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2025.5.9

今週末に見たい展覧会ベスト8。松山智一、ロバート・キャパ、KYOTOGRAPHIEに尾形光琳まで

今週閉幕する展覧会のなかから、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。なお、最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「松山智一展 FIRST LAST」(麻布台ヒルズ ギャラリー)展示風景より
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もうすぐ閉幕

松山智一展 FIRST LAST」(麻布台ヒルズ ギャラリー

展示風景より、中央は《Passage Immortalitas》(2024)

 ニューヨークを拠点とするアーティスト・松山智一の東京初の大規模個展「松山智一展 FIRST LAST」は、麻布台ヒルズ ギャラリーで5月11日まで。会場レポートはこちら

 本展では、展覧会タイトルにもなる新シリーズ「First Last」を発表。英語で「最初で最後」を意味する本シリーズは、ニューヨークでマイノリティとして生きてきた松山の、東京での大規模個展開催までの長くとも短いような道のりを反映したシリーズだ。本作で松山はアメリカ社会が抱える諸問題を起点に、自身の特異な背景がもたらす独自の視点を通して世界をとらえなおし、芸術によって新たな共感をつくり出した。

 また、松山が数ヶ月にわたり昼夜を徹して描き、自身のキャリアのターニングポイントとなった横幅6メートルを超える大作絵画《We Met Thru Match.com》も展示。加えて、これまで上海やヴェネチア、ロンドンなどで発表され、海外でしか見ることができなかった日本初公開作品や最新作15点など、代表作と合わせて約40点が展示されている。

会期:2025年3月8日~5月11日
会場:麻布台ヒルズ ギャラリー
住所:東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA MBF 麻布台ヒルズ ギャラリー
電話番号:03-6402-5460(11:00~17:00)
開館時間:10:00~18:00(金土祝前日〜19:00) ※最終入館は各閉館時間の30分前まで
料金:一般 2400円 / 専門・大学・高校生 1900円 / 4歳~中学生 1300円 / 4歳未満無料

「異端の奇才―ビアズリー」(三菱一号館美術館

展示風景より

 昨年11月にリニューアルオープンした東京・丸の内の三菱一号館美術館が、画家オーブリー・ビアズリー(1872〜1898)の回顧展「異端の奇才―ビアズリー」が5月11日まで開催されている。会場レポートはこちら

 ビアズリーは25歳で世を去った英国の異才。ろうそくの光をたよりに、精緻な線描や大胆な白と黒の色面からなる、きわめて洗練された作品を描きつづけた。

 本展は、19世紀末の欧米を騒然とさせたビアズリーの歩みをたどる、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)との共同企画。出世作のマロリー著『アーサー王の死』(1893-94)や日本でもよく知られるワイルド著『サロメ』(1894)、後期の傑作ゴーティエ著『モーパン嬢』(1897)をはじめとする、初期から晩年までの挿絵や希少な直筆の素描に加え、彩色されたポスターや同時代の装飾など、約200点を通じてビアズリーの芸術を展覧している。

会期:2025年2月15日~5月11日
会場:三菱一号館美術館
住所:東京都千代田区丸の内2-6-2
電話:050-5541-8600
開館時間:10:00~20:00 ※入館は閉館時間の30分前まで
観覧料:一般 2300円 / 大学生 1300円 / 高校生 1000円 ※詳しくは公式サイトを確認

「今村遼佑×光島貴之 感覚をめぐるリサーチ・プロジェクト 〈感覚の点P〉展」(東京都渋谷公園通りギャラリー

展示風景より

  東京都渋谷公園通りギャラリーで、「今村遼佑×光島貴之 感覚をめぐるリサーチ・プロジェクト 〈感覚の点P〉展」が開催される。会期は2月15日〜5月11日。会場レポートはこちら

 本展タイトルの「感覚の点P」とは、数学の問題に用いられる「任意の点P」を「ある人が持つ独自の感覚」になぞらえたもので、ひとりひとり異なる感覚を通して、多様な世界の在り方にふれてみることを試みることを表している。

 目の見える今村遼佑と全盲の光島貴之、ふたりのアーティストによるリサーチは2022年に石庭を眺めることから始まり、見える人もしくは見えない人のように、二項対立構造的な説明では表現できない複雑さをもってきた。その内容は、野外彫刻や森の木にふれる、点訳本(点字図書)について考察する、光島の感覚をたどりながら近所を歩く、スルーネットピンポン(誰もが同じルールでプレーできるバリアフリースポーツ)をするなど、多岐に渡る。本展では、10件を超えるリサーチの記録を一堂に展示・報告している。

会期:2025年2月15日〜5月11日
会場:東京都渋谷公園通りギャラリー
住所:東京都渋谷区神南1-19-8
開館時間:11:00〜19:00
料金:無料

「ロバート・キャパ 戦争」(東京都写真美術館

 東京・恵比寿の東京都写真美術館で20世紀を代表する写真家のひとり、ロバート・キャパの写真を紹介する「ロバート・キャパ 戦争」が5月11日まで開催されている。会場レポートはこちら

 20世紀が生んだ偉大な写真家のひとり、ロバート・キャパは「カメラの詩人」と言われ、またすぐれた「時代の証言者」でもあった。1930年代ヨーロッパの政治的混乱、スペイン内戦でドイツ・イタリアのファシスト政権に支援されたフランコ将軍の反乱軍によって次第に圧倒されて敗北する共和国政府軍、日本軍による中国の漢口爆撃、第二次世界大戦で連合軍の対ドイツ反攻作戦の始まる北アフリカから、イタリア戦線、ノルマンディー上陸作戦などの戦闘現場に立ち会い、命がけの取材写真は眼に見える確かな記録を残した。

 本展では、東京富士美術館が所蔵するキャパの約1000点のコレクション・プリントから、「戦争」に焦点を当てた作品約140点を厳選して展示している。

会期:2025年3月15日~5月11日
会場:東京都写真美術館
住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
電話:03-3280-0099
開館時間:10:00~18:00(木金〜20:00)※入館は閉館の30分前まで
観覧料:一般 1200円 / 学生、65歳以上 1000円 / 高校生 800円 / 中学生以下無料

「メキシコへのまなざし」(埼玉県立近代美術館

展示風景より、左から岡本太郎《赤》(1961)、《建設》(1956)川崎市岡本太郎美術館蔵

 埼玉県立近代美術館で「メキシコへのまなざし」が5月11日まで開催されている。会場レポートはこちら

 1950年代の日本では、メキシコ美術が展覧会や雑誌を通じて盛んに紹介され、多くの美術家がその鮮やかな色彩、古代文明や革命の歴史と結びついた力強い造形表現に魅了された。とりわけ、55年に東京国立博物館で開催された「メキシコ美術展」は、美術家たちがメキシコに目を向けるきっかけともなった。

 いっぽう、埼玉県立近代美術館は82年の開館以来、メキシコの近現代美術を収集し、メキシコ美術に焦点をあてた展覧会をたびたび開催。こうした活動の背景には、埼玉県とメキシコ州との姉妹提携締結(1979)に加えて、55年の「メキシコ美術展」を訪れメキシコ美術への造詣を深めていった初代館長・本間正義の存在がある。

 本展は、福沢一郎、岡本太郎、利根山光人、芥川(間所)紗織、河原温の足跡をたどり、50年代にメキシコに惹かれた美術家たちがメキシコをどのようにとらえたのかを考えるもの。また同館のメキシコ美術コレクションとその形成の歩みを、学芸員としてメキシコ美術の普及に努めた本間正義の仕事とともに紹介。作品や資料、開催された展覧会などを通じて、戦後日本がメキシコ美術に向けたまなざしを、様々な角度から検証する試みだ。

会期:2025年2月1日〜5月11日
会場:埼玉県立近代美術館
住所:埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-1
電話番号:048-824-0111 
開館時間:10:00〜17:30 ※展示室への入場は17:00まで
料金:一般 900円 / 大高生 720円 / 中学生以下 無料

「国宝・燕子花図と藤花図、夏秋渓流図」(根津美術館

展示風景より、尾形光琳《燕子花図屛風》(国宝、江戸時代・18世紀、根津美術館蔵)

 東京・南青山の根津美術館で、財団創立85周年記念特別展「国宝・燕子花図と藤花図、夏秋渓流図 光琳・応挙・其一をめぐる3章」が5月11日まで開催されている。会場レポートはこちら

 現在、根津美術館が所蔵する国宝・重要文化財あわせて100件のうち、日本近世の絵画は3件となっている。尾形光琳の国宝《燕子花図屏風》と、円山応挙《藤花図屏風》、鈴木其一《夏秋渓流図屏風》の2点の重要文化財である。いずれも6曲1双の金屏風であり、これらの屏風は、制作された時代や場所を違えながら、相互に画風的なつながりも有している。ともに無背景の総金地に草花や花木を描く光琳と応挙。また其一の作品は、律動的なモチーフの配置の点で光琳の、写実性を備えた描写の点で応挙の影響がみてとれる。

 本展は、こうした3件の屏風を中心に据えた3章構成とし、各々の真価を際立たせる、あるいはその魅力をさらに高める作品ととりあわせて展覧するものとなっている。

会期:2025年4月12日~5月11日
会場:根津美術館
住所:東京都港区南青山6-5-1
電話番号:03-3400-2536
開館時間:10:00~19:00 ※入館は閉館の30分前まで
料金:一般1500円(1600円)、学生1200円(1300円)、中学生以下無料 ※全日オンライン日時予約制、( )は当日券(ただし予約状況により販売のない可能性あり)。

「春の江戸絵画まつり 司馬江漢と亜欧堂田善 かっこいい油絵」(府中市美術館

亜欧堂田善 両国図 重要美術品 秋田市立千秋美術館(前期・後期)

 東京・府中の府中市美術館で「春の江戸絵画まつり 司馬江漢と亜欧堂田善 かっこいい油絵」が5月11日まで開催されている。

 油絵といえば「西洋のもの」というイメージがあるが、江戸時代の日本でもオランダや中国を通じて、少ないながらも油絵が輸入され、それをまねて描く画家がいた。その代表的な画家が、司馬江漢(1747〜1818)と亜欧堂田善(1748〜1822)だ。ただし、ふたりの油絵はよく知る油絵とは異なる。荏胡麻の油などを使って自分で調合した絵具で、日本で古くから使われてきた薄くて繊細な絵絹に描いているので、滑らかでさらりとして、明朗かつ落ち着きのある色をしている。

 府中市美術館では様々な展覧会でふたりの油絵を紹介してきたが、鑑賞者からよく聞こえてきたのが「かっこいい」という言葉だったという。本展では、油絵だけでなく銅版画や、墨や在来の絵具を使った作品も紹介している。そしてふたりの生い立ち、画家としての立場や環境の違い、目指すものの違いにも注目。科学者であり文人でもあった司馬と、幕府老中もつとめた白河藩主松平定信のもとで黙々と技術を極めた亜欧堂。ふたりの違いが作品にどう表れているかも、大きな見所となっている。

会期:[前期]2025年3月15日~4月13日、[後期]2025年4月15日~5月11日
会場:府中市美術館
住所:東京都府中市浅間町1-3(都立府中の森公園内)
電話:050-5541-8600
開館時間:10:00~17:00(入場は入場の30分前まで)
観覧料:一般 800円 / 高校・大学生 400円 / 小・中学生 200円 / 未就学児 無料

「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2025」(京都市内各所)

展示風景より

 今年で第13回を迎える日本最大の写真祭「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」が5月11日まで開催されている。本企画のメインプログラムには、14組のアーティストの参加が決定しており、京都市内の14会場で14のプログラムを開催する。会場は、寺院や京都を象徴する名所、現代的な空間に加え、今年は京都駅での写真壁画というユニークな企画もある。見どころのレポートはこちら。

 2025年は「HUMANITY」をテーマに、戦争、ジェンダー、アイデンティティ、感情、コミュニティ、つながり、自然、痛み、愛といった様々な視点から探求した展覧会を開催。また、追加発表として、YOTOGRAPHIEがキュレーションする土田ヒロミらによるグループ展では、2025年に考えるべき問題を提示する展示を八竹庵(旧川崎家住宅)にて行う。

 参加アーティストは、アダム・ルハナ、イーモン・ドイル、エリック・ポワトヴァン、グラシエラ・イトゥルビデ、劉星佑(リュウ・セイユウ)、JR、甲斐啓二郎、レティシア・キイ、リー・シュルマン&オマー・ヴィクター・ディオプ、石川真生、マーティン・パー、ブシュパマラ・N、𠮷田多麻希、土田ヒロミほか。

会期:2025年4月12日~5月11日
会場:京都市内16会場
観覧料:(パスポートチケット)一般 6000円 / 学生 3000円※詳しくは公式ウェブサイトを要確認