《太陽の塔》のミニチュアは自由に販売できるのか? 「美術」と「建築」で変わる著作権

岡本太郎の《太陽の塔》は、「美術の著作物」なのか、それとも「建築の著作物」なのか。著作権法では、作品がどの種類の著作物に当たるかによって、複製や販売、撮影、改変をめぐるルールが変わることがある。《太陽の塔》をはじめとするパブリック・アートを例に、作品を分類することの意味を弁護士・木村剛大が解説する。※9月26日24時まで、すべての方に全文お読みいただけます。

文=木村剛大

岡本太郎《太陽の塔》(1970) 出典=万博記念公園 太陽の塔オフィシャルサイト(https://taiyounotou-expo70.jp/about/)
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 大阪の万博記念公園にそびえる岡本太郎の《太陽の塔》(1970)は、「美術の著作物」か「建築の著作物」か? じつは、この区別は《太陽の塔》のミニチュアを販売できるかの結論を分けることになる。著作権法は、著作物の例として次の種類をあげている(*1)。

第10条(著作物の例示) 
 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五 建築の著作物
六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七 映画の著作物
八 写真の著作物
九 プログラムの著作物

 どの種類に当たるかにより適用される規定が変わることがあるため、どの著作物に当たるかを検討することが必要になる。なお、1つの作品が複数の種類の著作物に該当することもある(*2)。

 例えば、「美術の著作物」と「映画の著作物」では、保護期間も違う。「美術の著作物」は、著作者の死後70年間保護される(*3)。いっぽうで、「映画の著作物」は、著作物の公表後70年間の保護期間になる(*4)。今回は、パブリック・アートに関連して、著作物の種類の区別をめぐって生じる問題を解説する。

*1──著作権法10条1項。
*2──中山信弘『著作権法〔第4版〕』(有斐閣、2023)97頁。
*3──著作権法51条2項。
*4──著作権法54条1項。

 パブリック・アートのように屋外に恒常的に設置されている「美術の著作物」の原作品や「建築の著作物」については、原則として自由に利用できることになっており、著作権が大きく制限されている。「意外と知らない?パブリック・アートの利用ルール」でも概要を紹介しているので、参照してもらいたい。この点では、「美術の著作物」でも「建築の著作物」でも取り扱いは同じである。もっとも、この規定では、著作権者の許諾が必要な場合が4つ定められている。そして、ここでは著作物の種類によって適用される規定が変わってくる。

第46条(公開の美術の著作物等の利用)
 美術の著作物でその原作品が前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
一 彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合
二 建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合
三 前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合
四 専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合

岡本太郎《太陽の塔》(1970) 出典=万博記念公園 太陽の塔オフィシャルサイト(https://taiyounotou-expo70.jp/about/)

 よく例に出されるのが、万博記念公園に設置されている岡本太郎の《太陽の塔》である。《太陽の塔》を「建築の著作物」と考えると、「建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合」に著作権者の許諾が必要になる。他方、「美術の著作物」と考えると、「専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合」に著作権者の許諾が必要である。

  そうすると、スケールを縮小し、ミニチュアとして販売する行為は、2号の「建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する」わけではないため、《太陽の塔》が「建築の著作物」であるとすると、著作権者の許諾なしで行うことができる。4号で著作権者の許諾が必要な場合は、「専ら美術の著作物の複製物の販売」に限定しているためである。《太陽の塔》については、大きい「美術の著作物」という見解や(*5)、「美術の著作物」と「建築の著作物」の双方に当たるという見解がある(*6)。

*5──阿部浩二「建築の著作物をめぐる諸問題について」コピライト467号(2000)15-16頁は、太陽の塔について、大きい美術の著作物であって、建築の著作物の域外にある彫刻であると述べる。
*6──加戸守行『著作権法逐条講義〔7訂新版〕』(著作権情報センター、2021)389頁参照。

《クラウン・ファウンテン》は自由に動画撮影できる?

ジャウメ・プレンサ《クラウン・ファウンテン》(2004) 出典=ジャウメ・プレンサウェブサイト(https://jaumeplensa.com/works-and-projects/public-space/the-crown-fountain-2004)

 もうひとつ、パブリック・アートで著作物の種類が問題になりうる作品を見ておきたい。シカゴのミレニアム・パークに設置されているジャウメ・プレンサの《クラウン・ファウンテン》(2004)である。《クラウン・ファウンテン》は、約15メートルのガラスブロックの塔2基が、長さ約71メートルの浅い黒御影石の反射プールを挟んで向かい合う構成で、各塔の内側の面はLEDスクリーンになっており、シカゴ市民1000人の顔のビデオポートレイトが映し出される(*7)。塔から流れ落ちる水と、人物の口の位置に合わせて設けられたノズルから噴き出す水が、ガーゴイルを思わせる効果を生む。LEDによる映像、水、光、来場者の参加が一体となった作品で、ビデオ・スカルプチャーと呼ばれることもある。

 このように、《クラウン・ファウンテン》には映像的要素が含まれるため、映像部分は「映画の著作物」に当たると考えられる。他方で、ガラス塔・反射プール・水の流れといった彫刻的要素も作品の本質を構成しており、「美術の著作物」としての側面もある。そのため、「映画の著作物」とともに「美術の著作物」に当たる複合的性格をもった作品といえるだろう。

 そうすると、日本の著作権法46条では、《クラウン・ファウンテン》の写真を撮影することは、「美術の著作物」の原作品の利用として自由である。いっぽうで、LEDスクリーンの映像部分を動画撮影することは「美術の著作物」ではなく、「映画の著作物」の利用であるため、著作権者の許諾が必要になりそうである。

*7──ジャウメ・プレンサウェブサイト。なお、便宜上日本法を適用することを前提とした解説としている。

どのように著作物の種類を判断すべきか?

 まずは「絵画」「彫刻」「建築」といった文言から著作物の種類を判断できるのであれば、それで足りる。しかし、判断に迷うような微妙なケースでは、著作権法の効果から逆算して著作物の種類を判断するほかないだろう。多様な表現が展開される現代美術の世界では従来の枠組みには当てはまらないような判断に迷う作品も想定される。

  「美術の著作物」と「建築の著作物」の区別について、中山信弘教授は、「居住等の実用目的から容易に改変を認める必要があるものや、展示や利用という観点から建築の著作物と認めることが妥当であるものが建築物であり、実用目的から離れているものが美術であると言えよう。つまり建築の著作物に関する著作権法上の効果から、逆に建築の著作物の範囲を判断すべきである」と述べている(*8)。

  「建築の著作物」に分類されることの効果として見逃せないのが、同一性保持権の制限だ。著作権法は、「建築物の増築、改築、修繕又は模様替えによる改変」については同一性保持権を及ぼさないと定めている(*9)。建築物の所有者の経済的利用権と著作者の人格的利益を調整するための規定である。

 したがって、《太陽の塔》が「建築の著作物」に当たるとすれば、所有者は、著作者の許諾がなくても増築・改築・修繕・模様替えを行うことができる。他方、「美術の著作物」とすればこの規定は適用されず、原則に戻って改築等にも著作者の同一性保持権が及ぶことになる。

《太陽の塔》の内部にある「生命の樹」 出典=万博記念公園 太陽の塔オフィシャルサイト(https://taiyounotou-expo70.jp/about/project/)

 それでは冒頭の問いに戻り、《太陽の塔》はどうだろうか。1つの作品でも複数の種類の著作物に当たることはある。そのため、「美術の著作物」か「建築の著作物」かの二者択一の判断をする必要はない。まず、《太陽の塔》は、外観自体からも大きな彫刻と捉えるほうが自然であるし、また、居住等の実用目的から容易に改変を認める必要性はなく、実用目的から離れているものとして「美術の著作物」に当たると考える。

 次に、《太陽の塔》は内部に空間をもつ。内部空間も、基本的には居住や実用のために改変されることが想定されておらず、実用目的からは離れた鑑賞のための空間である。内部に人が出入りできる空間があるからといって直ちに「建築の著作物」に分類できるわけではない。そのため、《太陽の塔》の内部空間も「美術の著作物」に当たると考える。

 もっとも、内部空間には階段、通路部分など人の移動のための構造も含まれており、この部分は実用目的から改変を認める必要性はあるだろう。そのため、これらの部分は「建築の著作物」に当たるとの解釈が妥当ではないだろうか(*10)。

 このような筆者の解釈では、冒頭の問い、つまり、《太陽の塔》のミニチュアを販売できるかの答えは、ミニチュアとしての複製は「美術の著作物」である外観の複製になることから、「専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合」(4号)や「彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合」(1号)に当たり、著作権者の許諾が必要ということになる。

 こうした複合的な性格判断は、《太陽の塔》のような半世紀前の作品だけでなく、映像、音、観客参加を組み込むといった今日の多様なパブリック・アートにおいてもますます切実な問いになっていくはずだ。

*8──中山信弘『著作権法〔第4版〕』(有斐閣、2023)107頁。
*9──著作権法20条2項2号。
*10──中山信弘『著作権法〔第4版〕』(有斐閣、2023)106頁注32は、《太陽の塔》について、公園に聳え立ち、人が出入りする塔であり、改築等につき、自由度が高い方が好ましいであろう、としているため、少なくとも《太陽の塔》は「建築の著作物」にも該当する立場と思われる。