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2025.5.8

生まれ変わった「荏原 畠山美術館」。いざ、都心の静謐な空間へ

1964年10月に開館した畠山記念館が、5年にわたる施設改築工事を終えて新たな姿となった。

文・撮影=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

新館のホール
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日本有数の私立美術館

 東京・白金台。閑静な住宅街に建つ美術館は、いまもっとも行くべき場所のひとつだ。

 この美術館の名は荏原 畠山美術館。もともと同館は「畠山記念館」として1964年10月に開館したもの。能登国主畠山氏の後裔であり、荏原製作所の創設者でもある実業家・茶人の畠山一清(1881〜1971)が創設したこの美術館には、茶道具を中心に、書画、陶磁、漆芸、能装束など、日本、中国、朝鮮の古美術品約1300件(うち国宝6件、重要文化財33件)が収蔵されており、日本有数の私立美術館と言える。

荏原 畠山美術館の入り口には見事な石垣と門が

 昭和の初めに旧寺島宗則伯爵邸があった白金猿町の土地約3000坪を購入した畠山は、奈良般若寺の遺構や、加賀前田家重臣横山家の能舞台などを移築し、私邸「般若苑」を造営。美術館が建つのはこの一角だ。

 広大な庭に囲まれた美術館が、杉本博司と榊田倫之が主宰する「新素材研究所」の手によって生まれ変わった。

荏原 畠山美術館エントランス
荏原 畠山美術館の受付

オリジナルの意匠を継承

 本館は内観・外観ともにオリジナルの意匠を継承しつつ、設備や展示機能の更新、耐震補強、断熱改修などが実施。例えば展示室は従来から柔らかな自然光が入る設計となっており、刻々と移り変わる光のなかで、名品の数々を見ることができる。その様子はそのままに、展示ケースなどを刷新することで、より快適な鑑賞環境が確保された。

本館2階の展示室
本館2階の展示室
本館2階の展示室

新館にも注目

 本館からつながるように増設された新館にも注目だ。新館は地下1階から2階までの3フロア構成。地下と2階にはそれぞれ雰囲気のことなる展示室が設けられ、より多様な展示が可能となった。

新館2階の展示室。中央の黒い壁が特徴的

 また1階にはイベントなどにも使用できる多目的室のほか、ゆったりと心身を落ち着かせることができるホール、そしてミュージアムカフェ・茶話処「猿町カフェ」が新設され、幅広い楽しみ方ができるようになった。

新館のホール

 旧・畠山記念館が持っていた本来の良さはそのままに、新素材研究所ならではのエッセンスが見事に融合した荏原 畠山美術館。建築と庭、そして所蔵品の調和を実感できるふたつとない空間となった。

新素材研究所らしさが垣間見える新館の外壁