに、インスタレーションやパフォーマンスの分野でも独自の表現を展開し、87歳を迎えたいまもなお旺盛な創作活動を続けている。現在は世界的なメガギャラリーである「HAUSER & WIRTH(ハウザー&ワース)」が松谷を取り扱っており、国際的な再評価の機運が高まっている。

 本展は、松谷の半世紀以上にわたる制作活動の全貌を紹介する国内初の包括的な展覧会であり、各時期の代表作を含む総数200点以上の作品が展示。これまで発表されていなかった希少な作品や未発表のスケッチブックから最新作まで、松谷の創作活動の軌跡をたどるものとなっている。

会期:2024年10月3日〜12月17日
会場:東京オペラシティ アートギャラリー(ギャラリー1, 2, 3)
住所:東京都新宿区西新宿 3-20-2 東京オペラシティビル 3F
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:11:00〜19:00 ※入場は18:30まで
休館日:月(祝休日の場合は翌火)
料金:一般 1600円 / 大・高生 1000円 / 中学生以下無料

「GUCCI COSMOS」(京都市京セラ美術館

展示風景より、「ECHOES」セクション。手前のドレスはテイラー・スウィフトが着用したもの

 1921年にグッチオ・グッチによって創設されたイタリアを代表するラグジュアリーブランド「グッチ」。その大規模展覧会「GUCCI COSMOS(グッチ・コスモス)」が、京都市京セラ美術館で開幕した。会期は12月1日まで。会場レポートはこちら

 本展は、上海(2022)、ロンドン(2023)に続く世界巡回展。グッチの日本上陸60周年を記念するものであり、日本での開催は京都だけとなる。同ブランドの100年を超える歴史のなかでも、とくにアイコニックなデザインを世界中から集め、没入型インスタレーションとして展開するこの展覧会は、日本においてこれまでにない規模のグッチ展だ。

 100年以上に渡り紡がれてきたグッチの美意識と卓越した技術。そして様々なアーティスティック・ディレクターたちが星座となり構築してきたその「コスモス」を、京都の地で体感できる。

会期:2024年10月1日〜12月1日
会場:京都市京セラ美術館 本館北回廊1階、新館 東山キューブ
住所:京都市左京区岡崎円勝寺町124
開館時間:10:00〜18:00 ※入場は17:00まで
休館日:月(祝日の場合は開館)
料金:一般 2200円 / 大学生 1500円 / 高校生 1000円 / 中学生以下無料 ※京都市内在住・通学の大学生・高校生は無料 ※予約優先制

「モネ 睡蓮のとき」(国立西洋美術館

 東京・上野の国立西洋美術館で「モネ 睡蓮のとき」が開催される。会期は10月5日~2025年2月11日。

 本展では、第一回印象派展の開催から150年を記念するとともに、モネの晩年の活動にフォーカスする。世界最大級のモネ・コレクションを誇るパリのマルモッタン・モネ美術館より、日本初公開作品を含む厳選された約50点が来日。日本国内に所蔵される作品も加え、“印象派を超えた” モネの芸術の幅広い展開をエピローグを含む全5章立てで追うものとなる。

 例えば、特定の画題を異なる季節や時間で複数枚を描く「連作」から最晩年のモネにとって重要なテーマであった「睡蓮」も20点以上が出展。また、モネが構想した大装飾画に関連して横3メートルにおよぶ《藤》や《アガパンサス》の装飾画のための習作といった印象派を超えた試みが紹介されるほか、水面に柳がS字形に反映された《睡蓮、柳の反映》、日本の浮世絵からインスピレーションを受けた《日本の橋》などの小型連作までもが展示される。

会期:2024年10月5日〜2025年2月11日
会場:国立西洋美術館
住所:東京都台東区上野公園7-7
電話番号:050-5541-8600
開館時間:9:30〜17:30(金土〜21:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし、10月14日、11月4日、2025年1月13日、 2月10日、2月11日は開館)、10月15日、11月5日、12月28日〜2025年1月1日、1月14日
料金:一般 2300円 / 大学生 1400円 / 高校生 1000円

「寺山修司展」(世田谷文学館

渋谷に落成した天井棧敷館の前で(1969)©テラヤマ・ワールド

 演劇、短歌、映画、評論、そのほか数々の分野で功績を残し、表現活動の豊かな可能性を模索した寺山修司(1935~83)。世田谷文学館のコレクションからその功績を紹介する「寺山修司展」が同館で開催される。会期は10月5日〜2025年3月30日。

 寺山は18歳で「短歌研究」新人賞を受賞。その後「俳句」や「短歌」などの定型詩から、自由詩へと創作活動の基盤を移し、歌謡曲の作詞や放送詩(ラジオ)へと活動ジャンルを広げた。そして、30歳を前後する1960年代後半には世田谷区下馬へ移住し、演劇実験室「天井棧敷」を設立。長編小説や戯曲、評論など新たな執筆活動を交えながら、演劇や映画といった芸術ジャンルへと移行していく時期がこの世田谷時代とも言えるのだ。

 生誕90年を記念した本展では、同館の関連コレクションを一堂に展示。自筆の書簡や「天井棧敷」に関する資料(原稿・台本・ポスター)など約150点の資料で、寺山修司の人物像とその活動を紹介するものとなる。

会期:2024年10月5日〜2025年3月30日
会場:世田谷文学館 1階展示室
住所:東京都世田谷区南烏山1-10-10 
開館時間:10:00~18:00 ※展覧会入場、ミュージアムショップは17:30まで
休館日:月(ただし、月曜が祝休日の場合は開館し、翌平日休館)、年末年始(12月29日~1月3日)、館内整備期間(3月10日~18日) 
料金:一般200円 / 高校・大学生150円 / 65歳以上、小・中学生、障害者手帳をお持ちの方 100円
※10月5日は60歳以上入場無料、11月8日は65歳以上入場無料
※11月16日・17日はセタブンマーケット開催に伴い入場無料

「広重ブルー」(太田記念美術館

歌川広重「名所江戸百景 京橋竹がし」(前期展示)

 太田記念美術館で歌川広重(1797~1858)の使う藍に注目した展覧会「広重ブルー」が開催される。会期は10月5日~12月8日。

 歌川広重(1797~1858)の作品はいまも高い人気を誇るが、とりわけ空や海の深く美しい青が印象的だ。これは1830年頃から浮世絵に用いられたベロ藍(プルシアンブルー、ベルリンブルーとも)と呼ばれる青色の絵具によるもの。その美しさに触発され様々な絵師がベロ藍を使って風景画を描いた。広重は、ベロ藍との出会いから風景画に開眼すると、刻々と変わる空模様や水面を繊細に表現した。その後も晩年にいたるまで詩情あふれる名作を続々と生み出し、浮世絵界に不動の地位を築いている。

 本展では、広重のベロ藍を用いた名作の数々を中心に紹介し、国内外で愛され続ける広重の青の魅力に迫る。

会期:[前期]2024年10月5日~12月8日
会場:太田記念美術館
住所:東京都渋谷区神宮前1-10-10
電話:050-5541-8600
開館時間:10:30~17:30 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:10月7日、10月15日、10月21日、10月28日、11月5日〜8日、11月11日、11月18日、11月25日
観覧料:一般 1000円 / 大学・高校生 700円 / 中学生(15歳)以下無料

特別展「没後50年記念 福田平八郎×琳派」(山種美術館

展示風景より、右が福田平八郎《桃と女》(1916、大正時代)

 東京・広尾の山種美術館で、日本画家・福田平八郎(1892〜1974)の没後50年を記念し、その画業をたどるとともに、平八郎が影響を受けた琳派の名品を展示する特別展「没後50年記念 福田平八郎×琳派」が開幕した。会期は12月8日まで。会場レポートはこちら

 福田平八郎は大分生まれ。京都に出て京都市立美術工芸学校、京都市立絵画専門学校に学び、1919年には帝展に初入選を果たした。大正期はモチーフを入念に観察し、写実的に表した作品を制作。さらに昭和に入ると、単純な色面と大胆な構図による独自の芸術を確立していった。

 本展は3章構成。平八郎の作品を紹介しつつ、平八郎が影響を受けた琳派の名品を展示、さらに平八郎と同様に琳派に影響を受けた近現代の作家の作品を紹介するものだ。

会期:2024年9月29日~12月8日
会場:山種美術館
住所:東京都渋谷区広尾3-12-36
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(10月14日、11月4日は開館)、10月15日、11月5日
料金:一般 1400円 / 大学生・高校生 1100円 / 中学生以下 無料

T2 Collection「Collecting? Connecting?」展(WHAT MUSEUM

 東京・天王洲のWHAT MUSEUMで、株式会社ブレインパッドの共同創業者であり、ビッグデータ・AI領域で活躍する高橋隆史が約6年前から収集してきたコレクション「T2 Collection(ティーツーコレクション)」を展示する「Collecting? Connecting?」展が開幕した。会期は2025年3月16日まで。

 本展では、高橋がコレクターとして歩みはじめて最初に購入したベルナール・フリズの作品をはじめ、宮島達男、名和晃平、和田礼治郎など、近年惹かれているコンセプチュアルな作品を中心に約35点を紹介している。

会期:2024年10月4日〜2025年3月16日
会場:WHAT MUSEUM
住所:東京都品川区東品川2-6-10 G号
開館時間:11:00〜18:00 ※入館は閉館の1時間前まで
休館日:月(祝日の場合は翌火)、年末年始
料金:1500円 / 大学生 800円 / 高校生以下 無料